【高口質疑】練馬区予算・財政の課題は…①防災予算、ハードに傾く傾向、原因は?②人件費と委託費の推移から見る、ジェンダー平等問題③少子化とジェンダー不平等
練馬区議会、2024年度予算を審議する予算特別委員会。
2月21日「財政」の費目で、高口が質疑に立ちました。
【テーマ1】防災予算…ハードの予算の方が多い!原因は?
① 国の予算がそもそも少なすぎる!
能登半島地震を受けて危機感が高まるなか、
防災予算のあり方について伺います。
内閣府は各省庁の毎年度の防災関係予算を積算していて、
2023年度は約1兆6000億円で、22年度の約3兆円の半分程度。
一方、防衛費は6兆8000億円、
2024年度当初予算は過去最高の約7兆9000億円=約8兆円。
防災予算は、その6分の1以下、ということになります。
国の一般会計予算に占める防災関係予算の割合は、
集計が始まった1962年度8.1%に対し、
2022年度は2.2%と4分の1まで減少。
国からの防災予算が少ないなかで、地方交付金の出ない23区は、
自主財源=一般財源で、多くをまかなうしかありません。
危機管理費6億8千万のうち、6億4千万円、大半が一般財源と聞いています。
<Q>
備蓄・防災倉庫について、国や都の補助金は基本的に出ないのか、まず伺います。
<A:財政課長>
今ご指摘のあった、備蓄物資、備蓄倉庫の関連につきましては、
現状、特定財源はございません。以上です。
② 力を入れようとしているのは、財源があるメニュー
特定財源が出ない中で整備いただいている、ということは評価し、
ぜひ増やしていただきたいなと思うわけですが、
防災予算を増やしたくても、
国や都からの補助がない、ということが、
ネックになっているんじゃないかなと思います。
一方で、国や都の補助が出る事業に対して力を入れる傾向もあると考えています。
たとえば感震ブレーカー、評価している事業ですが、都の補助金が出て実施。
密集事業についても、「社会資本整備総合交付金」という国の補助金に
メニューがあるため、やりやすいと言えます。
結果的に、耐震化促進関連経費を含めた
防災まちづくり推進経費は7億2千万円と、
補助金の出るハードの予算のほうが
危機管理費より多くなっているという現状です。
③ 能登と練馬の課題を分けて考えるべき!
区長は所信表明以降、
「反対している方々がいることは承知していますが」
「早急に進めていかなければならない」
と繰り返し強調されているのですが、
そもそも、能登半島地震と、練馬区の状況が異なる、という点があります。
石川県輪島市の2022年度末時点の耐震化率は、約46%と低水準で、
一方、練馬区の耐震化率は、92.4%と高水準です。
区は、地域ごとの耐震化率は出していません。
能登半島地震は、道路がふさがれる問題がクローズアップされていますが、
たとえば桜台東部地域での密集事業の防災道路は、
「一般緊急輸送道路」とは異なりますし、
延焼遮断帯の効果もありません。
<Q>
能登は能登で大変な状況で課題はありますが、
一方で、能登と練馬との課題はきちんと切り分けて
練馬としての課題、事業の目的、必要性も含めて
予算執行していくことが大事だと思いますが、見解を伺います。
<A:財政課長>
まず、前段の所で、特定財源がある事業に力を入れているかのような
ご発言があったかと思いますが、そこは私共としましてはそのような認識はございません。
先ほど特定財源が無いという風に申し上げました。
当然ながら国や都に対しての財政支援というのは必要に応じて要求していくものではございますが、区はこれまで特定財源に関係なく、例えば食料や生活必需品などの備蓄には努めて参りました。
令和6年度は備蓄倉庫を2ヶ所整備し、携帯トイレ、アレルギー対応食などを増量するほか、口腔ケア用品やボディーシートなどの衛生用品を新たに備蓄するなど政策の充実強化には努めております。
そのための予算を計上しております。その点ご理解いただければと思います。
また、防災まちづくりの観点からお話いただいたかと思います。
先日一般質問においても同様のご質問をいただいたかと記憶しております。
首都直下地震はいつ発生してもおかしくないと言われています。
能登半島地震で被災された方々の支援に努めるのはもちろんのことですが、こう言ったことが他人事と思わず、東京で発生した場合を想定して備えを進めるということは大変重要です。
根本的な災害対策として効果が高いものを優先して実行していく必要があると考えています。
桜台東部地区や貫井・富士見台地区などは、老朽化木造住宅が密集し、道路が狭隘となります。この現状を放置することはできません。
危険な建物を建て替えて、防災道路を通すなど、具体的に目に見える形で、
早急に進めていく必要があるという風に区は考えております。以上です。
③ 「ショックドクトリン」にならないように…!
