ヤングケアラー実態調査~小6で1.6%、中2で1.5%

※2022/10/11、練馬区議会・文教児童青少年委員会のレポートです。

ヤングケアラー実態調査の実施結果

資料練馬区HPより

練馬区が2022年6-7月、ヤングケアラーの調査を実施。
その結果が報告されました。

★調査方法と対象

  1. 児童・生徒へのアンケート(中2、小6)
  2. ふれあい月間アンケート(区立小中学校、全生徒)
  3. 教員調査(小中学校勤務)
    ※教員への調査は少なく、練馬区で5例目
  4. 民生児童委員、民生児童協力員

の4調査です。

設問や結果、今後の助言も含め、大学の社会福祉部の教授(国のヤングケアラー検討委員会の座長も務めている方)に依頼をしています。

★回答状況

→教員、特に中学校の教員の回答率が低いことがわかります。

 

結果のまとめ

詳細概要資料はコチラ(練馬区HP)

【調査1より】ヤングケアラーの可能性が高い児童・生徒
=小6:88人(1.6%)、中2:64人(1.5%)

※ヤングケアラーの調査とはわからないかたちで実施

  • 「家族の世話をしている」と回答した生徒
    • 小6:419人(7.8%)←国6.5%
    • 中2:273人(6.6%)←国5.7%
  • ↓時間が長い~短いで分類
  • ここから、ヤングケアラーの可能性が高い生徒を算出
    • 小6:1.6%(88人)
    • 中2:1.5%(64人)
    • 練馬区「低学年が小6と同じ負担とは考えづらい→人数は限られる」
    • 「生活への影響→この中でも限られる」
    • 「すべて支援が必要かというとそうでもない」
  • 生活実態
    • 中学生ではひとり親が多い
    • 生活満足度が傾向。中学生では特に傾向が強い
    • 睡眠時間、学習時間、自由に過ごせる時間→他の群と差はない
  • 世話の対象
    • 「弟・妹」→「母」が多い
    • 内容は「話し相手」「見守り」「家事」が多い
  • 世話をする理由
    • 「当たり前」「自分がしたいと思った」「家族が仕事で忙しい」が多い
    • 中学生は、具体的な家庭状況の選択が多い
  • 世話の影響
    • 具体的な回答は少ない
    • 回答の中では「持ち物や宿題を忘れる」「自分の時間や遊ぶ時間がない」が多かった
  • 相談状況
    • 相談をしない子どもが8割
    • 「相談するほどの悩みではない」に次いで
      「相談しても何も変わらない」が多い
  • 子どもが求めている事
    • 「自由な時間」「自由に過ごせる場所」「勉強を教えてほしい」が多かった
    • 「お世話をかわってくれるサービス」の回答は少ない
      →公的なイメージがまだないのでは
  • まとめとして
  • >ヤングケアラーの可能性が高い子どもたちの中でも、生活への影響や本人の受け止め(負担感)などに軽重がある。
  • >子ども自身が具体的な影響や負担感を訴えるものは少なく、自分からSOSを発しづらい状況がある。

【調査2】記名式の影響が

  • ふれあい月間調査=普段行っている、いじめや不登校などのアンケート
    • ヤングケアラーの調査とは伝えていない
  • 「家事や家族の世話などで、勉強や遊びの時間をつくるのが難しい」
    →「はい」と答えた生徒

    • 小学生:489人(1.5%)
    • 中学生:41人(0.3%)
  • 少なさ=記名式であることの影響
  • 「はい」と答えた生徒には、教員が一人ひとり状況を聞き取り、教育委員会に報告

【調査3】教員の認知度は7割

  • ヤングケアラーという言葉の認知度:約7割
  • 「ヤングケアラーと思われる子どもを把握している」と答えた教員
    • 小学校:9.8%
    • 中学校:23.8%
  • 「支援を行っている」と答えた教員:3-4割
    • 小学校:44.6%
    • 中学校:34.8%
    • 「子どもの話を聞いている」「学校で情報を共有し、支援に向けて検討」「区の支援機関と連携」が多い
  • 「支援を行っていない」と答えた教員:約3割
    • 小学校:28.1%
    • 中学校:33%
    • 「家庭のデリケートな問題に関われない」「本⼈や家族に⾃覚がない」「支援の方法がわからない」「支援が必要な状況ではない」といった回答が多くあった。
    • 自由記述に「忙しくて時間が取れない」と答えた教員も多い
  • 報告書のまとめ「ヤングケアラーの問題は、家庭内のデリケートな問題であり、時間が限られているなかで、家庭の問題にアプローチすることに教員が難しさを感じていることが分かる」

【調査4】⺠⽣・児童委員の難しさ

  • 報告書のまとめ
    • 「ヤングケアラーを把握している⺠⽣・児童委員は全体の4.4%(20⼈)」
    • ⺠⽣・児童委員が、日常の活動で把握するには限界がある

【調査1-4】課題と対応の方向性

  • 具体的には…
    • 「ヤングケアラー連携推進会議」を今年2月発足
    • 「仮称ヤングケアラーカルテ」
    • こどもだけでなく、家庭への支援が必要

質疑より

★介護全体の問題

高口が重要と考えるのは、子どもがケアしている家族等のケアをいかに手厚くするか
そこがケアされないと、ヤングケアラーの問題は解決しないのでは、と思います。

介護保険1・2でできることが制限され、そのしわよせが家族→子ども達に来ているといった状況も、あるのではないでしょうか。

支援につないでも、利用できるサービスがなかったり、対象外だったりすれば、状況は改善されません。

そこをどうするのかを問いました。

  • 練馬区「直接的な支援でなくても、見守りを続ける」
  • 「見逃さない体制に取り組む」
  • 「連携→これまで支援でやってきている」
  • 「ヤングケアラーの切り口→庁内の連携会議体で協議を進めていく」

とのことですが……

たとえば、介護保険が使えなくても、ヤングケアラーがいれば対応できるようにするなど、実質的な対応が必要と思います。

★先生の多忙化解消も必要

先生の多忙化も、調査結果の中で指摘されていました。

意識改革だけでは「学校の相談体制の強化」は難しいこと、多忙化の解消も同時に必要と、指摘しました。

★練馬区の答弁よりポイントを抜粋

  • ヤングケアラーを把握した時点で見守りが必要
  • 今回の調査で、すべてのヤングケアラーが把握できたわけではない
  • 先生が気づかない理由
    • 本人が問題なく学校生活を送っている事例もある
    • 顕在化しにくい子どもがいる
    • 手を入れられてこなかった事実→意識啓発
  • デリケートな問題
    • 声を上げること=家族の否定と感じる子がいる
    • 頑張っている子たちの自尊感情を傷つけず、
    • 過度な負担(と気づかせる)取組が必要
  • マイナス面の強調だけではなく
    • 人の話をきくのが上手、辛抱強い、マルチタスクに優れている…など
  • 追跡調査→今後を見極める必要
  • 相談先の周知必要
    →10月の教育だよりに掲載予定

ヤングケアラーの問題、今後も引き続き、支援を求めていきたいと思います。