【練馬区立美術館・貫井図書館改築問題】反対意見はなかったことに?ワークショップと委員長報告から透ける、本質的問題…

※2023/3/7、練馬区議会「総合・災害対策等特別委員会」のレポートです。

練馬区立美術館・貫井図書館→基本設計のワークショップ

練馬区の一大問題となってしまった、練馬区立美術館の改築……。

練馬区は財政難だといい、福祉事業を削減。
さらに未曽有の物価高騰で、区民は生活難……

そんななか、改築費用、約81億円! 資材高騰でそれ以上!?
まだ築40年弱、リノベーションすればまだまだ使える建物。

本当に今やるべき事業なの!!?

……という、区民の根強い反対をよそに、計画はどんどん進んでしまっています。

ワークショップの課題

★わずか2ヶ月のスピード開催

2月に基本設計事業者が決まりました。

そこでも問題が発覚したばかり、明確な答弁もないままなのですが……

参考

わずか2ヶ月で、ワークショップ開催を表明。
ここまでの速さ、どんどん進めて既成事実化してしまおう、という姿勢すら感じてしまいます。

★第1回概要

  • 事業名(共通)「美術館・貫井図書館設計ワークショップ ~建築をみんなで育てる~」
  • 第1回:4月15日(土)14時~
  • 練馬第三小学校体育館
  • 対象:区内在住、在勤、在学
  • 募集:50人程度
    • 多数なら抽選
    • ハガキか練馬区HPより申込
  • 周知:3月21日号のねりま区報・HP

★内容

  • 設計者の平田晃久氏のお話
  • 図書館と美術館をつなぐスペースの使い方の意見をもらう
  • ワークショップの手法は詰めているところ
  • 一般的には…7-8名のグループ→1テーマ話し合い、意見交換をする

★その他、どうなる?

  • 全5回程度:区「設計者の提案」
  •  サブタイトルの意味
    • 区「使う方、働く者、運営者が建物をたてる」という「思いをこめている」
  • 今後のテーマ:区「状況見ながら」
  • 今後の場所:未定
  • 50名→毎回変える
    • 区「多くの人に参加頂きたい」
    • 増やせるのでは?との意見には、
      区「時間制限、たくさん人数がいても難しい」
  • 報告:区「すべて終わったら何らかの形で、広く皆様に結果、お知らせ」

★大急ぎのスケジュール…

  • 4月~:ワークショップ(5回)
  • 12月:基本設計
  • 2023年度内:実施設計を開始~2024年度にまたがって

すごいはやさで進めてしまうことに……

「ワークショップをやっている間に、基本設計ができてしまうことはないか?」との質問には…

  • 区「意見反映する」
  • 「基本設計とワークショップを切り離すことはない」

との答弁でしたが、なぜこれほどまで急ぐのでしょうか……

高口的疑問

★「みんな」とは?

「~建築をみんなで育てる~」というサブタイトル。

それなら、拙速に進めず、もっと時間をとり、抽選で外れた方も、まだまだ納得できていない方も含めて、意見を反映できるようにすべきではないでしょうか?

「みんな」の中に入れてもらえない区民が出ないように、
反対する方の意見も大切にされるように……!

念のため、「抽選で、恣意的な選択をしない(反対者をはずさない)」という点は、

  • 区「当然厳正な抽選」「(そういうことは)ない」

と、確約をさせました。

多くの方の意見を聴くという上で、意見を別にとるのか?と聞くと

  • 区「まず今回、参加状況を見ながら」

とのことですが、広く意見を募るべきです。
当然そこでは、81億円(以上)というコストも含めた改築の是非も、聴くべきです。

★「コンペではない」の意図

2次の公開プレゼンテーションについて、練馬区は繰り返し、「コンペではない」としてきました。

今後、ワークショップを受け、どう変わっていくのか、まったく変わることもあり得るのか?を聞くと……

  • 区「イメージ」であり「これから」だが、
  • 「根底から(変えることは)ない」

↓あくまで、こちらを根底にするということです。

★太田市美術館・図書館との違いは…

設計者が、太田市美術館・図書館の設計者であり、この時もワークショップを5回開催しています。

こちらがどのように行われたかを調べたところ、詳細がわかる文書を見付けました。

参考– 市民と〈設計〉した公共空間―太田市美術館・図書館における基本設計ワークショップ― / 氏原茂将

簡単にまとめると

  • 太田市美術館・図書館では、毎回同じ人が参加
  • 「したいこと」の意見を出し合う
  • 「共通の利益」で「総意」を出すプロセス

という内容です。

練馬区立美術館の場合は、

  • 毎回人が違う→総意のプロセスを作りにくい
  • 「したいこと」よりも、「してほしくないこと」が眼前にある
    (例)サンライフ練馬をなくしてほしくない、81億円もかけてほしくない…等
  • そもそも反対が根強い上の出発

ワークショップは万能ではありません。
毎回人を変えながら、皆さんが納得していくプロセスを作り出せるでしょうか?

