【レポート】会計年度任用職員(非正規公務員)問題を考える
11月13日、練馬区役所にて、
『練馬区の会計年度任用職員(非正規公務員)問題を考える』
を開催しました。
※開催概要はコチラ
竹信三恵子先生の冒頭のお話。
「官製ワーキングプア」と名付けたところ
「わかりやすいですね」という反応があり
「官製ワーキングプア」と呼ぶことにした、とのこと。
まさに「官製ワーキングプア」を広めた、
この問題の第一人者です。
この社会のありかたにも関わる、どれだけ大きな問題かが、よくわかるお話…
レポートしていきます!
官製ワーキングプアとは何か
【1年間の契約】
- お上がつくった、働いても経済的自立が難しい人のこと
- 短期雇用で年収200万円未満が圧倒的
- 組合にも入れない
=労働条件もあげられない - それがまさに、日本の低賃金の状況を作り出している
【8割が女性】
- 「夫がいるから大丈夫でしょう?」
と言われ簡単に雇止めされる - 「夫セーフティネット」
→夫がいるから困らないという思い込みが利用される - 民間では「雇用」という
=労働力を売る契約 - 官の場合、「任用」という
=公務員は任用なので、対等な労働契約を基本とする労働法の外に置か れている、という言い方がされる - 民間の場合=非正規でも5年以上なら無期雇用に
→抜け穴だらけと批判を浴びてはいるが、それでも、民間の権利 - 官の場合、労働契約ではないから、無期雇用にはあたらない、と言われる
(例)「子どもを産んだから契約終了」と言われても文句を言えない
=脆弱な働き方
【どんどん増えている】
- 7割、8割非正規という自治体も出てきている
→どちらが非正規なのかわからない状態… - 全国でならすと3割(練馬区は約3割)
- 「財政が苦しい」と、住民に言い訳するが…(本当の理由は、あとで説明)
【当然の批判】
- 働いているのに権利がない、賃金が安い
- 対面の窓口(相談対応等)で出てくるのは非正規
- 住民も馬鹿じゃない→「どうして?」という当然の疑問
- 裁判など対抗措置もとっている
例:中野区の保育士雇止め
→「法律を整備しなさい」と裁判官がいう - 他にも:ボーナスがないのはおかしい、交通費が出ない
→裁判→結構勝っている
【1年有期の働き手として固定化、合法化】
- NPO法人官製ワーキングプア研究会の理事も務め、交渉をしてきた
- 1年でやる仕事じゃないのに、一年有期にするのがおかしい
- かろうじて再雇用、再雇用でつないできた
- 継続的な仕事は無期が原則、長期雇用にすべきと交渉してきたら…
- 2020年4月、「会計年度任用職員」として合法化
- 「1年有期の新しい公務員をつくります!」
- どんでん返し…(悪い意味で)
【住民も困る】
- 相談している相手が、1年で変わったら…?
- 3年で公募の自治体が多い→今年3年目(練馬区は5年目公募)
→自治体によっては大問題に - 止めないといけない
ジェンダー格差
【全国で62万人】
- 会計年度任用職員の制度開始時、「臨時的任用」「特別非常勤」職員を大幅に絞り、ほとんどを会計年度任用職員にした
- 女性が3分の2
- 「女性だからそうしているわけではない」と説明するが、女性が多い仕事を会計年度任用職員にあてているのは確か
【一種の間接差別】
- たとえば「一般事務員」
→男女共同参画センターの職員を一般事務に入れる自治体もある - 女性が多い資格職→会計年度任用職員に
- 「女だから待遇が低い」とは説明しないが…
- 女性が多い職種の待遇を下げる
=間接的な差別
非正規公務員の現状
2022年はむねっと調査より
※女性の非正規公務員の団体、公=はむ
【半数が200万円未満】
- 250万円未満まで入れると大半
- 15分短めにして非正規
- 賃金が安いと大変な仕事をしていないのでは?と思われるが…
- 例:DV相談員→こわい対応もある、怖い思いをする
- 研修→県外は自費とする自治体も
- DV=六法、こども等、幅広い分野の勉強が必要
→そうしないと対応を間違うので - なのに、最低賃金すれすれの待遇…
- やりがいがあるから耐えている
- 公務=誰かがやらなきゃいけない
- 公務の強味→お金がなくてもやるべきこと
- 思いのない人が働いたら困ると思うので、待遇が低くても続ける
【コロナ禍で、続けていけず…】
- 知り合いが、コロナ禍で非正規公務員をやめた
- コロナのイライラ→住民からの暴言が増える
- お金がない→Wワーク→睡眠不足
- どうしようもなくなり、辞めた…
【気力を奪う会計年度任用職員の制度】
- それまでは、制度があいまいだったから、労働運動すればよくなると思い、我慢してきた
- 3年たったら公募でガラガラポン…
- やる気があるひとほど、優秀な人ほどやめている
- 「一斉に首にしていいのか?」と国に聞いた。
- 民間で解雇規制があるのは、無差別解雇による社会不安と貧困が生じるため
- だから、解雇規制をつけている
- それを約60万人の働き手に行えば同じ問題が起きかねない
- 大丈夫と思っているのか?と国に尋ねると…
- 国の答え「再公募ですから」(再公募で受かれば、また働ける)
- 仮に再公募でOKになっても、一度やめさせるということ
- おかしくないですか?
