インボイス反対の陳情、質疑に対し、練馬区の答弁は…【練馬区議会・区民生活委員会2023/8/29】

2023/8/29、練馬区議会・区民生活委員会のレポートです。

インボイス反対の陳情を、質疑

練馬区議会では、選挙後の今期から、陳情の審査を行うこととなりました。

練馬区立美術館の改築見直しを求める陳情に続き、審査の対象となったのが、インボイス。

★陳情者の数

6/20の提出時点で16人

→8/29には1158名と激増!

多くの方が賛同していることが、この数からも、わかります。

★陳情の内容は、こちら↓

陳情第1号「消費税インボイス制度の実施中止を求める意見書を政府に提出することについて」

 

★陳情の主旨

  • インボイス制度が導入されると…
    • 免税事業者の事務負担増、消費税増
    • 課税事業者も負担増
    • コロナ禍から再起をはかる事業者の重い足かせに
    • 練馬区の地域産業、文化芸術等の中小事業者にも深刻な影響
    • 価格転嫁(値上げ)につながる
    • 全国145の自治体で、同主旨の意見書が提出されている(2022年12月末時点)

 

練馬区の中小事業者は、なんと8割を占めます。
練馬区にも大きな大きな悪影響を与える、大問題です。

高口としては、全くもって、この陳情に賛成しかないのですが……?

 

請求した資料、出てこず…

陳情が委員会に付託されると、まず資料請求をします。

6月の時点で、高口からは

  • シルバー人材センターの主なサービスで、いくら上がったか
  • 最もあがったサービスと金額

を請求しましたが、「資料がない」との理由で、出てこず。

のむら説委員からは、

  • 年間1千万円以下の事業者の課税状況、登録状況
  • 区内フリーランスなど→関係者が制度導入によってどんな影響を受けるかがわかる資料

を請求しましたが、「区が該当データを持ち合わせていない」と、
これも出てきませんでした。

他委員の質疑より

★質疑したのは8人中3人

当日は、高口を含め、わずか3人しか、質疑をしませんでした。

いわゆる区長与党の会派の方々は、質疑をしていません。
それでどのような賛否を下すのか、不明です。


↓ここからは、質疑の内容をお伝えしていきます↓

★練馬区、区民、事業者への影響は?

当然、練馬区としては、どのような影響があるのかを考え、対策を練らなくてはならない立場。

影響の大きさを考えれば、インボイスに反対してしかるべきところですが……

  • 練馬区「国税」なので「直接影響はない」

と、驚くべき答弁……

実際は、国税として入る一部が消費税として地方に入ってくるので、練馬区としてはプラスになるので、「直接」ではないけれども影響はあります。

何より大切なのは、区民・事業者への影響です。
それについて再度聞かれると……

  • 練馬区「影響は様々考えられる」

……っていや、あ い ま い す ぎ る!!!!!

「様々」ってナンデスカ……?

★答えになってません!

続けて別の委員から、「様々の中身は何か?」という、当然の質問が出たのですが……

  • 練馬区「免税事業者→課税事業者/免税事業者→免税事業者/免税事業者→消費者」
  • 「取引状況に応じ、影響は異なる」

……と、またも「?」な答弁。

いや、そりゃそうですけど。
練馬区民としては、それぞれがどのような影響なのかを知りたいわけですし、答えになっていません

★練馬区の対応は=周知啓発

皆さんお気づきの通り、練馬区としては、インボイス制度に反対の声をあげる気は、ゼロ。

……区民・区内事業者に与える影響を考えると、信じられないことですが……

そんな練馬区が、どのような対応をしていくかというと

  • 練馬区「事業者が対応できるよう、周知が重要」
  • 産業振興公社、ネリサポ(練馬ビジネスサポートセンター)に届いた声
    • 「登録したほうがいいか迷っている」
    • 「帳簿の処理がわからない」
  • 税務相談が週1回だったところ、相談件数が増えたため、7月から週2回に
  • 区はネリサポと協力して、「事業者の不安を取り除き、制度の周知と理解に努める」

