【保育園委託問題】5人に1人の子どもに気がかりな点が見られるデータが…【練馬区議会・決算、高口質疑】
練馬区議会・決算「こども家庭費」で 保育園の委託の問題をとりあげました。
委託で一番影響を受けるのは、子どもたちです。
慣れ親しんだ保育士が一斉に入れ替わる… それが子どもたちにとってどれだけショックなことでしょうか。
どんなに引き継ぎを丁寧にしても、 引き継ぐ保育士さんたちがどんなに努力しても、 子どもには精神的な負担が生じます。
保育園は、児童福祉法に制定された子どものための施設。
子どもたちへの影響を真剣に考えるべきではないか… との観点で、質疑しました。
皆さんにも、ぜひ考えて頂きたい問題です。
【Q1】委託→5人に1人の子どもに、気がかりな点が見られる
コロナ禍で様々な行事が中止になり、通常の引き継ぎができないにもかかわらず、委託だけが粛々と進められてきました。
これまでも委託園のアンケートで、委託によって子どもに不安や登園しぶり等が見られたことが、多数報告されています。
★委託園のアンケート結果より…
平成24年度から委託された13園のアンケートをまとめると、
「委託後、お子さんの様子はいかがでしたか」という質問に対し、
「変わらなかった」と「分からない」を除く回答……
つまり「子どもに何らかの変化が見られた」との回答は、
平均で51%、多い園では78%にも上りました。
「気がかりな点があった」「どちらかといえば気がかりな点があった」という項目のみでも
平均で22%、多い園では48%です。
5人に1人の子どもに気がかりな点が生じるというデータです。
★自由意見では…
「委託後、今までなかった爪かみが始まってしまい、やめるまで半年以上かかった」
「先生の数が一晩にして半分以下に減ったことに不安を覚えていた」
「先生から見ても、落ち着きがないなど、ふだんと違い、手がかかる時期があった」
「イライラして怒ったり、泣いたり、保育園に行きたくないということもあった」
「帰ってきてからぐずることが多かったり、笑顔が減ったり、小さいながらも何か感じていると思った」
…など、委託による子どもたちへの心の影響がはっきりと書かれています。
これは大人のように言葉で訴えることのできない子どもたちの精いっぱいの表現だと思います。
この点について、区の認識を伺います。
A:保育計画調整課長
- 委託1年目に実施している利用者アンケート
- 8割から9割の保護者が、総合的に見て現在の事業者による運営に満足
- 個別のアンケート、また、様々な個別の意見も掲載
- 中には、たくさんのお褒めや感謝の意見もあるが
- ご心配やご不安のご意見の方がむしろ重要なものと受けとめている
- 運営事業者も、区も、ご意見を真摯に受け止め、改善に取り組むことによって、2年目、4年目の第三者評価では更に高い評価を得てきている
- 一つひとつの個別の意見にも真摯に向き合いながら、園運営の改善に取り組む
- 引き継ぎにおいても、委託への円滑な移行ができるよう努める
子どもへの影響は、改善されていない
円滑な移行も大切ですし、個別に対応いただくのは当然であり、丁寧に行っていただきたいと思います。
改善につなげているとのことでしたが、残念ながら、年々、気がかりな点が生じる割合が減ることはありません。
今年度委託開始の豊玉保育園で、5月に保護者が実施したアンケートでは、回答者の約3割が「何らかの変化があった」と回答。
令和2年度委託、直近の南大泉保育園でも、「子どもに気がかりな点が生じた」という数字が27%出ています。
また、一方、今年度委託の田柄第二では、既に5か月で3人、豊玉でも1人の離職者が出ています。
何より子どもの権利擁護および最善の利益の保障という児童福祉法の観点から、子どものこの声に耳を傾け、委託を見直していただきたいと強く求めます。
【Q2】再公募→また子どもに、心の傷を与える…
また、さらに今年度、練馬区は委託園4園で再公募を行うと発表しています。
事業者が変われば、また、子どもに精神的な負担が生じます。
委託が子どもの負担を前提とした事業であることが、ここからも分かると思います。
保護者アンケートを情報公開請求しましたが、再公募に関わる意見のほぼ全てが、「事業者を変えないでほしい」というものでした。
例えば、抜粋しますと、
「区営から民間委託されるときに非常にもめた過去があるにも関わらず、また同じあやまちを繰り返すのか」
「子どもや保護者の意見を無視した、何のメリットもない行動」
「困るのは通っている子どもたち」
といった厳しい意見です。
選定時、これまでの委託の経験や実績は考慮されるのか?