【総務省のマニュアル】
- 総務省事務処理マニュアルには
- 「公募は、法律上必須ではない」と書いてある
- 必須でないなら、やらなければいいと思うが…
- 「国の場合は」と、「再度の任用を行うことができるのは原則2回まで(国の基幹業務職員は更新2回上限)」とする国の例示が書いてある
- 「必須ではないけどやっていい」と読めるように書いてある
+「必須ではない」と、逃げられるようにも書いてある - 責任追及がしにくい
【ハローワーク職員が非正規】
※2016年、ハローワーク職員について書いた記事(シノドス)
→検索「竹信三恵子 ハローワーク パワハラ公募」
- 1年有期の3年再公募…
- ハローワーク職員だから、労働法的におかしいと、みんな思っている
- しかし、言うとクビになる
- 最低賃金よりはいいし、技能を活かせるからやめたくない
- 取材すると、ひどいことがたくさん出てくる
- 3年目→疑心暗鬼で競争がはじまり、仕事がしにくくなる
- 中にはメンタル、精神疾患を起こす人が出てくる
- 成功していない、うまくいっていない制度
- また自治体でやるのか?
【主たる生計維持者とは?】
- 「夫に養ってもらってるから大丈夫だろう」と散々言われる
- はむねっと(女性の非正規公務員)アンケートより
- 3人に1人は「自分が生計維持者」と回答
- 「自分の就労収入がなくなると家計が非常に厳しい」→多い
- 今、4割、妻が稼いでいる
- 男性の収入が下がっているため
- 妻の収入が下がるのは大問題
- 非正規の場合:24%、非正規妻でも家計に貢献
- 大黒柱がいて、パートはちょこっと…という政治の捉え方のズレ
【将来への不安】
- はむねっとアンケートより
- いつも不安31%、更新時期など18%
- 5割が不安を感じている
- あたりまえ
- いつも来年の不安を抱えている→”拷問”という人も
【解雇=死刑執行と言った人がいる】
- 非正規は毎年死刑執行される
- 労働契約法も適用されず、会計年度任用職員として合法化
- 民間以下
- それなのに、「公務員はいいよな」と窓口で言われる非正規公務員
これから起こる問題と提案
※練馬区では5年公募
【3年公募の問題点】
- 2回更新したら一斉に公募
→つまり3年勤めたら「公募」という形で実績にかかわらず一律雇止め
=今年で3年目 - 公募はやらなくてもいい→なぜやるか?
