9/26高口質疑!「保育の質」、もっと本気で!!

10月から幼保無償化が始まります。汐見稔幸東京大学名誉教授によれば、

「公費がより多く使われるようになるほど」「説明責任が求められる」
「公教育性が強まる時代」「質の向上を示さねばならなくなった」
「保育の内容や質についての議論は必須」

と述べています。

厚労省の「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会」でも、「プロセスの質」などの議論が行われています。

こどもを主体とした保育の質向上をめざすために、今こそ議論を!

…との思いで、伺います。

1   保育の質の議論を始めよう!&保育の質へ、予算を!

9月開催の「男女共同参画推進懇談会」にて示された、「第5次男女共同参画推進計画」素案たたき台にて、子育て支援の項目から、「保育所待機児童の解消」「延長保育実施」の文言が削除されました。

これは保育課からの修正とのことで、理由は、

「待機児童は、課題解決の局面に入っていると認識」

「延長保育についても大幅に充実を図っていく事業ではないため」

と、資料に明記されています。

(質問)

待機児童解消を実現したのちは、引き続き数の充実や無認可保育所の認可移行支援を行いながら、今後はその予算を、保育の質向上にしっかりあてていくべきと考えます。また、議会でも、保育の質について本格的に議論していくべきと考えますが、2点、区の今後の方針をお聞かせください。

(区回答)

 

2   保育の質とは何か…質向上のための研修について

ぜひ議論させていただきたいと思います!

問題は、「保育の質」とは何か、です。

子どもとのかかわり、施設、安全面といった環境などの「プロセスの質」、保育士の配置数、保育経験や研修などの「構造(条件)の質」、保育士の「労働環境の質」があります。

世界では、様々な視点による「評価スケール」が長年研究、開発され、質向上につなげられてきました。日本でも近年、日本の保育文化に合うかたちで取り入れる園や自治体が出てきています。

汐見教授は、
「保育の質を向上させる努力は、未来永劫的に続く」
とも述べています。

絶対的な正解はなく、日々の現場で、保育士が保育に向き合うなかで、同僚や、保護者や、子どもたちとともに、保育の質を高めていく……

保育とは、瞬間的な専門性が求められる、高度な専門職です。

だからこそ、保育士が技術を高めていける環境、それを支える職場、働き続けられる雇用条件などを、区として支える必要があります。

(質問)

区の研修としては、公立保育園向けの研修に、私立園の保育士を参加可能とするなどの対策を行っています。他自治体では、「キャリアアップ研修」が位置付けられたことを契機に、研修内容を園で実践し、次の研修で発表する「往還型研修」や、公開型保育研修など、保育者同士が意見交換しながら学びあう研修が、効果、成果をあげています。

区としては、内容の充実や、私立園が参加しやすい工夫など、研修体制について、どのようにお考えですか?

(区回答)

(質問)

研修も日々、保育技術が向上する中で、年々進歩していくので、見直し、充実や、私立園が参加しやすい工夫にも取り組んでいただきたいと思います。

それから近年、保育業界で関心が高まってきているのが、「分散型リーダーシップ」というモデルです。トップダウンに職員を従わせるのではなく、対等で柔軟なリーダーシップが求められています。園長や主任など、リーダーシップのとれる人材を育成するために、区としてはどのような施策を行いますか?

(区回答)

 

3   保育の質=こどものため。保護者の多様なニーズではない

「保育の質を高めよう」という意欲やインセンティブを高めるためにも、さらなる研修や支援体制の充実を求めます。

そのようなリーダーシップを磨くためには、長く働く経験が不可欠です。

そのために、保育士の「労働環境の質」……賃金、福利厚生、1年間の退職率、運営参加、ストレスの意識度などが、評価基準として、重視されています。

一方で、区は、「保護者の多様なニーズ」として、民間委託を進めていますが、委託園の退職率は、毎年10%を推移。高い園では22.2%で、直営の約10倍。

委託によって、保育士の労働環境という保育の質は、確実に下がります。もちろん、突然保育士が全員入れ替わるという、保育の連続性、一貫性を損なう点でも、保育の質は悪化します。それは、子ども主体の理念に反します。

(質問)

区は、これまでも「保護者の多様なニーズ」を理由にとしていますが、民間委託を進めるにあたり、どのようなニーズを根拠としているか、端的に教えてください。

(区回答)

★民間委託は、延長保育も後退に

特に大きく数字として実態が出ているのがニーズ調査です。延長保育を行う認可保育所のニーズが高いということで、委託の口実にしているかと思います。

このニーズ調査を見ると、「延長保育」は、「公立・私立」と分かれていません。ましてや、「直営」と「委託」も分けていません。

「延長保育はないよりあったほうがいい」と考えて回答するのは当然で、必ずしも「委託に賛成」というニーズを反映した結果とは言えません。

また最初に、区は今後、延長保育充実は力を入れないと、発表しているのです。それ以外の答弁は、客観的なデータになっていないと思います。

何より、「多様なニーズ」を根拠としながら、委託によってサービスが後退する実例があります。委託の最大の理由としてきた「延長保育」について、先日委託業者が決定した豊玉保育園では、延長保育の受け入れ総数が20名。現在、継続利用は13名で、7名までスポット利用ができます。ところが、委託園ではスポット利用が「5名」までに制限されるので、直営では7名使えるところが、マイナス2名のサービス低下です。

昨年度の利用実績を見ると、継続利用はのべ197人、スポット利用は433人。2022年度委託予定の北町第二保育園でも、継続利用102人、スポット利用659人という実績。3年分の実績でも、すべてスポット利用が3倍以上高いデータが出ています。

つまりスポット利用のニーズのほうが高く、委託により延長保育は明らかに後退、保護者ニーズにも反するのです。

また、先ほど「民間のノウハウ」と言いましたが、これまで、障害児保育、休日保育、延長保育の実績がなく委託した事業者も一つではありません。

そもそも、今、課長がおっしゃった内容に、こどもを主体とした視点が一個も入っていないということを指摘したいと思います。

何より、「保護者の多様なニーズ」と、「こどものための保育の質」は、必ずしも一致しません。

保育は、保護者のためではなく、子どもの成長を支え、ともに育てるためのもの。

保護者の声を聴くのは、サービスのためではなく、よりよい保育に反映させるためです。ただ「ニーズを聞く」だけでは、保護者をサービスの消費者、お客様扱いにしてしまい、質向上につながりません。親のためにもなりません。いい保育園は、保護者も育ててくれるのです。

目指すべきは、ともにこどもを育て、育ち合う、「共同保育」の姿勢です。

(質問)

以上の観点から、「保護者の多様なニーズ」を改め、「共同保育」の理念、何より「こどもの最善の利益」に立った保育施策へと転換すべきと考えます。いかがですか。

(区回答)

 

 

学童の民間委託も、保護者や子どもの声を聴いて!!

継続利用は無制限とのことですが、スポット利用のほうが需要が高いことのお答えにはなっていないと思いますし、継続利用にはそもそも条件があって、すべての人が利用できるのではないことを指摘しておきます。

前回の議会で民間委託が決定した学童保護者から、要望書が提出されています。
既存の体制や雰囲気の維持を望んでいる、との内容です。

保護者の要望に最大限応えていただく、子どもの意見をしっかり重視していただきたいと要望し、終わります。