また、再公募において、直営時代からの練馬区の保育をどのように引き継ぐのか?
2点、お答えください。
A:保育計画調整課長
- 運営事業者を変えないでほしいといった意見が多数あるのは、これまでの運営事業者による運営が保護者に高く評価されている証し
- 運営事業者にとっても、私どもにとっても喜ばしいこと
- 一方で、区としては、保護者に対して、しっかりと説明をしていかなければなりません。
- 再公募を行う園の保護者に対しては、↓と説明
- 保育園の委託は園の安定継続性に配慮し、5年の長期継続契約、2回更新可だが、
- 委託である限り、契約期間満了に伴い、再公募を行う必要があること
- 再公募に当たっては、公正公平な選定を行う必要があり、運営事業者が変わる可能性もあること
- お知らせ文書や保護者アンケートへの回答だけではなく、
- 先日は、平和台保育園の運営委員会の場で、直接、保護者に説明。
- 募集要項、評価項目については、今後、選定委員会の中で決定していく
- それぞれの評価項目の中で、これまでの実績、現事業者の実績が評価されることはあろうかと考える。
委託より先に、民間保育士の給与をあげるべき
よく誤解される方がいらっしゃるのですが、私は、民間の保育園が悪いということは一言も言ったことがありません。
問題は、事業者が一気に変わることによって、子どもの心に影響があること。
あるいは、民間の保育園が公立並みの人件費をもらうことが果たしてあり得るのだろうか?
公定価格が上がらない中で、そういうことは不可能なわけですよね。
そういったことも見据えて質問しているので、誤解いただかないようにお願いいたします。
A:保育計画調整課長
- 引き継ぎの関係ですが、選定に当たって重視することは、
- 例えば平和台保育園であれば、現在の平和台保育園の保育を継承できるかを主眼に選定する
- これは再公募だろうと、新規の委託であろうと、変わりはない。
- 現在の平和台保育園の保育が何かといえば、これまで園と保護者がともに築き上げてきた保育
- 区立園一律のものではございません。
- 区といたしましては、現在の平和台保育園の保育を継承し、更に保護者とともに発展させていくことができる事業者を選定していきたい
- 仮に、事業者が変わることになった場合には、1年間かけて、丁寧にこのような考え方に基づき、適切に引き継ぎを行ってまいりたい
「委託をしても何も変わらない」と説明してきた責任は?
今まさにおっしゃっていただいたように、現在の保育を引き継いでいくということですが、
最初に委託にした際は、区立でも、委託でも、直営の保育と変わりませんとか、委託でも直営の保育は引き継ぐといった説明をしてきたと思います。
それが変遷して、更に事業者が変われば、更に保育が変わっていくことをまさに認めたのかと思います。
委託については、名古屋市で委託園第1号を引き受けた、けやきの木保育園の平松知子園長が、
「委託とは別の保育園を作ること」
と言って、まさに民間の立場からも委託や民間に反対しています。
委託で変わらないということはなく、今おっしゃったように、事業者が変われば違う保育になっていく。
「直営の保育は引き継ぐ」と説明してきたことへの責任が問われると思います。
公的保育の責任は、このコロナ禍の中でより強まっており、委託や再公募、民営化の見直しを求めます。