回数や時間にこだわらず、結果や着地点(改築前提)を決めずに、やはりじっくりと話し合いから始めるべきではないでしょうか?

★反対意見は排除されないか?

以上を踏まえると、反対も含めた、どんな意見も率直に言い合える場になるかどうかは、重要です。そこを質疑すると、

  • 区「練馬区独自のやり方でつくっていきたい」
  • 「公開プレゼンテーション→55枚のアンケート、反対は3枚」
  • 「多くの方から期待」
  • 「別(反対)の意見は、(別に)聞く」

→と、反対意見を言わせないのではないか?とも受け取れるような、不安な答弁が……。

★アンケート結果のミスリード

練馬区は、公開プレゼンテーションのアンケート結果が賛成9割だったと強調しています。

しかし、私も参加していたので知っていますが、そもそも改築の賛否を問うアンケートではなく、プレゼンテーションへの感想を聞いたアンケートに過ぎません

設計者がそれぞれ素晴らしいデザインを出してくださったことに対して、反対意見は言いづらいですし、しかも公開プレゼンテーションに来るという時点でフィルターがかかり、そのうえでわずか55枚のアンケート。

それをもって「賛成が9割」かのような印象を与えるのは、大いに疑問です。
(まずこの問題を知らない区民も多数でしょう……)

しかも、昨年2022年8月、中村橋まちづくりでとったアンケートには、練馬区立美術館改築への反対意見も多数出ていたのに、それは報告されていません

それに、反対が少ないからいいんだ、というのは、とても”非文化的”な態度ではないでしょうか……。

★設計者は反対の状況をわかっているか?

練馬区立美術館改築には、反対意見も根強くあります。
そのうえでワークショップを行う設計者が、その状況をわかっているのかを伺うと…

  • 区「率直な意見交換はしていない」
  • 「SNSはご覧になっている」

とのことでした。

くれぐれも、これまでも高口は、設計者に対していろいろと言ってきたのではありません。
練馬区のやり方、練馬区の改築自体が疑問で、議論をしているのだいうことは、強調に強調を重ねたいです。


委員長報告に象徴される練馬区立美術館問題

以上のように、強引に、区民の反対の声を置き去りにしながら進めている、練馬区立美術館改築。

委員会の最後に、それを象徴する出来事が起こりました……。

★委員長報告とは?

委員長報告とは、1年のまとめ。

その委員会で1年間どのような議論があったのかをまとめて、本会議で報告するものです。
議会事務局が、議事録をもとに素案をつくり、正副委員長の指示で修正し、決定します。

通常、意見は数件掲載される程度ですが、今回の練馬区立美術館改築については、なんと20件に及び。

しかもそのすべてが、美術館の改築に賛同する内容でした。

詳細委員長報告全文はコチラ

↓参考:他の報告はシンプル

こちらは同じ報告内の別の個所。意見は2件のみ。

↓美術館改築の報告部分

青枠が意見(全20件)

★問題①偏った評価

あまりに偏った委員長報告……。

全体を直して頂きたいところですが、難しいことはわかっているので、
最低限2か所だけ、訂正を求めました。

>丁寧、公正な審査の上で事業者を決定したことを評価

こちらは、前回の委員会で、丹青研究所が協力会社に入っているのは公平性に欠けるのではないか?という、まさに争点になった問題。

議会では、評価する声は少数で、ほとんどが疑問の声でした。

それならば、評価しない声もあったことも平等に載せるか、この文自体を削除すべきです。

そう求めましたが、受け入れられませんでした。

★問題②区民が読み取れ?

>区民の様々な声があるなかで

>区民の『賛否等の』様々な声があるなかで

↑せめて、『賛否等の』という4文字だけでも追加してほしいと求めましたが、それすらも、受け入れてもらえませんでした……。

「様々な」という部分に、反対の意見もあったことが「読み取れる」、「慮るのが日本人の美徳」等という反論さえあがりました。

しかし、区民がおもんぱかって読み取るものが、議会の文書であっていいでしょうか?

★反対の声を、なかったことにしてはならない!

この1年、私たちは、練馬区立美術館改築問題について、あらゆる角度から問題を追及し、反対、疑問を提示してきました。

議事録を見ていただければわかる通り、反対の論戦の方が多いです。

しかし委員長報告では、その反対がまるでなかったかのように、消えてしまいました。

区民の声を代表して臨んだ議会。
その区民の思い、声をなしにするかのような委員長報告は、認めるわけにはいきません。

これまでも、他の委員長報告でもクリティカルな批判はのらないのですが、今回は、あまりに度を超えています。

反対意見を無視しないと言いながら、結局は、反対意見を残そうともしない。

今の練馬区議会、練馬区立美術館改築の姿勢そのものを象徴しています。

だからこそ……
身を呈して戦う議員、
区民の声を受け止め、反対の声をあげられる議員、
私たちが、練馬区議会には絶対必要なんだと、

改めて頑張らねばと思いました。

頑張ります!


参考練馬区HP:練馬区立美術館・貫井図書館改築等基本設計業務委託の受託事業者の選定