官製ワーキングプア…会計年度任用職員の待遇改善を!~練馬区予算委員会・高口質疑
2021/3/4、練馬区議会・予算特別委員会の高口の質疑です。
【Q1】公共サービスを支える、なくてはならない存在
高口:会計年度任用職員の制度開始から約1年、制度の課題が見えてきました。
まず……例えば、DV対応の婦人相談員や、図書館の中心で働く図書館専門員など、この職なしに成り立たない基幹業務を担う職ばかりです。
1年では済まない継続性、高い専門性を正しく評価し、本来なら正規職員として位置づけるべきです。
今、会計年度任用職員は、常勤の「4分の3」という勤務時間ですが、例えば、福祉事務所のDV相談は午前8時30分から午後5時15分で、これは婦人相談員の勤務時間とぴったり同じです。
ほかにも被害者を逃がす、警察に行く、アパートの手続、同行支援等、まさに命を守る様々な業務があります。
- 常勤の4分の3という勤務時間が実態に見合っているのか?
- 生産年齢人口の低下により、人材はもはや”奪い合い”。人材確保には、安定した待遇を用意するしかないと思いますが?
<職員課長>
- 当時の国の非常勤職員の運用などを踏まえ、常勤職員の4分の3の勤務時間を限度とし、その範囲内で運営してきた
- 昨年4月1日、会計年度任用職員制度へ移行
- 条件が大きく変わらない→従来の勤務条件を基本として、制度移行した
- 総務省のマニュアルに従い、業務をどの職が担うことが適切かといった検討も行った
- 個々の会計年度任用職員の勤務時間は、適切だと考えている
- 職務の内容や責任の程度、度合いについて、常勤職員の職と異なる設定としている
- 正規職員とすることは考えていない
【Q2】公共サービスの不安定化→区民サービスに影響
高口:低い待遇で高い専門性を求めることを、社会では「やりがい搾取」と呼ばれ、批判されています。基幹業務は、本来、常勤であるべきだと思います。
ここで、「4分の3の時間では足りない」という一例を挙げたいと思います。学校生活支援員の問題です。
まず、制度の移行で、臨時支援員が廃止されて、全体の数としては64人も減って、サービス残業していた話も聞きました。
また、昨年までは月20日まで入れたのですが、今年度からは月17日まで制限されて、土曜授業も増えている中で、週1日から2日、支援員がつかない計算になっています。
また、これまで支援員がついていた子が、「今年度からは支援員をつけられない」と学校に拒否され、結果、負荷のかかった担任の先生が不適切な指導を行い、その子は練馬区外へ転校してしまったという実例も聞いています。
支援員不足は低い待遇も原因で、「賃金が低過ぎるので転職した」という方を実際に知っています。
今の運用では、現場、特に子どもにしわ寄せが行くのが現状です。
- 学校生活支援員が月17日の運用でいいとする根拠は何か?
- 実態に合わない運用のために、現場や子どもにしわ寄せが行っている事実をどう考えるのか?
2点伺います。
<教育指導課長>
- 学校生活支援員は、原則的に、学級担任が関わることができない場面等において補助
- 月17日の根拠→「原則、常勤職員の勤務時間の4分の3を越えないもの」となっている
- 1日の勤務時間も7時間→担任との情報共有の時間も確保するため
- 現状、学校からの申請に応じて配置
- 身体介助を中心に、配慮を要する子どもたちの気持ちを落ち着かせたり、学習の補助に配置
- 5割以上の学校では、複数名配置
- 学校の裁量によって、支援員の勤務シフトを変え、毎日支援ができるところもある
- 人材配置として、学校サポーター、学習指導サポーター、共同活動支援員なども
無理やり常勤の4分の3にしているとしか思えない…
高口:(逆に4割の学校では複数配置なし)気持ちを落ち着かせる人が週1日か2日もいない状況で、当然、学級がどうなるかは想像がつきます。
実態に即しているというよりも、無理やり常勤の4分の3に当てはめて運用しているとしか言えないと思います。少なくとも平日は入れるように、運用の見直しをお願いします。
【Q3】官製ワーキングプア=貧困の温床
高口:会計年度任用職員は、手取りにすれば200万円にいかず、低所得となります。
期末手当が入るようになり、表面上待遇は向上したように見えて、その期末手当も、先日、人事院勧告に合わせて引き下げられました。近年、増やすときは勤勉手当で上げるため、勤勉手当のない会計年度任用職員は減る一方です。
同一労働同一賃金のはずが、何十年働いても昇給なし、退職手当もありません。
しかも1年更新で、5年後は公募。区の会計年度任用職員の方からは、「嫌なら変わりは幾らでもいると言われることに怯え、不安定な待遇を飲むしかありません」と、切実な声を伺っています。
これは今、官製ワーキングプアという社会問題にもなっていますが…
- 3千人近い会計年度任用職員の方々の低所得、貧困の問題を、練馬区はどう考えているのか?