もちろん能登は能登で、
東京で発生した場合の効果が高いものということで、
その上で、桜台東部地域、富士見台もそうだと思いますけれども、
防災道路というのは一般緊急輸送道路ではないこと、
それから延焼遮断帯効果もないということ
を改めて申し上げておきます。
こういう、能登半島地震のような大きな災害があったりすると、
それに乗じて大きなことをやる、
ショックドクトリンと言われていますけれど、
そうならないように、
反対があってもやるのではなく、
地域住民の声にしっかり耳を傾けて頂くよう求めます。
参考
【テーマ2】人件費と委託費の推移から見る、ジェンダー平等問題
続いて、少子化とジェンダー平等に関する予算のあり方について伺います。
ジェンダー平等を、どう具体的に予算化するかについて、
私はずっと言ってきていますが、
区としてまずできること、すべきことは、
非正規公務員・会計年度任用職員や、委託職員の待遇改善だと考えています。
① 前川区長就任10年の、人件費と物件費の変化
そこで、前川区長就任以来の人件費と、委託民営化に関わる物件費の変化を比べました。
就任の翌年、2015年度・平成27年度から
予算は
2024年度・令和6年度までの10年間
決算は
2022年度・令和4年度までの8年間
を比較しました。
人件費→増えず、割合は縮小
人件費は
予算で、
457億から503億、46億円の増ですが、
割合としては18.7%から15.6%、3.1%の減少。
決算ベースだと、
419億から440億、21億の増。
割合は
17%から14.1%、2.9%の減少。
額は年によって増減がありますが、割合は、縮小傾向が続いています。
委託に関わる物件費→人件費の10倍増、割合も右肩上がり
一方、委託に関わる物件費は、
予算で、
473億から721億、248億も増えています。
割合は19.3%から22.3%、3%の増。
決算は、
374億から592億、218億の増。
割合は15.2%から19%、3.8%の増。
物件費の額は年々右肩上がりで、
増加額は、人件費の約10倍。
割合もほぼ右肩上がりです。
<Q>
この物件費の増加の主な要因がどこにあるのか、伺います。
<A:財政課長>
物件費の増加の要因でございます。ひとつには委託民営化の推進です。
もうひとつは、例えば業務処理に必要な電算システムの構築・運用などが主な要因です。
令和6年度予算におきましても、例えばねりっこクラブの委託拡大、学校用務の委託、区立枠の委託などに経費を計上しております。
② 正規・非正規職員の変化
システム構築もありますが、ねりっこ、用務や給食、保育などの委託化が大きな要因だということです。
人件費とあわせて職員数の増減を見てみます。
非正規職員のデータが
2019年度・令和元年度からしかないので、
そこから
2023年度・令和5年度までの5年間で比較すると、
正規職員→女性正規が大幅な減少、男性正規はむしろ増加
正規男性は、2018人から2001人で、17人の減少。
正規女性は、2504人から2371人で、133人の減少。
これは、男性の約8倍の減少です。
総数としては、150人の減少。
正規職員数全体が減っていますが
大幅に削減されたのは、正規女性の職員で、
就任翌年の2015年度、10年前と比べると
正規男性はむしろ53人増えています。
もちろん正規女性は、10年前から比べても減っているのですが、
つまり正規職員の減少は、女性の削減で埋め合わせてきた、と言えます。
非正規職員→男女とも増加
一方、非正規は、
非正規男性は、292人から395人で、103人の増加。
非正規女性は、2176人から2287人で、111人の増加。
総数としては、214人の増加です。
非正規は男性も女性もほぼ同数増えていますが、
そもそもの人数が、圧倒的に女性が多い、ということです。
③ 人件費と職員数を総合して考える
わずか5年で、正規が150人減り、非正規は214人増加。
人件費の割合が減っているのも、
これ(非正規の増加)によって成り立っている
ものと考えています。
<Q>
そこで伺いますが、
人件費と、物件費との差は約200億円で、この差は年々開いています。
委託が継続する場合、前年度からの上乗せもあり、
来年度は、前年度から4-5%委託費に上乗せするとのことで、
直営から委託に移行した分が、必ずしも財政的にプラスにもなっていないと
考えますが、伺います。
<A:財政課長>
その時々の人件費と物件費を比べて、委託民営化の意味があるかを論じる
というのはそもそも違うのではないかと思います。
例えば、今も物価上昇はしていますので、物件費は上がり続けています。
例えば同じ内容で委託した場合には必要経費は上がります。
そのことは、直営で運営したほうが良いか、委託化した方が良いかは全く別の問題だと思います。
委託化を進めるそもそものメリットというのは、例えばある業務を同一の水準で実行するに当たって、直営で行うのと民間に委託するのがどちらが効率が良いかを考慮すべきであって、委託料自体の対前年度比の増減を持って論じるのは正直私共としては、無い、と思っています。
そもそも区は、公共施設等総合管理計画の委託民営化実施計画の中で基本的な考え方として、民間の知恵と経験を活用した方が効果的な業務は民間が担うことを基本とする、としています。
それは経費の多寡と異なる視点として、区が持っていないノウハウなどを持つ方に運営を委ねる、ということで、区民の皆様がより良いサービスを受けられるようにする、ということを委託民営化の目的としています。
今のお話を伺っていますと、委託民営化がよろしくないかのような発言に聞こえてしまうのですけれども、そもそもの是非というのは、金額ベースの増減ではなくて、こうした多角的な観点から論じていく必要があると考えております。以上です。
④ 委託の財政効果を答えず!