一貫して、「制度の周知」という立場を崩しません。
でもそれでは、事業者の本当の危機は、守れないのですが……

★正面から答弁せず…

陳情の主旨にある、「インボイスは重い足かせとなる」という点について、練馬区は賛同するのか?と問われても……

  • 練馬区「区の周知啓発が重要」
  • 「様々な影響もあることを踏まえ、周知啓発を行う」

『令和4年度練馬区事業所実態調査』からも、課題は明らかだと指摘されると……

  • 練馬区「登録は任意」
  • 「事業者の判断の手助けになるようにしたい」

と、任意だから大丈夫なんだという答弁。
いや、任意でも、影響から逃げられないのがインボイスなんですが……。

★フリーランスの実態は把握できず

大きく影響を受けるフリーランスの実態の把握について聞かれると、

  • 練馬区「税申告免除の方もいる」
  • 「実態はつかめない・つかみづらい」

と認めました。

ネリサポへの相談などから声を聴き、「適切な支援策を案内」と言いますが、ベストな支援は、インボイス廃止以外にありません。


高口質疑より

質疑の順番がいつもなんとなく会派順なので、最後の質疑に。

★シルバー人材センターの事例より

先ほど、シルバー人材センターの資料は出ない、とお伝えしました。

それについて練馬区は

  • 会員への消費税額、仕入税額控除ができなくなる
  • 「価格に含める改定を予定」

と説明しました。

簡単に言うと、これから値上げするよ、ということ。

シルバー人材センターのHPでもすでに公表されているとのこと(って、探しても見つからないんですけどすごくわかりにくいところに置いてあるのかな……)

3年間は8割控除の特例があるため、10%の2割で、2%増額の改定です。

その後3年間は5割なので5%
特例が終われば、10%の値上げに。

インボイスが値上げにつながることは、この事例からも、明らかなのです。

★インボイス=値上げは明らか!

インボイス導入は、消費者、利用者に跳ね返る。
事実上の値上げ。

ただでさえ、これまでにないガソリン高、資材高騰、物価高騰。
インボイスが、電気代値上げにまでつながりそうだという報道まであります。

インボイスの影響は、免税事業者のみならず、課税事業者にも、消費者である区民にも及ぶことは明らか。

その点を問うと、練馬区は……

  • 区内には中小事業者が多い
  • 4割ちょっとが1千万円未満
  • 『実態調査』の物価高騰の項目から、75%が、価格値上げ・転嫁はできない、できにくいと回答している
  • 価格は、販売価格、仕入額、利益率を踏まえて決める
  • 「周知啓発する」

これもまた、苦しいというか、回答になっていないのですが……

つまり、インボイスによって負担は増えるのに、価格に転嫁もできない。
そう練馬区も認識しているわけです。

ますます苦しくなる事業者の状況が、目に浮かびます。

★インボイスの実態調査をすべき!

結局は、どのような影響があるのか、具体的にどうなるのか、練馬区自身も把握できていない、ということだろうと思います。

それに対し、この間、インボイスの問題点について様々取り組んでこられた、練馬民主商工会さん、通称「練馬民商」さんが、

「インボイスで消費税納税額がいくらになる見込みか」
というアンケートを、会員の皆様にとりました。

練馬区も、このようなインボイスの具体的な調査をすべき!と求めました。

★練馬民主商工会さんのアンケート結果から見えてきたこと

そのうえで、練馬民商さんのアンケート結果によれば

インボイスに登録した場合、

  • 消費税納税額が売上に占める割合は
    • 平均で4.46%
    • 最高で9.76%
    • 約10%も占める事業者もありました
  • 月収換算すると
    • 平均で、消費税納税額が月収の52%にものぼり
    • 最高で117%
    • 1ヶ月分をゆうに超える負担となる事業者もありました。

これを1千万円以上の課税事業者で同様の計算をした場合、

  • 消費税納税額が売上に占める割合は
    • 平均で1.89%、
  • 月収換算すると
    • 平均で、消費税納税額が月収の22%。

つまり売上が大きいほど、消費税の負担割合も減り
売上が少ないほど、消費税の負担割合が大きくのしかかることが見えてきます。

★困窮者が増える→対策は?

当然、インボイスによって困窮する方が出てくることが予想されます。

練馬区としてはそのためのセーフティネット等を、どう対策するのかを問うと……

  • 融資制度等、支援制度がある(すでにあるもの)
  • 周知啓発をはかる
  • 相談に応じ、適切に支援

……と、具体的な点はゼロ。

インボイスで困窮しても、すでにある枠組みのものしか用意がない。

不安しかありません……やっぱり廃止一択でしょう……

★経済を悪化させる制度

「インボイスで商売をやめる」という声が、すでにあがっています。
登録しなければ、取引先にも迷惑がかかるから、という理由もあるそうです。

働き手が不足する。

特に、高齢者となり、仕事を減らしながらも働き続けていた方が、
インボイスをきっかけに廃業することによって
働き手の減少という問題にもつながるのではないかと思っています。

こうして、さらに経済は悪化します。

賃金が全くあがらず30年停滞している日本の経済を、
インボイスはさらに悪化させる危険性をはらむ制度と危惧しています。

その点を、練馬区議会でも強く指摘しました。

★益税・預かり税ではない→練馬区のスタンスは?

これまで見てきたように、練馬区は、これまで「区として周知啓発」と繰り返してきました。

では、練馬区は、
「免税事業者にとっての益税ではない」
「消費税は預かり税ではない」
ことは周知しているのでしょうか?

