【決算】桜台・木造住宅密集事業…練馬区の報告書に誤りが発覚!【高口質疑】
※2022/9/28、練馬区議会・決算特別委員会、「都市整備費」での高口質疑です!
【1】進め方が大問題!
2020年度、桜台1・2・3丁目が木造住宅密集事業を行う地域に選定され、
2021年度は「桜台東部地区重点地区まちづくり計画」をすすめ
今年度中に密集事業の整備計画を策定見込みと、どんどん進んでいます。
……が、私のもとには、特に道路拡幅にあたる沿線住民から
不安や戸惑い、怒りの声がたくさん届いています。
なかには、
「職員が突然訪ねてきて、ひどいことを言われた。区は信用できない」
と不信感を持つ方もいます。
安心安全のための事業のはずが、実際には、住民の平穏な生活をかき乱している。
なぜこうなったのか。
その理由が、昨年度の業務委託報告書に書いてあります。
「新型コロナウイルス感染症拡大によるスケジュールの遅延により、重点地区まちづくり計画の策定プロセスと密集事業の合意形成プロセスが同時並行で進むことになり、地域住民への十分な説明ができないまま手続きだけが進んでいる状況にある」
つまり、スケジュール、手続きを優先し、住民への十分な説明が後回しだと、
昨年度の報告書ですでに指摘されているのです。
特に路線①、こちらは開三中の南側を東西に貫く拡幅予定の道路ですが、
こちらの路線①の反対が強いことも、報告書から明らかになっていて
「絶対に反対」の回答が、
他の拡幅予定の2路線は、0%、5%なのに対し、
路線①は29%にものぼります。
その点、報告書も
「すぐに事業化を進めることは住民感情を刺激し、事業全体の進行に影響を及ぼす可能性」
「道路整備の実現は非常に長期間を要する」
と指摘済みです。
一度立ち止まり、住民との対話を重ねることが、何より重要です。
Q1:幅広い情報の提供を!
- 報告書が記した進め方の問題についてが1点
- また、住民とともに防災を考えるうえで、幅広い、最新の情報の提供は必要不可欠と思いますが、
2点、見解を伺います。
A:防災まちづくり課長
- 桜台東部地区は老朽木造住宅が密集し、道路や公園の整備が不十分なまま市街地が進んだことにより、幅員4m未満の狭隘の道路が多く、緊急車両が円滑に進入することができず、防災上早急な対応が必要な地区となっています。
- これまで町会・商店会・PTAなど推薦および公募の住民の方々にお集まりいただき、まちづくり協議会を開催して、検討も進めてまいりました。
- 緊急車両の進入路となる道路整備の必要性など、地区の課題について皆様と共有し、地区の将来像を示した重点地区まちづくり計画の策定に向けて手続きを進めています。
- 拡幅路線として想定される沿道の方には、個別訪問や懇談会を開催して、丁寧に説明をしているところです。
- 戸別訪問では道路整備の方法や整備手法等について説明をし、沿道権利者の約8割の方とお話しすることができています。
- また、沿道の方にお集まりいただき開催した懇談会では、道路整備の検討状況や、補償の考え方、今後の検討の進め方などをご説明させていただいたところです。
- また、情報提供することが必要ではないかとのことですが、
- まちづくり協議会や説明会などにおいて、地区内の道路の幅員、建物の構造、公園の状況など、この地区における課題や災害時の危険性などについて、図を用いてわかりやすく説明し、ご理解いただけるよう努めてまいりました。
- 引き続き、地域の皆様の疑問や懸念される事項について、わかりやすい資料を用いながら、防災まちづくりについてご理解いただけるよう努めてまいります。
【2】消防活動困難区域は存在しない!
