高口討論!家庭的保育事業(保育ママ)の連携施設…本当にすべきことは、他にある!
12/13に閉幕した議会(2019年第4定例会)。
そのなかで、高口が討論を行った議案が…
- 第120号「練馬区家庭的保育事業等の設備および運営の基準に関する条例の一部を改正する条例」
- 第121号「練馬区特定教育・保育施設および特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例の一部を改正する条例」
…ってタイトルを見てもなんのこっちゃ!
というわけで、わかりやすく問題をお伝えしたいと思います。
★条例改正の主旨は、「規制緩和」
今回の議案の主な変更点は、以下3点です。
- 家庭的保育事業(=いわゆる保育ママ)等の「連携施設」の確保
→期限を5年間延長 - 「自園調理」の体制の確保
→期限を5年間延長 - 「認可保育園・幼稚園・こども園」のみとしていた「代替保育」先を
→小規模保育所や、「同等の能力を有すると区が認める者」(代替補助員等)へと規制緩和
★「連携施設」とは?
- 保育連携……保育所の園庭で遊んだり、行事に参加したりなど、保育での連携
- 代替保育……保育ママの急病や休暇のとき、代わりに子どもたちを保育する
- 受入連携……3歳になり、保育ママのもとを卒園する後の受け入れ先
この3つの要素があります。
これまで国と、それに基づく練馬区の条例は、この3つをセットにした連携施設を、「5年のうちに確保」と定めてきました。その確保の期限が、今年度(2019年度)に迫っての、条例改正です。
*参考:2018年の保育ママに関する条例改正でもブログを書いています。
★子どもの安心安全のため、「代替保育」は認可保育園を前提にすべき!
このうち「代替保育」は、家庭的保育事業者にとって、特に重要です。
朝の準備からお散歩、給食準備、寝かしつけ、睡眠チェック、連絡帳、終了点検まで、すべてを請け負う保育ママ。
自分の急病や、身内の不幸など、どうしても休まなければならないとき……。
普段から保育連携をとり、一緒に給食を食べたり、発達相談をしたりしている認可保育園なら、安心して預けることができます。普段から、子どもを理解しており、設備や人員も整っているからです。
保育ママは、自分のために休みが欲しいわけではありません。
子どものため、保護者のために、認可保育園が最善だと、強く求めています。
実際、改正前の条例は、認可保育園を、連携施設の確保先にするよう定めています。
しかし、この5年、練馬区では、代替施設の確保が、まったく進んでいません。
★区は5年、何もしてこなかった!?
その理由を、区は、「待機児童がいるため」と主張します。
しかしそもそも、連携施設は、国の基準に基づき、確保が定められているものです。
3歳児での新たな待機児童とは別次元の問題であり、混同すべきではありません。
*補足:もっと深堀りするならば、1歳児が足りないとして小規模保育所を増やした結果、 3歳児保育が不足する「3歳の壁」。その区の保育施策にも、原因があるわけですが…
たとえば、代替保育について、区でできること、すべきこととして、
- 区立園で調整をはかる
- 私立園に要望してまわる
…などが考えられますが、区はそういった具体的方策をとりませんでした。
それどころか、そのかわりにやったのは、連携施設の基準を緩和するよう、国に求めることでした。
しかも、3年前に、ある園と保育ママで代替保育ができそうだという話になり、「実績として始めていいか?」と、区に相談したとき、「よーいどんで一斉に始めるから待って」と区は答えたそうです。
そして3年間、何も進めませんでした。
このとき、1園からでも始めていたら、今頃もっと、進んでいたのではないでしょうか…?
区は、どちらの方向を向いているのかな?と、私は疑問に思います。
★代替補助員やベビーシッターにまかせて大丈夫?
今回の条例改正=規制緩和によって、区は、保育ママの代替保育先として、
- 代替補助員
- 居宅型訪問保育(いわゆるベビーシッター)
を想定しています。
状況を何も知らないベビーシッターが突然来て、安定した保育ができる…とは、とても考えられません。大変不安です。
★代替補助員の生の声=「不安」「負担」「できない」
代替補助員とは、3日間×7時間=わずか21時間の研修を受けた方でもできるものです。
その方々を否定するわけではもちろんありません。
むしろ代替補助員自身が、保育の重要性をわかっているからこそ、
- 「基礎研修をしたといっても、保育ママ不在時の責任一切を負うのは荷が重すぎる」
- 「普段から送迎時はいない為、保護者対応までは大きな負担」
- 「何かあったらどうしようと不安」
- 「9時間半の長時間労働はできない」
というのが、実際に伺った生の声です。
保育ママ自身も、自分の責任の重さをわかっているからこそ、
- 「一日不在で休みを取る事は考えられない」
- 「万が一の時に断れないので代替保育者になりたくない…という理由で、断られる」
と言い、人材確保にも苦労しています。
実際に今も代替補助員の方はいらっしゃいますが、たとえばお散歩や睡眠チェックなど、人手が必要なところに数時間入ってもらい、一日ずっと入っているわけではない…とのこと。
つまり、代替補助員では、代替保育は難しい。それが、現場の実態なのです。
★卒園後の連携も、不安だらけ…
卒園後の連携について、練馬区の対応は現在、
- 連携先のリストを作り、
- 指数を1点加える対応
…ですが、元々保育ママは短時間保育のため、指数が低いのです。
「2歳までは時短で、3歳で認可に移ってからは、フルタイムで」と考えている保護者もいます。
指数は平均で、50点代。認可保育園の基準は、80点代です。
つまり1点加えても、希望の園に入るのは難しい…ということです。
保護者の声は、
- 「家庭的保育を安心して受けたいが、卒室後に認可保育園に入れないと落ち着かない、不安」
- 「子どもが小さい時は少人数保育を希望したいので、卒室後の確約が欲しい」
- 「保育認定を受けているのに、途中で断ち切られるのは納得できない」
- 「入れないと困るので、入園指数の低い園を書いた。本当に希望する園は指数が高くて書くことすらできない」
1点の加点ではなく、受け皿が確約していれば、卒室まで安心して、保育ママに預けられます。そうすれば保育ママも、事業としても安定し、保育の質も向上します。
その確約がないから、皆、認可保育園へ待機し、空きが出たら移る。そうなれば、保育ママは不安定な運営しかできません。
「確約」が重要なのです。
★他区では、卒園後の受け皿確保ができている!
実際、5区は、卒園後の受け皿を確約する「先行利用調整」を行っています。
153人も保育ママのいる足立区も、いち早く先行利用調整を開始しています。
杉並区では、保育連携、代替保育を含めた連携施設をしっかり定めました。
全国でも46%が、連携施設を確保済みです(厚労省調査、2018年7月)。
★子どもの安心のために、できること、すべきこと。
区は、先日の文教児童青少年委員会で、「すべての子どもの安心のため」だと言いました。
しかし、この条例改正は、こどもの安心からは程遠い内容です。
少人数ならではのあたたかな保育、「命を預かる責任の重い仕事」であることを認めるならば、もっとできることがあるはずです。
たとえば、区立園に、普段から保育士を増員しておけば、その園の保育の質が向上するうえ、代替保育にも対応できます。
民間委託を強引に進めようとするよりも、やるべきことがあるのではないでしょうか?
区立園で体制を整えようとするよりも、民間委託を進めたい…。今回の条例改正は、そんな区の保育施策とも無関係ではない、と高口は考えています。
今後も、子どもの安心安全のため、認可保育園での連携施設の確保を大前提とし、区が率先して行動するよう強く求めていきたいと思います。