預かり税でないことは国も司法も認めています。

免税事業者がズルをしているかのように誤解されることは、大変問題です。

その点、練馬区はどのように伝えているのかを問うと……

  • 練馬区「インボイスは国の制度」「税務署が150回説明会」
  • 区は「国の制度の補完」
  • 「区は税務署と連携し、啓発、協力して取り組む」
  • 「細かいものは国へ」

……あれ、いやいや、これまでの説明と違っていませんか?

区として、主体的に周知啓発するのと、「あくまで国の補完」「協力」という立場は、全く異なります。
これまでしてきた答弁も、「補完」程度のスタンスなのかと、疑いたくなります。

その点を重ねて聞くと

  • 「国と連携し、周知に努める」
  • 「適切に対応する」

……答えになっていませんが、つまりは「補完」だということなのでしょうね。

困るのは目の前の、自分たちが守るべき、練馬区民、練馬区の事業者なのに……
それを、わかっているのでしょうか?

★だから益税、預かり税じゃないってば!

結局、「益税ではない、預かり税ではないこともきちんと説明しているのか」という点の答えがないので、

「適切に対応」ということは、どういうことなの?
「預かり税」って説明しているの?していないの?
と聞くと……

  • 練馬区「前年度の売上に対する特例措置で、免除制度がある」

と答弁。

いや、もう、こういう行政の答弁のとってもわかりづらさがなんともヘキエキするのですが……

つまり、消費税の制度として、免除が認められている。
正当で正式な制度であって、益税では全くない、ということですね。

事業の周知というなら、免税事業者にとっての益税ではない、という点も正しく周知頂きたいと思います!

★下請けの弱い立場をどう守るのか?

現状、報道では、免税事業者のインボイス登録はわずか1割にとどまっています。

そうなると、課税事業者が、免税事業者との取引を経費に使えないことになり、
課税事業者への負担としてのしかかります。
そうなると、課税事業者が、免税事業者に対して、値引きを迫るのではないかとの
危惧が指摘されています。

実際、インボイスでは、取引で不利になる可能性があることを、国も認めている、との報道がありました。

当然、インボイス登録するかどうかによって不利益を与えることはしてはいけないわけですが、先日、JTがインボイス登録しないタバコ農家は値引きするといって、公正取引委員会から指導されたとの報道がされたばかりです。

弱い立場の下請けを、練馬区としてはどのように守っていくのか、問うと……

  • 練馬区「発注で、価格の取引の引き下げを一方的にすることは、独禁法、下請法の問題があるとの考えを、公正取引委員会が示している」
  • 「区として周知していく」

……周知しても、すでにJTという大きな企業でさえ起こっているという事実。

周知程度で、区内事業者を守り切れるのか、大きな不安が残ります。

★文化芸術をしぼませるおそれ

最後に、練馬区立美術館をあんなに豪華に改築しようとしている、”文化施策に大いに力を入れている練馬区”も、当然考えなければいけない問題があります。

アニメーター、声優、漫画家、俳優など
クリエイター、アーティストを志す若手への影響が大きく、
「ボイクション」に代表されるような反対アクションが起こっていることは
ご存じの通り。

インボイスは、文化をしぼませるおそれがあるわけですが、
文化政策として、練馬区がどう考えるのか?を問いました。

  • 練馬区「事業者、フリーランス含め影響が出ている」
  • 「文化事業も同様の状況」
  • 「コロナで(アーティストの)活躍の機会を充実」させた
  • 「アーティスト支援を含め、協力していく」

……と、これもまた的を射ない答弁と思うわけですが……

アーティスト支援、活躍の機会の充実は重要なことですが、その前に、廃業の危機にあるということ。

豪華な美術館をつくって、その担い手が減る、業界ごとしぼんでは、意味がないと思わないのでしょうか?

練馬区の文化部門としても、重く受け止めるべきと思います。


インボイス反対の陳情は、採択しかない!

総じて、答弁を聞いていても、

  • インボイス導入はあくまで国の制度→補完的なスタンス
  • 区民や事業者への影響→把握していない
  • 区民や事業者が困窮した場合の想定→新たな対策はゼロ
  • 周知啓発というが、益税でないこと等、正確な情報も自ら発信しない
    →誤った情報で免税事業者が苦しんでいても、正そうとしない

などなど……インボイスが導入されたら不安が増すばかりだなあ、という答弁でした。

質疑を受けても、インボイス反対のこの陳情は、採択しかありえない、と思います。


※2023/9/15追記

審査(結果)は…

2023/9/14、区民生活委員会にて、インボイス陳情の審査が行われました。

■採択→「インボイスに反対」の意

インクル(高口)
共産党
立憲

■不採択→「インボイスに賛成」の意

自民党
公明党
練馬会議
維新

ということで、結果は、残念ながら、不採択に。

とても残念、無念…

ただ、不採択にした会派からも、不安の声があること、丁寧な対応等を求める意見が出ました。
それも、皆さんがたくさん声をあげていればこそ!と思います。

まだまだ、あきらめず、頑張ります。
頑張っていきましょう!


参考