高齢者の”自立した住まい”が問われる…/軽費老人ホーム(大泉ケアハウス)廃止条例

練馬区議会・保健福祉委員会のレポートです(12/4)

  • 第109号 練馬区立軽費老人ホーム条例を廃止する条例
  • 第120号 財産の無償譲渡について(旧田柄特別養護老人ホームほか)

12月議会で可決された、この2本の議案について、問題点をお伝えします。

まずは、議案の内容を、簡単に…

★「第109号 練馬区立軽費老人ホーム条例を廃止する条例」って?

  • 練馬区に一つしかない軽費老人ホーム「大泉ケアハウス」を廃止する。
  • 現在、練馬区社会福祉事業団が指定管理をする区立施設なのですが、それを民営化
  • 社会福祉事業団に、「土地=無償で貸与」「建物=無償譲渡
  • 3-4年後、大規模改修にあわせ、特別養護老人ホームに転換予定
  • 「軽費老人ホーム」が練馬区内に存在しなくなるので、条例が廃止されます。

★「第120号 財産の無償譲渡について(旧田柄特別養護老人ホームほか) 」とは?

平成23年度に民営化した特別養護老人ホーム3つ(田柄、関町、富士見台)と、大泉ケアハウスの4つについて、

建物を無償で譲渡

する…という内容です。

問題点は…?

【問題点1】「軽費老人ホーム」と「都市型軽費老人ホーム」の”格差”

軽費老人ホームは、独立した生活に不安がある高齢者に、安心した自立生活を送っていただく施設。「老人福祉法」で定められています。

「大泉ケアハウス」が、練馬区唯一の「軽費老人ホーム」でした。

一方、「都市型軽費老人ホーム」は、近年増加中。

対象や目的に大きな差はありませんが、最も違うのが、施設基準。広さや設備など…「都市型」は、その名のとおり、都市でも建てられるよう、基準が低く設定されています。具体的には、

  • 大泉ケアハウス:約7畳/ミニキッチン、トイレ等が個室に整備/料金:25000~13万円
  • 都市型軽費老人ホーム:4畳半~6畳/トイレ共同、キッチン等なしでも可/12~25万円

7畳と4畳半…25000円と12万円……差は歴然です。

この条例の廃止によって、本来の施設基準を守った区立のケアハウスがなくなる。
一人暮らしの自立した高齢者の住まいを、練馬区はどう支えていくのか…という点で、大きな転換点といえる条例改正です。

なお、大泉ケアハウスには、生活保護受給者はいませんが、都市型のほうは、約7割が受給しています。

 

Q 高口

・この廃止と新しい民営化の基準によって、その基準がどう変わるのか?
施設の基準自体には変更はないのか?

A 区

・大泉ケアハウスを民営化をするにあたり、現在提供しているサービスの内容、部屋の広さ、設備・サービス等については、引き続き同様のものが提供される


【問題点2】民営化の問題

  • 収支の増減の「一番大きな要因は、人件費」(区答弁)
  • 民営化することで、「合理的な経営の圧縮」が可能というが…
  • 「工事の時期を延ばす、工事内容や工法、規模等を節約」→といっても、できることには限りがある
  • 圧縮されるのは、結局は人件費なのでは……?

 

Q 高口

ケアハウス自体は特養に機能転換されていく前提
運営事業者が、さらに他の事業者に変わったり、急な事業に変更があったりということも、今後起こりうるのか?
・その場合の事業の担保が、協定でどう位置付けられているのか?

A 区

民営化で、事業の大きな変更については区と協議をすると形での整備を考えている
・協定の第16条「特別な事情が生じたときには甲乙協議のうえこの協定の規定を変更をする」
・我々のコントロールのないところで事業者が変わることはないと考えている

Q 高口

・事業団は、これまで普通の民間の介護施設とは違い、処遇困難な高齢者の受け入れ、地域貢献なども含めて運営してきた経緯がある
・今後民営化されるにあたってそこもきちんと担保されるのか?

A 区

・現在、事業団に対し、特別養護老人ホーム・デイサービスセンターを民営化するにあたり、民営化の契約に関連する覚書等で先進的な取り組みや地域貢献、社会貢献といったものを盛り込んでいる
・今後新たな契約、覚書を結びなおすにあたっても、先進的な取り組みや、外郭団体としてより練馬区の福祉に貢献するような要綱を、盛り込んでいく


【問題点3】区=区民の財産を無償譲渡…でも、改修費用は補助をする?

  • 今回の議案で建物を無償譲渡する特別養護老人ホーム3つのうち、田柄のみ、大規模改修が済んでいる
  • 「13億円」かけ、区が行った
  • 一方、他2つの特養と、大泉ケアハウスは、これから自前で費用を積み立てて改修する
  • =対応が不公平
  • さらに、改修の際、練馬区が財政支援を行う
  • しかし、いくら・何割補助するのか等は不明
  • 改修補助は「最大限負担」と明言
  • =民営化による財政効果が不明

 

Q 高口

・改修費を補助する際の考え方や方向性は?
・どのぐらい出すのか、方向性だけでも示していただかないと、民営化の是非が考えられない

A 区

 

・今後の改修経費の額は、事業団の経営状況等客観的に評価
・事業団に
積み立てを行っていただくとともに、
・現在の事業団の介護サービス等に影響を与えない範囲で、最大限負担をさせていただくと考えている


【問題点4】現在の入居者の行き先

  • 44名が利用中
  • 利用者の受け皿→まだ決まっていない

【まとめ】

高齢者の住まいの選択肢をひとつ減らしたことになる、今回の練馬区の条例改正。

今後、ひとり暮らしの高齢者の増加が見込まれるなか、「安心した自立生活を送れる高齢者の住まい」としての軽費老人ホームは、むしろ必要とされるのではないでしょうか?

私たちが年をとり、どんな生活を送りたいのか…そのときに、どんな住まいが必要なのか…そう考えずにはいられない、条例改正です。