沿道の8割の方にお話しできて、まだ2割にはお話できていないということ、努力していくというお話でした。
この間、まちづくりニュースやまちづくり計画等で
ひときわ大きく取り上げられてきたのが、
「消防活動困難区域」です。
こちらは震災時の基準で、
2020年度の報告書には「震災時消防活動困難区域」とありましたが
2021年度から「震災時」が消え、「消防活動困難区域」だけになっています。
平時でも消防活動できないように誤解を与えるのではと、
昨年12月の都市整備委員会で指摘したところ、
↓解説ブログ
技監が
「私どもは危ないですよというPRをしていきたい」
と答えました。
住民の不安のもとは、この練馬区の発信の仕方、
危険と思わせて事業を進めたい
という姿勢にあるのではと思います。
報告書では
「消防活動困難区域には複数の考え方が想定でき
~消防活動が不可能になる区域であると誤解を受けやすい面が懸念される」
とはっきり指摘しています。
実際に、住民には様々な誤解が広がっています。
では、実際に、この地域は危ないのか。
危ないとしたらどの程度危ないのか。
東京都の木造住宅密集地域の基準に照らし合わせると、
昭和55年以前の老朽木造建築物棟数率30%以上
→という基準は、報告書が試算した建替え実績を加味すると、
現在は25%程度と、下回ることが予想されます。
すでにこの地区は、密集地域の定義からはずれている可能性があります。
Q2:客観的には「安全」!
さらに、報告書には
「本地区は、区内で相対的に評価すれば危険な密集地域だが、
客観的な指標によると、防災上の課題は一般的な密集市街地と比較して安全である」
とあります。
あくまで、区内と比較しての危険であり、
客観的な指標では「安全」なのです。
最新のデータでは2020年度、
東京消防庁が作成した「地域別延焼危険度測定」の消防活動困難度ランク。
桜台1~3丁目は「1~2」と、安全です。
とやえつこ都議を通じて、東京消防庁の評価を確認したところ
「消防隊の到達性も高く、消防水利も比較的バランスのとれた地域」
「ランクは上」
とのこと。
逆に、ここより危険な3以下の判定がついた地域は、他に区内で4丁目(ちょうもく)あります。
- 「客観的な指標では安全」とする報告書の記述、安全性の「ランクは上」とする東京消防庁の評価についての区の認識と
- この点も住民に説明すべきという点
2点、お答えください。
A:防災まちづくり課長
- 繰り返しにはなりますが、桜台東部地区は老朽木造住宅が密集し、道路や公園の整備が不十分なまま市街地が進んだことにより、狭隘な道路が多く緊急車両が円滑に侵入することができず、防災上早急な対応が必要な地区となってございます。
- 消防活動困難区域でございますが、練馬区におきましては幅員が狭い道路では消防車が円滑に通行できないため、円滑に侵入できる幅員6m以上の道路から140mを超える範囲を消防活動困難区域としています。
- 140mとしている理由は、1台の消防車には放水口が3つあり、通常200mのホースを3本使用して消火をいたします。
- 消火活動にあたり200mのホースを現場まで伸ばすにあたり、道路に沿って曲がることを考慮すると道路からの直線距離は140mになりますので、その140mと想定しております。
- そのようなことから140mを超える範囲を消防活動困難区域として定義をしております。
- 桜台東部地区は地区内の約23%、約11.8haが消防活動困難区域になっております。
※質問に答えていないので…
(再度、質問に答えるよう求めると…)
A:防災まちづくり課長
- 引き続き、地区の課題等を皆様に丁寧にご説明をして、防災まちづくりについてご理解いただけるように努めてまいります。
※ここで、都市整備費は、時間切れ。
↓↓↓続きの質疑は、10/3練馬区議会「全款」で行いました!↓↓↓
Q3:様々な考え方がある
さらに報告書には
「東京消防庁の考え方では消防活動困難区域はない」
とあります。
実は、この記述について、今年の8月、
東京消防庁から練馬区防災まちづくり課に確認がいきました。
正しくは、
- 東京消防庁が「消防活動困難区域」という考え方を持っていたのは、平成9年の第五回地域別危険度測定まで
- それ以降は、水利の有効性、消防隊の到達度など、複数の指標を設けるやり方にした
つまり、災害時に実働する当の東京消防庁が
消防活動困難区域という考え方自体を、20年以上昔にやめていたのですが、
担当課は、東京消防庁の考え方が変わっていることを知らなかったとのこと。
区は、誤った知識のまま、本事業を進めてきたと言えます。
そこで質問です。
消防活動困難区域については、「6m道路から140m」という基準以外にも、様々な考え方、複数の指標があることを、練馬区はすでに承知したと思いますが、その点を認めますか? お答えください。
A:防災まちづくり課長
