大泉ケアハウス民営化計画…4つの問題点/6/11練馬区議会レポ
6/11練馬区議会・保健福祉委員会レポートです。
練馬区立大泉ケアハウス民営化実施計画(案)、課題は?
区立直営の保育園の民間委託が問題になる一方で、高齢者施設は、民営化もどんどん進んでいる状況です。
今回の大泉ケアハウスの民営化について、課題等を考えました。
資料→練馬区立大泉ケアハウス民営化実施計画(案)(PDF)
★「ケアハウス」とは?
- 正式名称「都市型軽費老人ホーム」
- 全室個室(1部屋4畳半~6畳程度)、食事を提供、共同浴室等があり、安否確認や見守りを行う職員が24時間常駐する施設
- 民間事業者でも、都の財政支援で運営できる制度ができた
- 練馬区では現在、民設民営で10 施設ある
★大泉ケアハウスの現状、まとめ
大泉特別養護老人ホーム&大泉デイサービスセンターとの併設施設
- 大泉ケアハウスは、建物の4階の一部と5階
- 定員50名、現在の入居者49 名
- 新規申込受付は停止
開設時より「社会福祉法人 練馬区社会福祉事業団」が委託
- 併設の大泉特養&デイサービスは、すでに民営化
- 大泉ケアハウスは、独立採算での運営が難しいとの理由で、指定管理となっている
- 指定管理期間は、2021/3/31まで
- 「練馬区社会福祉事業団」は、区立特別養護老人ホーム等の運営受託のために練馬区が出資し、設立した社会福祉法人
- すでに区立特養は4つとも民営化
- 残る直営の介護施設は、一部のデイサービスのみ
★民営化(案)の内容は?
建物は無償譲渡、改修費用は区が補助
- 大泉ケアハウスを含む建物全体を、事業団に無償譲渡
- 事業団が改修を行う
- 区が改修経費を補助する方式
区の関わりは?→土地+協定
- 土地は無償貸付(譲渡はしない)
- 協定の期間は5年間とし、更新
運営費は、今後も補助
- 現在:人件費および運営費、年間約1億円のうち、約6千万円を、区が管理業務費として支出
- 民営化後も、利用料収入で賄えない分は区が補助
★特養ホームへ転換の予定
- 今後、大規模改修にあわせ、「特別養護老人ホーム」への機能転換を見込む
- 現在、築 21 年経過
- 特別養護老人ホームの待機者は、練馬区に1,449 名(2019年9月末現在)
★今後のスケジュール
★民営化、4つの問題点
①利用者の利益になる+不利益が生じないこと
まずは、現在の49名の入居者への対応です。
入居者に不利益が生じないようにする対応については、
- 区「サービス、料金は同水準を求める」
- 「スタッフ、サービス、インフラの体制は変わらないと考える」
- 「利用者負担は発生しない」「協定に明記し、担保」
- 「民営化後も、定期的に意見交換し、サービスの質を協定に具体化」
と区は答弁しました。
不利益が生じないことはもちろんですが、不利益が生じた際に区が責任をもって対応することが、協定に盛り込まれるべきと考えます。
②区の監督権限
続いて、民営化後、人件費の使われ方、労務問題など、現場の運営について、区はどのような権限でかかわることになるのか?という点。何かあった際に、区が責任を持てる体制が必要です。
- 区「当面、区が補助」「状況、会計処理を出していただき、審査」
- 「一定関与できる」
- 「土地の所有権は区」
- 「逸脱はないと考えている」
それは、指定管理とはどのように違うのか? という点は
- 区「(区が毎年行う)モニタリングの対象外になる」
- 「福祉サービスの第三者評価を受けて頂く」
……といいますが、モニタリングだけでなく、たとえば指定管理の施設なら、改修の図面や予算、工事事業者の選定などが議会にはかられ、広く区民に公開されます。議会等を通じ、区民の意見を反映することができます。
モニタリングだけの問題ではありません。
③ケアハウス<特養でよいのか?
特養ホームの待機者が多いのも事実ですが、一方で、ケアハウスも必要な施設。
今の社会状況を見れば、今後、独身の高齢者がますます増えることが予想されます。特養に入るほど介護度が高くはないが、一人暮らしは心配がある……そういう方に向けた住まいの問題も、考える必要があります。
④公共の財産を、民間事業者に無償で譲渡してよいのか?
建物は無償譲渡、土地は無償貸付、運営費の不足分は補助……。この事業にかかわらず、福祉全般ですが、そもそも公共性が高く、公共の補助なくして成り立ちません。
それを民営化し、補助は行う…ということが、よいのかどうか、というそもそもの問題があります。
民設民営の同じケアハウスには、ここまでの補助は行わないわけで、公平性の問題もあります。それについては
- 区「大泉ケアハウスに補助を入れる考え方」
- 「49名の入居者に負担を求めない大前提」
- 「歳入だけでは運営できない」ので
- 「引き続き補助金を出す」
と答弁。入居者に負担を求めないのは当然ですが、そもそも「歳入だけでは運営できない」事業であれば、民営化しても同じことではないでしょうか?
公共の福祉を民営化する意義自体が、問われています。