石神井公園駅前再開発、なぜ止まらない?下北沢との違いとは?~都市整備委員会レポート
※2022/5/26練馬区議会・都市整備委員会のレポートです。
「石神井公園駅南口西地区市街地再開発組合の組合設立認可申請について」
↑まるで呪文のような…これだけ見て読まない方が増えそうな(汗)案件の名前ですが、
練馬区の未来にとって、とてもとても重要な案件です。
わかりやすく解説していくので、ぜひお読みください!
資料委員会資料1(組合設立申請について)/委員会資料2(事業計画概要)
石神井公園駅前の再開発事業とは
★これまでの経緯
今問題になっている、石神井公園駅前の再開発。
これまでの経緯をざっくり説明すると……
- 住民が何年も話し合いを重ねて作り上げた「地区計画」
- 練馬区が突如、短期間で変更
→高さ規制を撤廃 - 駅前に100mのタワーマンションを建てる「再開発事業」
- 石神井庁舎もそこに移転する計画(3フロア分)
- 当然、住民の大反対
- 商店街からも反対の声
- メディアにも取り上げられる
- 行政訴訟まで起こる
……と、住民が大反対しているにも関わらず、再開発事業は止まることなく、進んでしまっています。
★「再開発組合」とは?
今回出てきた「組合設立」も、その流れです。
再開発事業は、区が行うのではありません。
土地の所有者(地権者)らが、「再開発組合」という組合をつくり、その組合が行います。
ややこしいですが、これまでは、再開発の準備は進めてきたけれど、組合はできていませんでした(「準備組合」の段階でした)。
今回、事業者との様々な調整が整ったので、正式な「組合」をつくりますよ、という申請をした。
その申請が、5月17日に、練馬区に提出されました。
★認可するのは東京都
練馬区が行うのは、
- 要件を満たしているか(必要な書類がそろっているか)
- 設計概要が都市計画に整合しているか
のチェック程度。
実際に認可を行うのは、東京都です。
練馬区のチェックが終わると、東京都に書類を送り、東京都が審査します。
★このあとの流れ
予定では、今年の8-9月には審査が終わり、「再開発組合の設立認可」を東京都が出す、とみられています。
日程については、ケースバイケースで、変更もありうるそうですが……
議会資料では、
- 2024(令和6)年4月:建築工事着工
- 2027(令和9)年3月:建築工事竣工
というスケジュールが示されています。
石神井公園駅前の再開発、何が問題?
★下北沢との違いは…
シモキタこと下北沢の再開発が、5月25日の東京新聞朝刊のトップを飾りました。
(余談ですが、下北沢は、私も高校時代、劇場や古着屋に通った、思い出のまちです)
当初、強い反対がありましたが、何年も話し合いを重ね、反対派の声も反映して作り上げた結果、シモキタらしい駅前となったそうです。
一方で、石神井公園は……この計画で、石神井公園らしい駅前になるでしょうか?
どこの駅にもあるような、既視感のある、タワーマンションが乱立するまちにならないでしょうか?
30年後、50年後を見据えて、本当に魅力的なまちづくりになっているでしょうか……?
「ここにしかない駅前」「石神井公園にしかない」まちづくりこそ、これからの時代に必要のはず。
そのためにこそ、異なる意見を取り入れて、よりよいものにしていくまちづくりが、必要だったはずです。
練馬区に今何よりも必要なことは、そうした姿勢です。
今からでも転換をと、議会で求めました。
★再開発のカラクリ
駅前の再開発で、タワーマンションが乱立……
都内のあちこちで問題になっています。
なぜ、そうなるのか?
実は、カラクリがあります。
再開発には、多額の税金がつぎこまれ、事業者にとって”おトク”で”もうかる”仕組みだからです。
たとえば。
今年度の練馬区の予算では、建物の調査等の費用が、計上されています。
民間のマンションで、税金で調査できるなんて、普通はないですよね? 再開発だけ、トクベツ。税金で賄えちゃうのです。
ほかにも、広場などを整備すれば、負担は1/3で済みます。
ビルの中に公共施設が入れば、自治体が安定的な店子となるわけです。
うま味が大きい。だから、再開発が起こるのです。
★税金がいくら使われる?