委託民営化、基本的にはよろしくない、という立場なので
おっしゃる通りなんですけれど。
「その時々」ではなくて、今聞いていただいたらわかる通り、
10年前と8年前の人件費の推移、
言わなかったけれどすべての各年度の数字をいただいて、
傾向というのを読み取った上で、財政的という面で伺いました。
各事業の評価はできない、ということでしたけれど、
ジャーナリストの国谷裕子さんは、
「働く人々の賃金が減って、結果、地域全体が疲弊してしまった」
という風におっしゃっています。
能登半島地震を見ても、
自治体職員が定数削減で減らされてきたなか、疲弊していて、
正規職員を増やしていく、そのための予算をつけていただきたいと要望します。
【テーマ3】財政から見る少子化対策とジェンダー平等
金森万里子・京都大学研究員らのチームによる全国61町村・約2万5千人の高齢者の調査で、
地域に固定的な性役割観があると、つまりジェンダー不平等だと、
高齢者の心の健康状態が悪くなる、という結果がわかりました。
うつ症状、死にたいと思う気持ち、自殺未遂歴が約2倍もあがる。
これは女性も男性も、同様の傾向です。
予算でいえば、ジェンダー不平等は、医療費を圧迫する要因にもなるとも言えると思います。
また、少子化対策でも、先程(※別の会派への答弁で)、
区が「できることをやる」とおっしゃっていましたが、
ジェンダー平等が重要とわかっていて、
大学生(等)を調査した「マイナビ」による調査で、
19・2%が「子どもはほしくない」と回答。
ほしくないと回答したのは女子が23%と
男子の12%を大きく上回り、
理由は、育休の取得や育児の分担の男女差が要因とみられます。
おっしゃった「できること」という意味では、
少子化対策としてジェンダー平等を進めて行っていただきたいと申し上げて終わります。
※質疑時間が足りず、ここで終了でした……
↓後半部分がわかりにくいので、予定していた質問を、掲載しておきます。
また、少子化対策でも、ジェンダー平等が重要とわかっています。
就職情報サイト「マイナビ」による調査で、
大学・大学院を2025年卒業見込みの学生のうち
>19・2%が「子どもはほしくない」
と回答し、
>前回調査の13・1%から大幅に増加
>ほしくないと回答したのは女子が23・5%と
>男子の12・1%を大きく上回った
>育児休業の取得が仕事に影響する不安や
>家庭での育児の分担の男女差などが要因とみられる
つまり、大学生の5人に1人が、子どもはほしくないと考えていて、
その理由は、女性に育児の負担が偏っているから。
今の大学生でさえ、そう考えている。
兵庫県豊岡市の当時の市長・中貝宗治(なかがいむねはる)氏は、
議会で
「市役所でも長い間、女性は補助的な仕事に甘んじてきました」
と率直に認めました。
さらに、
「多くの女性職員は、これまでさまざまなものを断念してきました」
という職員の言葉にショックを受け、
「断念せざるを得ないような思いをさせてきたのかという自責の念にとらわれ」
たと語っています。
私たちは、こういう真摯な反省を、首長に望んでいます。
ジェンダー平等が解消されない限り少子化は改善しないし、
ジェンダー平等が少子化への打開策だと、私は考えています。
Q:SDGsにも掲げられたジェンダー平等という観点を、
今年度予算にどのように反映されたのか、伺います。
またどこかの機会で質疑できたらと思っています…
引き続き、頑張ります!