- 財政は建前で…
- 本当の狙いは、労働権の発生の防止
- 何年も働いてきた人が裁判を起こす
→裁判「法律をなんとかしろ」と言ってきた - 行政「10年できないようにすればいいんでしょ」
→会計年度任用職員は「1年」
→開き直りのよう!? - 裁判でも勝てない可能性と言われている
【ふたをあけたら、ひどかった】
- 「会計年度任用職員になればボーナスが出る」など、説得材料があった
- 公務員の組合もちゃんと反対しなかったのではないか、と思う
- 「この制度はおかしい」といっても「よくなるのに」と言われたりもしたが…
- 悪くなった
【官製ワーキングプア研究会の提案4点】
※国との意見交換会での提案
①「公募は法律上必須ではない」とするマニュアルの主旨を各自治体に徹底すること
- 各自治体に、公募は必須じゃないと通知を
- 今のままだと総務省が推奨しているよう、交付金が出ないかも?というような考えで自治体が対応できない
②「3年目公募」を中止させ、再任用を推奨すること
- 熟練のスキルを活かさない手はない
- 住民相談→「●●さんが頼りになる」と言ってくるひともたくさんいる
- そのひとがいなくなってよいのか?
③多くの自治体で実施されてきた登録制(各職務に対する希望者を日常的にリストアップしておき、欠員が出た場合はその登録者リストから選考する仕組み)を推奨すること
- この仕事をしたい人のリストを持っている自治体もある
- 穴があいたらそこから
④会計年度任用職員の職務には長期雇用や熟練が必要なものが多数存在することなどに鑑み、職務の実態に合った定めのない短時間公務員制度を早期に導入すること
- 3日の任用でも権利、無期雇用→普通の公務員並みに
- フルタイムで週3日などでも→今よりずっといい
↓
国から、ちゃんとした答えはなかったが…
- 練馬区でもやっていいこと、やれること!
【合法化される非正規公務員、変質する公務世界】
- 非正規が変わり、正規の仕事が変わらないわけがない
- 正規=管理職化する
- 管理職ではない職員も、そうせざるを得ない立場に置かれる
- 一線の仕事=窓口は非正規
- 正規は混じっている→むしろ大変になっている
- 正規だからしょっちゅう異動
- 専門的な公務が好きなひとまで異動
- 「正規の待遇がいいのは異動するからだ」と言い換え、理由にできる
- 民間も同じ
- 実際の仕事はパートしか知らない、などが起きている
- ある非正規公務員
「正規のひとは何も知らない」
「やる気起こして混じってくるとすごく手間がかかって効率悪い、来てほしくない」
【往来型の正規公務員が減らされている】
- 「定数」内、常勤、住民の生活を支える、という「従来型公務員」の削減
- 「一緒に何かしましょうよ」と住民に言われても、非正規だと上に言う力がない
- 「非正規の分際で」→聴いてくれない
- 窓口で言っても、伝わらなくなる
- 極端な言い方をすると、伝えたらクビになる可能性もある
- 「公務員って変だなあ、何も知らないなあ」と思ったことがありませんか?
→人件費削減で、公務員、公務がおかしくなっているから - 定数:正規1人につき非正規何人でOKとしたり、人なのに「物品」扱いにしたり…
【委託による外部民間労働者化】
- 入札→安いところに決まる
- 人件費を下げたい自治体
→「いくらでやってください、できないならいいですよ」 - 委託先、職員の人件費上げられなくなる
- 本来の委託=専門性
- 今の委託=人件費削減、丸投げ→サービス低下
- もっといいサービスをしたいから委託
=「これが必要」と委託先が言えば予算措置をとるような委託ならいいが… - (例)2006年、ある自治体のプールで、委託で人件費低下
→高校生に監視
→網が破れていて、女児の水死事故 - 委託の結果、何をチェックするかもわからなくなる正規職員
- (例)営繕課の委託
→庁舎のどこに何があるかわからない、困った - 住民が理解して監視しないと大変なことになっていく
【ポートフォリオ型経営の公務への応用】
- ポートフォリオ型経営とは…株式と債券を取り混ぜて、安定的+利益がとれる
→公務をそうしている - 安くて色々やってくれる非正規+委託→いいサービスをつくるんだ、というが…
- 空想的
- 公務員の非正規化と委託による外部化は表裏一体
→2つを分けて考えることの不毛 - 現場知らないひとが上にいて、できるか?
