よりよい産後ケアとは…世田谷区立産後ケアセンターを視察させて頂きました。
2022年4月28日、「世田谷区立産後ケアセンター」を視察させて頂きました。
きっかけは、2月の一般質問。
産後ケアについて、区内の助産師さんにヒアリングした際
“産後ケアの今後のあり方”
という大きなテーマを投げかけて頂きました。
その参考になるとご紹介いただいたのが、世田谷区産後ケアセンターでした。
センターがあることで、どのような違いがあるのか、その意義や課題とは何か……
実際に伺ってきました。
ご協力くださったセンター長・永森久美子様をはじめ、世田谷区のご担当の皆様、お忙しい中、本当にありがとうございました。
心から感謝申し上げます。
↓会派(インクルねりま)の仲間にも声をかけ、5人で伺いました!
世田谷区の状況と産後ケア事業
まずは、出産・子育てを取り巻く、世田谷区の状況と、産後ケア事業の基本を教えて頂きました。
- 世田谷区の人口の推移
- 総人口、児童人口ともに増加。
- 最近は小学生以上の増加が目立ち、傾向が変わりつつある。
- 出生数と合計特殊出生率の推移
- 合計特殊出生率は、東京都より低い数字。
- 出産時の母の年齢別割合
- 35歳以上が47.2%増えている。
- 祖父母の同居近況状況
- 近居でない数字が上がっている。
- 産後ケア事業は、二次予防に位置付け。
- 一次予防は「ポピュレーションアプローチ」→すべての方が対象。
- 「第二期世田谷区子ども計画」
- キャッチコピーは「子どもがいきいきわくわく育つまち」
- 世田谷区の相談窓口
- 子育て世代包括支援センターに位置付け。
- 世田谷区児童相談所と連携
- 区立の児童相談所ができたことで、東京都と区のはざまでうまくいかなかったことが、一元的に運用できるようになった。
世田谷区立産後ケアセンター
続いて、いよいよ、産後ケアセンターについて伺いました。
★なりたち:当初は委託
- 産後ケア事業の開始は、2008年
- 当時、医療機関ではない全国初の事業。
- 法令根拠がなかったため、国や東京都に確認しながら整備した。
- 建物を建ててもらうところから、プロポーザルで行った
- 当時は大学のプロポーザルがあり、委託。
- 土地は、区有地の貸付
- 運営は、当初は委託
- プラス、自主事業としての運営
- 2008年3月スタート
★区立に変更
- 2017(平成29)年10月
- 「世田谷区産後ケアセンター事業に関する条例」を制定
- 同年11月
- プロポーザルにより、委託事業者を選定。
- 日本助産師会に決定。
- 2018(平成30年)
- 区立産後ケアセンターの運営を開始。
- 2021(令和3)年
- 産後ケア事業が、母子保健法に位置付けられる。
★2つの事業
- 区立産後ケアセンターと、
- デイケア専門のママズルームがある
- 自主事業として、授乳育児相談室、ボディーケアなど
★区立のメリットとは?
- 区立だから安心、という面がある。
- 区民に「産後ケアはどこがいいか」と聞かれたとき、近くのところ等をすすめてきた
→区立だとおすすめしやすい。
- 区民に「産後ケアはどこがいいか」と聞かれたとき、近くのところ等をすすめてきた
- 大きいところで統一的なケアができる。
- 守られたところでスタッフが仕事ができる安心感もある。
★対象者
- 対象者:必要性が判断された方。
- 虐待予防や産後の不安を、保健師やケースワーカーが判断
- 「必要性が高い」とアセスメントした方は、できるだけ調整する
- 事業の周知
- ネウボラ面接、妊娠期の面接でも行っている。
★利用方法
- 利用申し込み
- 登録が済んでいれば、電話で申し込み可
- ご自身で申し込む。
- 利用料
- ショートステイ:4500円
- :デイケア3000円
- 多胎児:プラス500円、250円
- きょうだい児の場合もプラス
★相談事業など
- 地域子育て支援コーディネーターによる子育て情報の紹介
- 地域に繋げるために始めた事業。
- 講座、電話相談
- オンラインの相談も行っている
- 1歳まで利用可能
- 利用後も専門職による継続的な支援が必要な母子が、2割程度いるため
★利用実績
- 2019年(コロナ前)
- 4427人
- 稼働率:81.3%
- 病院から直接来る方も少なくない
- 3ヶ月以降の方は、実家からの里帰り。
- 病院から来る方は、ほぼ世田谷区を通してくる。
- 土日など、直接来る方も稀にいる。
- 知らなかった。
- 自分が利用すると思わなかった。
- ママ友に紹介されてなどの方がいる。
★利用者の背景・特徴
- 疲れている、ナーバス…と感じる
- マニュアル世代でもある
- 「授乳は1日何分何回ですか?」
- なんでも、アプリに頼る傾向。
- 「赤ちゃんを見て」というところをどう伝えるかが課題
- ニーズの変化
- 赤ちゃんをコントロールしたいように感じる方も、中にはいる
- 2ヶ月位経つと、「昼間寝てくれなくてしんどい」等と言ってくる人も少しいる
- センター利用の目的
- 授乳など主な悩みもあるが…
- 幅広い
- 個別性が高い
- 利用者の平均年齢は35歳~
- 区の全体から見ても高い。