- 昇給や経験加算等を導入すべきですが、
2点、見解を伺います。
<職員課長>
- 報酬は、職務内容、労働市場の状況、周辺自治体の状況を勘案して、報酬水準の見直しを行ってきた
- 会計年度任用職員の報酬は、他の自治体と比べても、決して見劣りするものではない
- 今後も、会計年度任用職員を取り巻く状況を勘案して、適切に対応する
- 職務の複雑性、困難性、責任を考慮して定めている
- 次の任用でも特段の変更がないため、昇給・経験加算は行っていない
- 今後もその予定はない
昇給を設ける自治体もある!
高口:DV対応、図書館の中核等、本当に責任の重い仕事を担っていらっしゃると思います。
昇級に取り組む自治体があるとも聞いていますので、ぜひ実施を要望します。
【Q4】官製ワーキングプア=男女差別の温床
高口:問題はまたもう一つ……男女差別の温床でもあります。
練馬区の正規職員は男女ほぼ同数ですが、会計年度任用職員となると、女性2,338人、男性350人と、7倍、圧倒的な差があります。
先ほどの婦人相談員は、女性に特化した唯一の職種ですが、脆弱な処遇が長年続き、それが「女性の置かれている立場の象徴」とも指摘されています。
- 会計年度任用職員が男女格差、女性差別を内包した制度である点を、練馬区はどう考えているのか?
- 練馬区の施策は、例えば
- コロナ関連のコールセンターは女性が多数ですが、委託や派遣のために待遇が管理できない
- それを管理するための公契約条例もつくらない
- さらに保育、学童、調理など、女性の多い職種を民間委託し、
→実質的に男女格差を増大させているが、どう考えるか?
<人権男女共同参画課長>
- 会計年度任用職員は非常勤職員から引き続き応募された方も多く、もともと女性が多い状況
- 男女の区別ない勤務時間、報酬であり、女性にとって働きやすいことから、女性の応募者が多くなっていると推測
- 区は、男女別の募集を行っているわけではなく、能力主義で採用
- 男女差別の解消等については、国や経済界でも取組が進められていると認識
- 区では、第5次男女共同参画計画に基づき、男性や事業者への女性の活躍に向けた取組、女性のスキル向上、意欲を高めるための取組を重点として行っている
- 今後も継続して取り組み、誰もが輝ける社会を目指して、着実に理解促進、事業を進めていきたい
家事労働、ケア労働…社会構造の問題が根底に
高口:これは構造の問題だと思います。
女性が非正規で勤めやすい理由は、家事や育児、介護を担っているからです。
女性が無償で担ってきた家事労働と、ケア労働という問題が根底にあって、女性の昇進が難しい理由も根っこは同じだと思います。
男女格差解消の観点でも、民間委託も含めて見直しを要望します。
【Q5】官製ワーキングプアを解消し、正規職員の増加を
高口:管制ワーキングプアの問題を放置すれば、結局は生活困窮者を増やし、結果的に区の業務も支出も増大することになります。
社会が複雑化し、公共の仕事が増え続ける今、目先の人件費削減よりも会計年度任用職員をフルタイムや常勤にしていくことが、持続可能な公共サービスになると思います。
今後の社会のあり方も見据えての区の見解を伺います。
<職員課長>
- 会計年度任用職員制度が創設された目的は二つ
- 一つは適正な任用を確保すること
- もう一つは処遇の改善を図ること
- 処遇改善を図るという目的の下に、期末手当も制度化
- 国は制度創設の際、例えば勤勉手当の支給について、将来の課題としている
- 国としても、現在の制度をこのままコンプリートするものではない
- 今後も見直しの検討がなされると認識
- 区も、国の動きを注視し、制度を適切に運用していく考え
安心して働き続けられる練馬区に!
期末手当が乗った一方で、公募化が既成事実として制度化され、より不安定な雇用になった。
区が率先して、国の検討以上のことをやっていただいて、練馬区でたくさんの方が、安心して働いていただけるようにしていただきたいですし、
会計年度任用職員の問題が格差社会の縮図であることを理解して、対応していただきたいと要望します。