- やったこともないことを指揮できない
【教育・福祉関係の職員の削減、警察・消防関係は増加】
- 権力型公務(ハンコおす…)のみが公務員
- 「ケア的公務※」は定数外の非正規or委託
※竹信先生の造語 - 生活型から治安型へ、公務の世界が二分化
【正規公務員の中に広がる非正規の蔑視、軽視】
- 同じ仲間として見ない
- 正規公務員への講演会で「だってあのひとたちコネで入った、こしかけ」と言われたことがある
→実情を知らない…びっくり… - 「悔しかったら公務員試験受けて正規になってみろ」→直接言われた非正規公務員も
- 連帯もなくなり、差別と蔑視で職場が二分
- それによってこのひどい労働条件を保っている
【差別は最悪で最強の、最も安易な賃下げ装置】
- あの人は安くてもいいよ
→誰も抵抗しない
→だから安くできる - 女性→安くてもいい
→だからあがらない - 差別を使えば簡単に下げられる
- それによって公務がまわらなくなる
- 住民のために掛け値なしに働かなくてはいけない公務の世界でそれが行われるこわさ
【「非正規公務員」から「低待遇が基本の公務員」へ】
- 「非正規」とは、「正規」から外れている、
つまり、「あるべき姿からの逸脱」という意味だった - これまで→「イレギュラーだから賃金が安い」と言われた
- 会計年度任用職員によって低待遇の公務員が固定化された
=賃金が安くてもいい公務員が定式化された - 非正規公務員の質が変わった
- イレギュラーではなく、「そういう職についたひと」「そういうお仕事」
- 「あるべき姿」がもう公務にない、「あるべき姿」自体が変化
- 「日本から非正規と言う言葉をなくす」という安倍・前首相や竹中平蔵氏の発言
- 「これは非正規ではなく、レギュラー、常態化」
- 「低賃金がレギュラー」という意味で使ったのではないか
- …と疑いたくなるこわさ
住民に奉仕する公務から住民を統治する公務へ
- 「非正規」は、正規公務員行うべき仕事を代わって行っている、という意味合いを含んでいた
- 「一線で住民の世話をするひとなんか低賃金の非正規だ」
…というふうに変わっているおそれ - 正規公務員は別の職務をする人、という転換
- 住民に奉仕する公務から
→住民を統治する公務に変質
【規制と拘束は正規並み、待遇は従来の非正規並み】
- 人事院勧告による賞与削減は低収入の非正規にも
- 前は国家公務員だけだったのに…
- 給与UPより、むしろ切り下げが起きている
- ハローワーク型3年公募の広がり
→「パワハラ公募」 - 昨年の公務員全国メンタルヘルス調査から、会計年度任用職員は事実上排除
- 国は「やってもいいんですけど」「手間がかかるので」という言い方
- 自治体は「やらなくていい」と言われたからやらなかった
- 労契法18条(無期転換ルール)からの排除
- 有期化の合法化による妊娠解雇などの官製マタハラ
- (例)5月で復帰予定が3月で雇止め
→妊娠のせいじゃないと言われたら立証できない - (例)地方の雇止めの相談→取材して、「面白いテーマ」だから取り上げるといったら…→翌日「来年も契約大丈夫」と言ってきた例
- (例)5月で復帰予定が3月で雇止め
- 安易化してきている
- 会計年度任用職員はそういう役割を果たしている…
【非正規のパート化の促進】
- 元はフルタイムだったのに、パートにされた自治体がある
- 1964年は 31.5%がフルタイムだった
→2020年は約2割、会計年度任用職員では1割 - パート:報酬・費用弁済・期末手当(改正地方自治法203条の2)
- フルタイム:給与・諸手当・退職金(同204条)
- 退職金→フルタイムの会計年度任用職員しか出ない
- パートにすれば、支給額を下げられる
- 1964年は 31.5%がフルタイムだった
- 月例給から時間給に=発注された仕事にだけ払えばいい
→再生産や仕事のために必要な間接的な労働時間を値切れる、退職手当請求権がなくなる - 正規と非正規の年収換算額比較は、会計年度制度スタート後も、3~4割のままで変化していない
- 人件費削減策の合法化
- 労働時間差別の合法化
※練馬区はパートタイムの会計年度任用職員しかいない
- オランダなら労働時間差別
- 15分短いだけで…まさに労働時間差別
- 総務省マニュアル「仕事の中身をちゃんとみて判断せよ」というが…
- 議会で質疑したら「ダメなら総務省が通達出すべき」という答弁
【労働実態と雇用形態が乖離】
- (例)飛騨市図書館
- 会計年度任用職員(1年任期)にしたら、人が来なくなった
- 専任の司書がいた→嘱託職員→再任用
→会計年度任用職員では継続的な雇用ができない
→専門技能のある司書を雇えない - 館長が勇気をもってブログに書き、話題に…
- 議員が議会で取り上げたところ、「ゆくゆくは無期の職員も検討する」と答弁
住民が騒ぐ、議員が騒ぐ、重要!