- 今委員のご指摘のあった、消防庁では震災時の消火活動困難度を町丁目別に公表していると聞いております。
- これは地域の延焼危険度、消防の水利の有効性や消防隊の到達性を元に5段階でランク付けをしているもので、
- 23区の中では最も危険度の高いものはランク5というようなのはございません。
- 先ほど言った桜台の2丁目については、ランク1、ランク2となっておりまして、
- 東京消防庁の考え方では危険度は低い、ということになっておりますが、
- このランク1と2につきましては、23区内では99%の町丁目がランク1、2になっております。
- 一方、東京都が発表した第9回地震に関する地域危険度測定では、桜台2丁目が建物倒壊危険度と火災危険度と災害時活動困難係数から算出した総合危険度では、5段階評価のうち上から2番目のランク4となっております。
- また火災危険度も5段階評価のうち、上から2番目のランク4となっておりますので、東京消防庁の消防活動困難度の評価をもって安全である、と言える状況ではございません。
- 私共が考えている消防活動困難区域というのは、消火活動ができない区域ということではなく、消火活動を行うのに時間と労力がかかる、つまり困難ということであります。
- 区はその時間と労力を少しでも軽減をするために、震災時はもとより平常時も円滑かつ消防活動が行えるような基盤づくりをつくることが重要だと考えております。
- また委員ご指摘の特定の指標や特別な条件を用いて、この地域が安全といっているようにしか聞こえません。
- 安全安心なまちにするためにはより厳しい手法をもって、また勘案して防災まちづくりを進めることが必要だと考えております。
(答えになっていないので…)高口の反論!
特定の指針に基づいて「危険」とおっしゃっているのは練馬区のほうです。
先ほど「99%は1、2」とおっしゃっていましたが、それ以下の3が4町目あるので、それであれば、そちらを優先すべきじゃないかと思いますし、
「安全」だと書いてあるのは、練馬区が作成した報告書なんですよ。
だからそこを聞いているわけです。
練馬区が作った報告書で、ここは「安全」だと書いてあるわけです。
そこを聞いていて、しかも、お答えになっていないんですけど。
様々な考え方と複数の指標があるということは承知したのかどうか。東京消防庁からその点説明をもらったと思うのですが、その考え方があることを承知したのかどうか、ということを聞いています。
お答えください。
A:防災まちづくり課長
- 繰り返しになりますが、桜台2丁目、桜台東部地区、桜台2丁目については地域危険度がランク4と、上部の危険性の高い地域となっております。
- 特定の指標・条件を用いてこの地域が安全と言っていることではなくて、この地域の危険性を皆様に認識してもらった上で防災まちづくりを進めて行きたいと考えております。
高口の反論!
報告書の内容について東京消防庁から間違いを指摘されて、間違いを認めたにも関わらず、そういう様々な考え方があることは認めない、というのはちょっと矛盾があるかなと思います。
先に進みますが、他の考え方も実際にある中で練馬区の140mの根拠は……
A:技監
(話をさえぎって割り込み)
- 間違いがあったから認めないという事ではなくて、消防庁はそのように考えていることは認識をしたと、いうことです。
- ただし先ほども課長から申し上げましたとおり、消防庁がランク付けしているものでいうと、23区のうち99%が消防庁ではランク1、2ということで、あまり危なくないというような評価付けになっています。
- でも実際は各地区において、消防庁がランク1、ランク2とランク付けしているところでも、各区とも危ないということで密集事業なりのまちづくりを進めています。
- 私共も消防庁の指標だけではなくて、私どもなりに、不燃の建物の状況だとか道路の状況、公園等の状況を勘案して、危ない地区というのを私共なりに抽出しております。
- その中で言うと桜台の地区が危ない地区ということで、練馬区の中で抽出をされています。
- 練馬区が抽出をしているだけではなくて、東京消防庁ではなく、東京都のほうで算定をしている、地震に対する地震危険度調査においては先ほどこれも課長から申し上げましたけれども、23区の中で残念ながら上位7%の範囲内に入るような危ない地域というふうに指定をされています。
- そういった状況から見て、客観的に見ても桜台地区が残念ながら地震等の際に危ない地域になっていますので、私共としてはそういった地域を一刻も早く災害時でも安全な地域にしていきたい、ということでこれからもまちづくりをしっかりと進めて行きたいとそういう考え方でございます。
(※高口注:「上位」というのは、つまり相対的に順番に並べているということです。そうなると必ず、どこかが必ず危ない、ということになります。相対的な基準かどうかを考える必要があります)
【3】140mの単純な指標をやめるべき!