- 35歳以上のケアの違いは、体の回復に時間を要する。
- 科学的な根拠はないが、経験的には、若い方はすっと手が出るが、
- 年を取ると、頭で考えるようになるのかもしれない、と思う。
- 取っ掛かりや後押しが必要。
- 暮らしてきた確固たる人生が、赤ちゃんの誕生で壊れる…という方は、年齢が高い方に多いように感じる。
★スタッフに求められること
- 需要・尊重・寛容
- アセスメントの視点
- 心理士とのカウンセリングで、見つめ直す
- 絶大な効果があるわけではない
- 「センターではできたけれど、うちではできない」ということもある。
- 常にはざまにいる
★要因を探る
- 母親の要因を探る
- 独自のスクリーニングも行っている
- 子どもの要因を探る
- 子どもは個性豊か
- 眠りだって、浅い深い、いろいろ
- 環境の要因を探る
- お父さんのことも丁寧に
- DVスコアが高い人は、リーフを渡したり、さりげなく話したりする
★利用者の声
- たまっていた不安や質問などを解決できて大変助かった。
- 母乳や産後の体について丁寧に教えてもらい、いろいろと安心することができた。
- たくさんアドバイスをいただき、気持ちが楽になり、自宅に帰ってもまた前向きに育児ができそう。
- 久しぶりに上の子と2人です押す時間が持て、心のざわざわが落ち着いた。
- 上の子の頑張りを改めて実感できた。
- 自分自身では困っていることに自覚がなかったことについて、サポートを提案してもらい、今の育児生活を考え直したり、工夫する良いきっかけになった。
- あやし方を見せてもらい、赤ちゃんとの関わり方のレパートリーが増やせてよかった。
- 食事の味付け、ボリューム品数全てバランスが良く、産後の体に染み渡りました。
★今後の課題
- さらなる連携の強化
- ケアの評価が見えるシステム
- 助産士のスキルアップと、セルフケア
- 母親同士が繋がる場の確保
- オンライン相談の充実
質疑応答
Q:なぜ、区立で行おうと思ったのか。
- 「安定的」というところが大きい。
- 意義やメリットの一つ:料金が安いこと。
- 民間だと、1日3万円のところが多いが、1日4500円。
- 非課税世帯には、生活保護世帯には減免もある。
Q:区立の意義やメリットについて
- 守られた中で仕事をさせていただいている。
- 申し込みなどは全て一度区で受けてくれる。
- 手間はあるが、クレーム対応をしなくてよいのは大きい。
- 安心できる。
- 一番大きいのは、経済面で恵まれている。
- 経済的な心配をせずケアに専念できる。
- 他のところは、1人につきいくら、という補助金。
- 利用者が来ないと、経営難となる。
Q:仕事をしていてよかった点は?
- 「いきいきわくわく」という理念を目指すために何をしたらいいのか…と考えたときに、お母さんの笑顔が目標。
- 実際に多くの方が、笑顔になって帰る。
- お母さんが変わっていく姿がわかる。
- 最初は毎日不安でいた人→育児が楽しくなってきたと言ってくれた。
Q:運営していて、実感することは?
- 赤ちゃんから離れたい方もいる。
- 休息したい。
- 話を聞くと、赤ちゃんのサインがわからない
- 赤ちゃんの気持ちを代弁してあげる。
- 赤ちゃんが発信を始め、コミュニケーションが始まる。
- 赤ちゃんの声が出ない→真面目な育児ということもあるし、スマホの影響も大きいと思う。
Q:助産師さんの育成について
- 助産師を目指す学生が研修に来る。
- 分娩後の流れが理解できる。
- お産の流れや心身への影響がわかった後に、ここに来る方が多い。
- アセスメントできる人じゃないと難しい
- 時間の流れは、病院よりゆっくり→ゆっくりと関わる。
- 利用者と、話せる関係が築けるかどうか。
- 関係性を築くことが必要。
Q:産後ケアの今後のあり方について、どう思うか?
- 預かればいい、だけじゃない。
- 預かった人が、その後どうなるか。
- 頑張れる人を支える仕事もある。
- 見極めが難しい。
- 区立の恵まれた体制
- 広がればいいと思うが、地域にもよる。
- 自治体でどうしたら良いかは違うが、行政のサポートは必要。
Q:課題について
- 医療機関とどう繋がるか、連携。
- 駅の向こうでちょっと遠いため、近所にしている。
- 緊急時の対応、何かあったときの体制
- 少ないが、あればさらに安心できる。
- 個々のスキルアップ、どう継続したらよいか。
- ここでやったことをどう評価するか。
見学させて頂きました
★3F
- 少し広い部屋→兄弟でも泊まれる
- デイルームは手遊びなど
- 上の子が時間を持てあますとき、テレビをつけたりもする。
★2F
- スタッフルーム、ベビールームなど
- 双子の部屋もある
★1F
- 厨房、食堂
- 昔は皆一緒にワイワイ食べていたが、今は各自の部屋で
- アンパンマンのプレート!
きょうだい児への配慮が感じられますね♪
- 清潔な内観
- あたたかな雰囲気を感じます
★外観
聞かせて頂いたお話をもとに、練馬区でどのように産後ケアを充実していけるのか、さらに勉強し、質疑を深めていきたいと思います。
ありがとうございました。