約400世帯が立ち退き!?『稲荷山公園基本計画』の(素案)が(案)に

2022/4/26、練馬区議会・都市整備委員会のレポートです。

『稲荷山公園基本計画(整備イメージ)(案)』

2022年3月19日付、東京新聞の記事「65年前の公園計画が突然再浮上 練馬の住宅街が騒動に「いまさら立ち退きなんて無理」」で、この問題を知ったという方も多いかもしれません。

その素案が「案」になったものが、委員会で報告されました。

くしくも同日、住民から区議会に「計画を見直してほしい」との陳情も提出されました。

内容や問題点をお伝えします。

委員会資料はコチラ

パブコメで、多くの反対意見が!

「素案」に対し、パブリックコメント、オープンハウスなどで、合計210件の意見が寄せられました。

そのうち、計画に反映したのは17件

「犠牲が大きすぎる」など、計画の見直しを求める声も多くありますが、

計画に反対する内容は、盛り込まれませんでした

「案」はどこが変わった?

★基本方針は変更せず

パブコメを経て、素案が「案」になったわけですが……

まず、基本方針や基本的な内容は変わっていません。

そのうえで、以下、大きな変更点が3つあります。

【変更点1】タイトルに(整備イメージ)が付いた

まず変わった点は、タイトル。

(整備イメージ)というカッコ書きが加えられました

練馬区は「基本計画が決まればすべて決まる印象を持たれた方がいたため」「すぐ立ち退きだと理解された方がいて」と答弁しましたが……

一方で、「事業の実施段階は手続きを踏んでいく」等とも答えており、結局は「この計画を進める」という方針自体は変えていません。

「イメージ」だと強調しても、問題点が曖昧になるだけではないでしょうか。

【変更点2】専門家委員会を設ける

「(仮称)専門家委員会」を設置し、

  • 自然環境の保全の方法
  • ゾーンごとの整備内容
  • 段階的な整備の検討

…などを行い、それをもとに「基本計画の具体的内容を検討」する、としています。

具体的にどのような専門家をお呼びするのか等は、不明です。

【変更点3】段階的な整備のロードマップを作成

「計画面積が約10haと大きく、関係する地権者も多い」と、区自身も認めています。

そこで、

  • 第1期実施計画
    →第1期事業
    →第1期事業が一定程度進行
  • 第2期へ…

と、分けて進めること。

そのためのロードマップを作成するとのこと。

※高口の推測では、おそらく、反対の多い左岸の住宅地部分は、後回しにして、森のほうを先に進めるのではないかと思います。

問題点は?

①住民への影響が大きい!

練馬区は丁寧に説明してきたと言っていますが、それでも納得や合意が進んでいないことは、パブコメが示しています。

パブコメでは「犠牲」という言葉が複数出てきました。

住民の「犠牲」の上に成り立つ公園でよいのか?

練馬区は重く受け止めて頂きたい、と議会で要望しました。

②なぜこの区域なのか?→答えず

もともとの計画決定は、昭和32年。その後、昭和53年に区域が追加されました。

実は、昭和32年の計画図などは「不存在」……
おそらく昔の資料なので、都が紛失したのではないかと思います(当時は都の管轄)。

議会で、「なぜ、この区域が設定されたのか?」「新しく追加された理由は?」等と理由を聞きましたが、明確な答弁はありませんでした。

③もっと早く公園にしていれば……

この公園の理念は、「武蔵野の面影を残す」こと。

ですが……すでに左岸はすべて住宅地となり、当の面影は失われています。

住民を立ち退かせ、新たに公園をつくり、「それが武蔵野の面影だ」という……作り出された「面影」とは、一体なんだろうかと、疑問に思うのも当然ではないでしょうか。

こんなに住宅が立ち並ぶ前に、「武蔵野の面影」がまだあった頃に、公園にしていれば……と思ってしまいます。

④今あるみどりを残そう!

もちろん、今残っている森をしっかり守ること、これ以上開発させないことは、大変重要です。それを反対される方は、ほとんどいないでしょう。

だからこそ、ゾーニングを見直し、反対の根強い住宅地をはずす等すれば、計画も進みやすいはずです。

ここ以外にも、今あるみどりを残すことに、貴重な税金を使うべきでもあります。

実際には、毎年約3haずつ、畑(生産緑地)が開発で消えている現状。区は財政を主な理由として、買取をしていません。

もっと残せるものが、あるのではないでしょうか。

⑤地域コミュニティを強調しているのに…

計画では、「区民共同で森を育てることで、地域コミュニティ~が醸成される仕組みづくり」を掲げています。

しかしその計画のために、今現在根付いている地域コミュニティが壊され、立ち退きさせられる……という大きな矛盾があります。

実際に今住んでいる方が、カタクリを守る会などにも参加し、森を守ってきた地域の歴史もあります。

⑥強制的な立ち退きはしない?

住民の方にとって不安なのは、立ち退きによって生活の基盤を失い、慣れ親しんだ地域コミュニティを追われること。

「合意のない強引な進め方はしないか?」
「強制収用はしないか?」

と議会で高口が確認したところ、

「強制収用は考えていない」
「用地取得の段階で、権利者と話し合い、合意…が基本的な方法」

との練馬区の答弁を引き出しました。

住民の方に丁寧に、しっかりと向き合って頂きたい。

特にこのコロナの間だけでも、計画を動かさないようにできないのか、といったこともあわせて要望しました。

一方で、練馬区は別の答弁で

「すべての方が合意すると思っていない」
「相反するものはある」
「すべての方が完全に(合意)…は難しい」

考え方が違うのは当然としても、不利益を被るのは、練馬区ではなく住民です。
相反するものだから……という考えではなく、丁寧に丁寧に進めていくことが、求められます。

⑦予算も期間も不明…

予算規模がいくらかも示さずに進めるのは、練馬区立美術館などでもよく見る練馬区の問題でもありますが……

今回は、「すごく長い期間かかる」と、練馬区も認めています。

それがどのくらいなのか?せめてスパンを示せ、と議会で高口が質疑したところ、

  • 練馬区「これまでの公園では、1区域7~10年かかっている」
  • 「区域ごとに整備→期間もそれぞれ」
  • 「全体の期間は現在は言えない」

との答弁でした。

一般的な話とはいえ、1区域で約10年

2区域でも20年、3区域、4区域となれば……
……私が生きているうちに、完成するでしょうか……汗。

遠い目になりましたが……。

 


練馬区の大きな問題の一つ。
今後も発信していきます!