減り続ける練馬のみどり…守るには? ~みどりの実態調査結果&「練馬区みどりの総合計画」
※2022/5/26練馬区議会・都市整備委員会のレポートです。
「練馬区はみどりが多い」
…練馬区の財産であり、魅力である、みどり。
そのみどりを守るための総合的な計画があります。
それが……
2019年に策定した10年間の計画。
5年目に中間見直しがあります。
そのための調査が行われました。
調査結果から見えてきた、問題とは……!?
令和3年度みどりの実態調査結果(速報)&「練馬区みどりの総合計画」中間見直し
「練馬区みどりの総合計画」の問題とは?
本題に入る前に、まず、この計画の元々の問題をお伝えします。
それが……
緑被率!
上空から写真をパシャッと撮って、みどりの面積がどのくらいあるか。つまり、実際のみどりの量を示す基準です。
練馬区はずっと、「みどり30」といって、「緑被率30%」の目標を掲げてきました。
しかし2019年に、この計画を作った際に、「緑被率30%」という指標を捨ててしまいました。
かわりに、
「緑視率」(目に見える範囲のみどりの量)や、
「満足度」
という、とても曖昧すぎる基準に変えてしまったのです……
しかも目標は「30年後に満足度80%」。
30年後の2050年は、CO2ゼロを達成しなくてはいけないほどの時代。満足度などで”満足”できる時代ではなく、もっと気候危機が差し迫っている頃に違いありません。
あまりにも、呑気すぎるというか……。
これではみどりが、未来が守れない!!!と、当時議会で訴えたのですが……
【調査結果】やっぱり、みどりは減った!
ここで、調査結果を見ていきましょう。
- 緑被面積、緑被率→減少
- 緑視率、満足度→変化なし
案の定、実際のみどりの量(面積、緑被率)は減りました。
一方で、満足度という曖昧な基準さえ、変化なし=向上していません。
「緑被率」という具体的な数値目標がなければ、歯止めがかけられず、みどりが減り続けてしまうのではないでしょうか。
緑被率の目標設定を戻すべきと、議会で求めました。
★5年で73haのみどりが消えた
もう少し詳しく、結果を見ていきます。
2016年→2021年の5年間で…
- 緑被面積:-73ha
- 民有地のみどり:-78ha
- 区のみどり:+5ha
- 緑被率:-1.5%(22.6%)
→公共(区)のみどりは少し増え、民有地のみどりが大量に減ったことがわかります。
★民有地のみどり
では、その民有地の推移を見てみると…
※2018年の調査がないので10年の推移のみ
- 300㎡以上のまとまったみどりが、大きく減った(-53ha、-24.8%)
- 農地も大きく減った(-53ha、-21.2%)
ことがわかります。
★緑視率の推移→変化なし
34地点の調査で、
5%以上みどりが「増加」した地点より、
5%以上「減少」した地点のほうが、多かったのです。
★満足度は「0.8%」減少
区民アンケート調査で「満足・おおむね満足」は
- 69.8%→69.0%と「0.8%減少」
- 区はこれを「誤差の範囲」と説明
- みどりの量「増えている」
- 12.2%で全く変化ナシ
調査結果を受けた中間見直しにも、問題が…
★中間見直しに向けた考え方
この調査結果を受け、練馬区は、中間見直しにあたり、
- 公共のみどりを整備し、みどりのネットワーク形成を進める。
- 農地や樹林地は、保全の取組を強化する。
- 区民と協働して育成管理に取り組む
といった点を掲げています。
★「みどりのネットワーク形成」が大問題!
「みどりのネットワーク」…なんていうと、とても耳障りがよいですが……
一言でいうと、「新しい道路をつくるよ」ということ。
- あたらしい道路をつくる
- =街路樹ができる
- =みどりのネットワーク!
というのが、練馬区の(強引な)論理です。
「街路樹」というと、千川通りや光が丘、学園通りなどの桜並木などを思い浮かべるかもしれませんが……
聞こえの良い言葉に、だまされてはいけません……
今、東京都の方針は、
- 落葉樹は植えない
- 高木、大きくなる木は植えない
- 植えられる樹種は限られる(ハナミズキ、シラカシ等わずか)
これは、落ち葉や隣家や通行人などを考えて「管理しやすくするため」。
つまり、
- 道路のみどりに、生物多様性はない
- 道路ができたら、みどりは減る
……これが、実態です。
「管理」が優先
実際に練馬区自身も、
- 「樹種の配置~現状は様々」
- 「成長したときに管理できる」ように
…と、「管理」しやすさが重要であると答弁しました。
管理しやすい木しか、植えられないのです。
また事実、今進めている「区画街路一号線」では、道路のために石神井川沿いの桜が何本も伐られました…
東京都も認めている
さらに、東京都は
- 「道路はみどりを増やす目的の事業ではない」
- 「みどりはみどりの担当でやるべき」
とも明言したそうです。
「みどりのネットワーク」などと言っている限り、みどりは守れない。
樹林地の面的な確保や、生産緑地を守る施策に重点を置くべきなのです。
★今あるみどりを本気で守ろう!!!
樹林地が消える背景には、生産緑地(畑)のように、相続時の税制優遇がないため、相続で失われやすい……ということがあります。
練馬区も、「保全の取組を強化」としています。具体的には、
- 「調査結果を分析し、協議」
と答弁しました。
しかし……今まさに、失われつつあるみどりがあります。
高口の近隣では、羽根木憩いの森が開発によって一部なくなると聞いています。
一度開発すれば、稲荷山公園計画のように、住民のたちのきが発生します。そこから新しく緑地や公園をつくるのは、ものすごく困難です。
今あるみどりもしっかり守る。
もっと踏み込んだ対策が必要です。
高口の提案!「樹冠率」
緑被率、緑視率も、耳慣れない言葉だと思いますが…
「樹冠率(じゅかんりつ)」
ってご存知でしょうか?
木が葉を広げ、道路を覆い隠し、夏のヒートアイランドを和らげる。温暖化対策にもなる。
ヨーロッパでは採用されている考え方です。
見直しの際は、この「樹冠率」を取り入れるよう求めたところ……
- 練馬区「頂いた意見も考え方のひとつ。今後検討」
と、比較的前向きな答弁を頂けました!
今後のスケジュール
- 6月1日:区報、区ホームページにて実態調査の結果の速報を公表
- 8月:練馬区緑化委員会に諮問
- 2023年7月:練馬区緑化委員会から答申
- 12月:総合計画(中間見直し素案)の公表
→パブリックコメント実施 - 2024年3月:総合計画(中間見直し)決定
……と、中間見直しは2024年。
練馬区議会議員選挙後なので(;^ω^)
次も議員として質疑できるよう、頑張ります!!