谷原保育園廃園は、やっぱり問題!~生産緑地から考える
2022/3/10、練馬区議会・都市整備委員会にて、生産緑地に関する報告がありました。
谷原保育園を廃園にし、新しく私立園をたてようとしている隣の土地も、「生産緑地」ということで……
生産緑地の観点から、谷原保育園廃園問題を考えたいと思います!
生産緑地の買取り制度とは
生産緑地というのは、独自の買取り方式があります。
↓フローはこちら
★練馬区が優先的に買取れる
まず、生産緑地というのは、いわゆる農地、畑のこと。
生産緑地に指定されると、固定資産税等の優遇を受けることができます。
相続が発生し、相続税で現金が必要になり、生産緑地を手放す……これが、生産緑地がなくなる=指定解除で、最も多いパターンです。
このとき、地権者は、最初に、練馬区(正確には練馬区長)に、買取りの申し出をしなくてはなりません。
つまり練馬区が、最優先で、買取るチャンスがあるのです。
★買取らないケースがほとんど
買取り申し出があったら、練馬区は、1ヶ月以内に返事をしなくてはなりません。
実際には、区は生産緑地を買取らず、宅地化等にされるケースがほとんど。
直近の2021年1-9月でも、2.8ha、7件もの生産緑地がなくなりました。
★買取ることにしたら、途中でやめられない!
今回の谷原保育園隣の生産緑地は、保育課が「買取る」と手をあげた(珍しい)パターン。
区が買取ることにした場合、途中でやめることができません。
「価格の交渉がうまくいかないから、やめました」等は、できない仕組みです。
逆に、たとえば地権者が、「やっぱり第三者に売ることにした」というのも認められません。
第三者が入ってくることのできない制度なのです。
★「適正な価格で購入できる」仕組み
価格はどう決まるかというと、地権者と練馬区で話し合うのですが……
不動産価格等に基づいて算出し、財産価格審議会等を経て、決定します。
万一、仮に、「3倍、10倍の値段で買って」等、無理難題を言われたとしても、
- 練馬区「適正な価格で購入できる」
と、練馬区自身が、答弁で認めています(3/10都市整備委員会にて)。
★成立しないケース=ゼロ
価格の協議が成立しない場合には「東京都収用委員会への裁決申請」という仕組みですが、
練馬区の生産緑地で、成立しなかったケースは、ゼロ。
これまで一つもありません。
万一、収用委員会に行ったとしても、そこで、価格を決めます。
練馬区が価格を設定した資料等を提出し、採決を求めることになります。適正な価格が認められるはずです。
★まとめ
ということで、生産緑地というのは、
- 練馬区が優先的に買取れる
- 買取ると決めたら、第三者が入ることはできない
- 価格は適正に決められる
仕組みであることがわかります。
谷原保育園での問題点
★谷原保育園廃園の経過
谷原保育園の隣地の生産緑地については、
- 7月:区に買取り申し出→区が買取る旨を返答
- 8月上旬~:協議開始
- 10月4日~:保育園の1次申請開始
- 11月19日:1次申請〆切
- 11月22日:財産価格審議会→その後、保護者・保育園に廃園を通知
……という経過をたどりました。
3-4か月も期間があり、1次申請が〆切られてから、保護者が知った形です。
その理由について練馬区は、
- 価格協議に支障が出るため
- 財産価格審議会まで公表しなかった
と答弁しています(2022/3/2、3/8予算特別委員会)
具体的には、
- 第三者が入って、価格をつりあげてしまうかもしれない
- 信用にかかわる
といった理由を想定しています。
★保護者に説明できなかった理由にならない
しかし……先ほど説明したとおり、生産緑地の買取りに関しては、第三者が入ってこられない仕組みです。また、価格も適正に決定できると、練馬区自身が認めています。
ですので、たとえば
- 練馬区が地権者の方に、「保護者が困らないよう、先にお知らせをさせて頂けないか」とお願いをする
- 財産価格審議会を、前倒しにする
- 廃園の予定を持ち越す(2023年度以降にする)
- 土地を買うことと、廃園をセットにしない
等の対応は、可能でした。少なくとも、そのための努力をすることは、十分できたはずです。
※ちなみに直近では、緑化委員会が、練馬区の都合で、日程変更になったばかりです。
★結局は、保護者を軽んじている
以上から、1次申請の申込みや〆切の前に、保護者に対して、廃園について説明をすることは可能だったと、私は考えています。
ですが、練馬区はそれをしなかった。
それなのに、「手続きには問題がない」と言い張っています。
結局それで困ったのは、練馬区でしょうか?
……保護者ですよね。
練馬区が、区の都合を優先し、結果的に保護者が困ることになった。
それはまぎれもない事実です。
もちろん、廃園自体撤回すべきと高口は考えますが、
少なくとも、自分たちのやり方で保護者を困らせている、その事実くらいは認められないものでしょうか。
保育園で、子どもたちに「ごめんなさい」を教えますよね?
そして子どもはとっても素直に、「ごめんなさい」が言えます。
練馬区も……子どもを見習うべきだと、私は思います。
(もっとも、そもそも子どもの視点に立ったら、廃園なんてできないと思いますが……)
みどりがなくなる問題も
★農地を残すための制度
生産緑地はもともと、農地、みどりを残すための制度です。
だからこそ、様々な税制などの優遇措置があるのです。
練馬区という行政が真っ先に買取れるのも、民間による開発等を防ぐ目的があります。
残念ながら、公共施設を建てること自体は、違法ではありません。
しかし、制度本来の目的に立ち返れば……
- 農地を残す
- みどりを守る
そのためにはやはり、練馬区が好きに施設を建てるのではなく、区民農園や公園などの緑地にして、農地・みどりを守るべきではないでしょうか?
みどりを守る観点からも、買取った生産緑地をつぶし、保育園を建てることには問題があると、高口は考えます。
生産緑地の観点から考えても、練馬区のやり方には、非常に問題がある。
したがって、谷原保育園の廃園自体も問題がある、と、強く強く強く強く強く、主張したいと思います!!!