練馬区立小中学校の体罰(2021年度)

※2023/2/10、練馬区議会・文教児童青少年委員会のレポートです。

令和3年度 練馬区立小中学校の体罰等の実態把握

毎年公表しているもので、令和3年度(2021年度)の報告があがってきました。

★調査方法に疑問が…

  1. 校長による個別聞き取り調査
    • 全教職員を対象(外部講師等も含むすべて)
  2. 質問紙・聞き取り調査
    • 全児童対象
    • 担任が配る→書く→担任が集め→管理職
      ↑担任からされたことを、書きにくい!!!
    • 2022年度から変更に
      →封筒に入れてのりづけ、学校外でも書ける、管理職または管理職が指定した教員が複数で見る…など

※2021年度までの方法では、アンケートに書けなかったこともあったのではと、懸念が残ります……

結果

  • “不適切な指導”…小2+中1=計3
  • “暴言等”…小1+中4=計5

★具体的な内容

  • “不適切な指導
    • 廊下でふざけていた生徒を引き離す際、頭と腕を抱えた、いわゆる「ヘッドロック」をする
    • 生徒がよろけるくらいに、クリアファイルで胸を小突く
    • 友達に不適切な発言をした生徒を教室の外へ連れていく際、襟をつかんだところ、手が顔に当たった
  • “暴言”
    • 階段から物を落とした生徒に、大声で怒鳴る
    • 課題を提出しなかった生徒に、大声で汚い言葉で罵り、恐怖感を与えた
    • 繰り返し質問してきた生徒に「おかしい」「バカじゃないのか」
    • 「こんなこともわからないのか」等
    • 部活指導中、荒っぽい言葉で叱責
    • 汚い言葉で”指導”

★同じ人物が2件

件数と学校数が合致しないということは、同じ学校で、複数事案が発生したということ。

状況を聞いたところ、

1校で、同じ人物が短期間に2件起こした、とのこと。

学校、教育委員会から指導し、1年後繰り返していないか確認をし、その後はなかったとのことですが……。

★対応

  • アンケートで発覚:3件
    • 生徒が話しやすい教員が聞き取り、当該教員に確認をし、謝罪などをした
  • 発生後すぐに発覚:5件

疑問

★分類に疑問…それは”指導”なのか?

「体罰分類基準」に基づいて分類されているのですが……

↓コチラ

「不適切な指導」とは、「肉体的負担を与える」こと。
例として「胸倉をつかんで説教」とあります。

それをされた生徒は、どれほどこわいでしょうか……
それは「指導」なのでしょうか?

「行き過ぎた指導」の例には「能力の限界を超えた危険な指導」とあります。
生徒を危険にさらすことが、「指導」なのでしょうか?

私には、それは「暴力」であり、「指導」とは思えません。

「暴言等」には、「恐怖感、侮辱観、人権侵害等の精神的苦痛を与える不適切な言動」とあります。

そして、これらを総称して、「不適切な行為」と呼んでしまっています。

なんと優しい、柔らかい響きでしょうか……。

「指導」や「不適切」などといわずに、はっきりと、「暴力」「虐待」と呼ぶべきではないでしょうか?

そう指摘したところ、

  • この言葉で集計するので、報告は変えられない
  • 「絶対許されない行為と認識」

とのことでしたが……。

そうやって、「指導」と名付け続けることが、「それは指導なんだ」という印象を与え続け、暴力の再生産につながることを危惧します。

★人権意識が重要

生徒を引き離すのに、ヘッドロックをする必要性はありません。それが「体罰」でないのは、「ふざけていた生徒が悪い」からなのでしょうか?

ふざけていようがいまいが、ヘッドロックを教員が生徒にしてはいけません(もちろん逆もしかりですし、生徒間でもしかりです)。

でもわざわざ、「生徒がふざけていた」という説明をそえるところに、「それをさせた生徒が悪い」という気持ちが、にじんではいないでしょうか?

委員会では
「不適切な指導をおそれて適切な指導ができない」
と発言する委員がいて、私は本当に驚きました。

練馬区が「指導力がないから大声や暴力をふるう」「そうでない方法をすべき」と、まっとうな答弁をしても、
「理解できない」と返し、「先生も人間。声のトーンを変えることはある」と……。

教員だけでなく、こういった議員も含めて、人権意識をすみずみにまで、浸透させること。
地域や保護者、生徒自身も理解することが、本当に重要だと、改めて感じました。

また、教員の多忙化を解消し、余裕をもって生徒に向き合えるようにすることが、必要だと思います。


参考