東京消防庁がそう考えていることを「認識した」とおっしゃっていただきました。
東京消防庁のこの地域の評価ランクは上だと、述べておりますので、その点は前回(Q2)の質疑を参考にしてください。
次に進みますが、練馬区の140mの根拠は
『都市防災実務ハンドブック―震災に強い都市づくり・地区まちづくりの手引』
と伺いましたが、こちらは2005年と古く、現在は絶版で入手できません。
ここで示されているのは、ひとつの要素に過ぎず、
手引きの中には、「都市によって定めがある場合はそれを用いてもよい」とあり
「東京消防庁」の「280m」が紹介されています。
実際、280mの基準を採用する他自治体もあります。
また、2020年度の報告書によれば、
路線②とする南北道路をまっすぐ通せば、
消防活動困難区域は83.8%と、大きく解消されます。
しかし、これをまっすぐ通さず、
開三小の北側で東側に曲げる変更をしました。
独自の消防活動困難区域にそれほどこだわるのであれば、
最も有効な方法をとるべきですが、それもしていません。
Q4:不燃領域率の目標達成→26年後!!
不燃領域率についても、報告書に詳しく書かれています。
目標の70%を達成するのは、「事業開始より26年後」
「不燃領域率を向上させるためには、道路や公園整備では~難しく、
建築物の不燃化による向上効果に期待するところが大きい」
と、長期間かかることが明らかに。
しかしまちづくりニュース等に
不燃領域率のことは一切書いていません。
現計画は、特に道路沿線住民の負担に偏ったまま
発信する情報も一部にとどまっており、住民が不安に陥るのは当然です。
国交省も「防災街区整備地区計画作成技術指針」で
「各地域の置かれている状況に応じて計画案を作成することが望ましい」
「市町村が主体性を発揮し創意工夫を」と述べています。
住民の大多数が望む
桜台通り、正久保通りの無電柱化や
ブロック塀の建替え全額負担など
今の桜台の実情にあった効果的な「創意工夫」をすべきです。
そこで質問です。
消防活動困難区域については、「6m道路から140m」という単純な指標を見直し、他の指標も加えた総合的な判断、総合的な対策をとるべきですが、見解を伺います。
A:防災まちづくり課長
- 幅員が狭い道路では、消防車が円滑に通行できないために、円滑に侵入できる6m以上の道路から140mを超える範囲を消防活動区域としております。
- 140mとしている理由は1台の消防車には放水口が3つあり、通常200mのホースを3本使用して消火をいたします。
- 消火活動に当たり200mのホースを現場まで伸ばしていきますが、道路に沿ってホースが曲がることを考慮すると消防車からその直線距離は140mになると想定しています。
- そのようなことから、140mを超える範囲を消防活動困難区域として定義をしているものでございます。
- 区は、震災時はもとより平常時にも円滑な消防活動を行えるような基盤づくりをすることが重要だと考えているため、140mを超える範囲を消防活動困難区域としています。
- これについては国土交通省の密集市街地整備ガイドブックにおいても同様の考え方が示されておりますので、こちらを参考にしております。
国交省が「創意工夫を」と述べているので、是非、桜台の実情に合った防災を求めます。
※正式な議事録は、後日UPされる区議会議事録でご覧ください。