今回の再開発には、
- 補助金:約56億円
- 公共施設管理者負担金:約37億円
- 防災省エネ補助金:約2億円
→合計:約95億円もの税金がつぎ込まれます。
★練馬区がやりたがるワケ
練馬区にもうま味があります。
補助金などは、一度は練馬区が負担しますが、その後、ほとんどが国から補填されるためです。
区の持ち出しがなく、駅前をキレイにできるので、練馬区もやりたい!
……というカラクリです。
★区民にとっては…?
でも、私たちにとっては、出所はちがっても、同じ税金です。
区の持ち出しがナイといっても、石神井庁舎を移転し、再開発ビルに移転する3フロア、約30億円はかかります。
石神井庁舎を建て替えた場合と、いくら違うのか?
そもそも石神井庁舎跡地はどうなるのか?
……そういったことが示されないまま、検証されないままの、30億円です。
★本当に便利になるの?
石神井庁舎を移転する理由の一つに、「駅前だから便利」を、練馬区はあげています。
一方、今の石神井庁舎のいいところは、駐輪や駐車場が目の前にあり、停めてすぐに、建物に入れるところ。
とってもスムーズです。
一方、再開発ビルは……駐輪場、駐車場は地下。他の商業施設とも共有です。
駅から来る方ばかりではありません。
自転車や車、バイクで来る方も多いはず。
駅前=便利とは、必ずしも言えません。
★行政訴訟が起こされた時点で、練馬区のやり方に問題がある!
この再開発には、一度、行政訴訟が起こされていました。
今回の組合認可を受け、今後また、行政訴訟が起こされることになりそうです。
“訴訟が起きないまちづくり”
……なんて、当たり前すぎて、言うのも恥ずかしいようなことです。
行政訴訟が起こされた時点で、住民からの合意がとれたまちづくりができているとは、とても言えません。
強引な手法をしてきた結果、合意もまったく進んでいないことの表れです。
「合意がとれたと区は考えているのか?」と質疑したところ、練馬区は
- 「今後も地権者に理解頂く努力を続ける」
と、正面からの答弁を避けました。
が、これは同意がとれていないと言ったも同然です。
★「強引」だと言うことさえ許されない?
さらに、練馬区は答弁で、
- 「区は(地区計画を)強引に変更していない」
- 「強引」という発言は「避けて頂きたい」
とまで言いました。
実際に、強引だと感じ、練馬区の強引なやり方に反対の声をあげている方々が、今もたくさんいます。
強引だと感じることさえ、否定する?
「強引」だと発言することさえ、許さない?
……そんな権利が、練馬区にあるでしょうか?
(そういう姿勢こそが、強引だと言うのではないでしょうか…)
★強制たちのき(代執行)はあるのか?
今後、大きな問題となるのが、反対している地権者の土地や建物が、強制的に壊され、無理やりどかされることにならないか?という点です。
行政が行う「代執行」には様々な条件がありますが、今回の場合
- 「権利変換」という手続きが済んだあと
- 施行者(組合)から代執行の依頼があった場合
- 練馬区が代執行(強制たちのき)を行う
…という規定になっています。
高口が、「練馬区は代執行をする気があるのか?」と、重要な点を質疑したところ、練馬区は
- 「仮説にお答えできない」
- 「(反対している方の)理解を得るべく話していく」
- 「今の段階で、(代執行を)やります、やりませんと言うべきでない」
……と、こちらも明言を避けました。
しかし、どう考えても、強制的な立ち退きなど、すべきではありません。
もしそれをしてしまえば、取り返しがつきません。
他のまちづくりにも、大きな影響を与えます。
代執行をしないよう、議会でも強く求めました。
設計概要(図面)
- 高さ:99.9m
今後の動き=意見書
6月より、2週間、練馬区で事業計画の縦覧(区役所で計画を見られる)を行います。
また、縦覧開始から4週間、「意見書受付」を行います(対象:関係権利者、提出先:東京都)
ここでどのような意見書が提出されるのか、それを東京都がどのように扱うのか、といったことが、ポイントです。
今後も、皆様に、石神井公園駅前再開発の問題をお伝えしていきます。
まだ諦めずに声をあげている方々がいらっしゃるので、ぜひ応援いただけたらと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。