石神井図書館の指定管理問題…練馬区の「指定管理の管理」のずさんさが、明らかに…/12/6文教児童青少年委員会

今議会の「議案134号、石神井図書館の指定管理」。
区立直営の石神井図書館を、図書館流通センター(TRC)に指定管理させる…という議案です。

 

★練馬区で2番目に古い、歴史的図書館

石神井図書館は、練馬地区の次に、関泉地区をカバーする図書館として、区民に望まれ育てられてきた図書館です。

図書館という施設は、知の蓄積であり、だからこそ特に、安定的かつ長期的な運営が必要とされていることは、国も認めています。

今回の指定管理は、「練馬区の図書館行政」としても、大きな意味を持つことに……。

「公共の財産」という観点を、区はどのように認識し、これからどうしていこうとしているのか……?

12/6の文教児童青少年委員会で、質疑しました。

★委託館の、離職率の高さ…

今回受託するTRCは、区内4館で、すでに指定管理者となっています。

その職員の離職率のデータを頂きました。

  • 2018年1年間の実績
  • 11.9%、18.8%、17.9%、3.4%
  • 平均13%。

1年間で約2割もやめてしまう館が、2つもある。
これは、長期的・安定的な運営において、非常に問題です。

にもかかわらず、区は

「厚労省の雇用動向調査による離職率は、14.6%。平均13%はそれより低いから問題ない」

と、驚きの答弁……。

問題は、現在は直営で、離職率の差は10倍になると想定されることです(保育委託の問題で、直営の職員の離職率が出ましたが、1~2%でした)

今回は直営→指定管理になるのだから、直営と比較すべきで、全国の離職率と比べること自体が間違っています。

★離職率の高さは、「効率的な人員配置」にも問題が

事業者選定の際の、評価項目のなかに、「効率的・効果的な人員配置」という項目はあっても、「働く職員が安定的に、長期的に働けるための環境づくり」といった項目はありません。

この業者の別の図書館で、実際に雇用されていた方に話を伺うと、
「契約社員の給料では、世帯を持つのは難しい」

HPのクチコミサイトで、離職の理由などを見ても、やはり「給与の安さ」がたくさんあがっている。

待遇は人材の質に直結します。

業者選定の際に、「効率的」であることを優先し、働く人の環境の豊かさを、項目として重視しない。その区の体制に問題があり、それが、離職率の高さにあらわれているのではないかと、高口は考えます。

  • 人件費の用途を区が指定できる「公契約条例」を制定する
  • 最低でも、職員の雇用や労働環境を重視しているかどうかの評価項目をつくる

など、できることはあるはず。

区の評価項目自体が、指定管理者選定にふさわしくないのではないでしょうか。

★館長の異動も、少なくない結果に

離職率とあわせて、館長の交代についても伺いました。

TRCが指定管理する他館について、

  • 2期、約7年の大泉図書館、貫井図書館→2回交替の3人目
  • 3期、約12年の南田中図書館は3回交替、4人目

図書館の専門家からは、
「最近の公共図書館で5、6年以上、全体を見られる仕事をしてきた人が望ましい」
と聞きましたが、今回の館長候補は、「副館長」しか経験していません。

そもそも区の要綱に、館長の経験は「図書館経験2年以上」のみ。

カウンター業務はもちろん、選書も除籍も図書館のしくみや働きをある程度包括的に見られる目が培われている人材が必要ですが、人材確保、館長の継続運営についても、区の目が行き届いていないのではないでしょうか。

★石神井図書館の役割=正規職員の研修は、どこで?

石神井図書館はこれまで、正規職員の研修場所として、区として人材を育てる責任を果たしてきました。

今後の研修は、「来年度は練馬図書館で行う」「現状の職員の異動先については、これから決める、配置換えをする」とのことでした。

しかし、その練馬図書館も指定管理の話が持ち上がっています。
さらには、残る光が丘図書館も、今後の状況が「検討」とされ、指定管理になる?とにおわせている状況……。

正規職員がしっかりと研修を受け、窓口から業務までを知り、図書館業務のわかる職員がどんどんいなくなる。その状況で、練馬区として、指定管理者の管理ができない状況になっていくことが、危惧されます。

★問われる、区の管理体制

直営館が減るにつれ、区の管理体制が、より問われることになります。

今回選ばれた指定管理者は、「施設運営体制」「地域への貢献」の2点で評価が他より高い。これが決め手となりました。

そのうち「施設運営体制」ですが……。

実はこのTRCは、防犯カメラの運用について、同じ会派の池尻成二が情報公開請求をかけたところ、かなりずさんな管理を行っていることがわかりました。

  • 区の運用規定では、カメラの管理責任者しか扱えない、警察への提供は文書の提出があって応じる…としているが、
  • カメラの画像を、利用者にも確認させているケースが複数ある

他の指定管理館でも、

  • 「情報提供照会書は後日」として対応しているケースは多々。
  • 防犯カメラの件がただの手書きのメモ書き

……というずさんさ。

つまり、運用規定が守られていない、意識されてもいない。

これは、区として、業者をまったく管理、教育できていない証拠ではないでしょうか。

条例にもとづく区民のプライバシーを守れていない練馬区に、指定管理を管理する力量がないのではないかと思います。

*ちなみに、書面なしの警察への画像提供に応じず、最も厳格に防犯カメラを運用していた事業者は、今回の公募で落選しています。

図書館は、私たちの「自由」にかかわる施設。
その図書館で、防犯カメラ一つとっても大変ずさんな管理……。

このまま指定管理を広げて、図書館業務のわかる職員も減っていき、本当に質の高い図書館として管理していけるとは思えません。

★指定管理、課題は山積み!

このまま石神井図書館を指定管理し、さらに練馬、光が丘まで指定管理にするかももしれない練馬区。

練馬区全体の図書館の管理はどうするのか?
光が丘が6割を担っている選書もどうしていくのか?

……課題は山積み。

図書館のような非常に公共性の高い分野での指定管理は、非常に問題で、むしろ図書館専門員の待遇をあげ、質の高い人材を確保していく。そういう方向であるべきと、高口は考え、今後も求めていきます。