- 非正規公務員が横行した理由→財政削減を主張する議員が多いから
- 「公務員は得してる、ズルしてる」という説明
→結果、住民サービスが削減された - 住民サービスの荒廃
- →騒がないと!
【制限される労働基本権】
- これまで特別職=民間の扱いだった
→使えていたものが、会計年度任用職員になり、使えなくなった - 労働委員会からの排除と人事委員会の不備
- 人事委員会は、非正規公務員を扱ってこなかったから、うまくできない
- 救済機関がなくなった
- 「強化すべき」と要求していくか?
- ユニオンなど職場外の労組による当事者交渉
→職場内労組による正規の代行交渉へ?- 自治労などに入れ、となった
- ちゃんとやってくれば問題ないが、ノウハウないことが多い
- 正規公務員中心の発想
- 「ちゃんとやってます」と言われるが…心配
- ストライキをやっちゃいけない
- 特別職は民間扱いだからできた
- ためらうようになった
- 自主規制「この集会に行ってクビになったら?」
- 市民的権利の阻害
- 調査してる自治体がある
→「デモ行ってないか?」「届け出出せ」と言われた例
- 会計年度任用職員制度後、安易な雇い止めの頻発
- 恣意的な人事更新
→文句を言おうとしても、人事委員会の不備などがある - 雇い止めの口実としての不合理な人事評価、差別の横行
- いろいろな不備→これからどうしていくかが問題
【人事評価をめぐる問題の頻発】
※労組や官製ワーキングプア研究会などへの労働相談から
- 窓口業務ローテーションをはずされた理由、改善すべき点について充分に説明されず、再度窓口業務に従事する機会を与えられない中での評価結果に納得できない。
- 奈良の人事委員会案件
- 2021年2月の再任用拒否
- 「世帯主でないから」=「夫セーフティネット」を理由にした間接差別
- 飯能市の事例
- 2019年に生活困窮者の学習支援員
- →2020年4月会計年度任用職員として継続採用
- →12月、課長から来年度の任用はなしと言われる
- 理由は公募後に示される
- 労災によるけがで「就労能力の欠如」で再任拒否
【非正規の低待遇化を円滑にした性差別
~「差別は最強で最悪の賃下げ装置」】
- 家庭相談員は発足から非正規公務員
- 「都道府県又は市町村の非常勤の特別職として取扱うようにされたい」
- 奉仕する性とされてきた女性の利用と、夫セーフティネットの活用
- 会計年度任用職員の8割近くは女性
- 女性が多く就いていたケア的公務から削減・外部化
【委託でも利用される「ジェンダー秩序」】
- NPOに公務を委託されて…
- 本体に「男」カテゴリー
- 委託NPOに「女カテゴリー」が適用
- 「パートは最低賃金の時給で、ボーナスが出るのはフルタイム勤務者だけ。
責任者クラスでも基本給は20万円に届かない。
無期雇用の契約社員になっても基本、昇給はなく、雇用保険への加入が不要な勤務時間以内に設定されている。
労働契約書はきちんとしていても、繁忙時に無茶な働き方を要求されて残業が続き、事実上休務日がない状態になる」
※グラフ:「公共図書館における非正規雇用職員に関する実態調査(速報)」公益社団法人日本図書館協会 非正規雇用職員に関する委員会 2019/5、渡辺百合子の資料から
背景、原因にあるもの
【「構造改革」「小さな政府」の”潤滑油”】
- 小泉内閣で進んだ
- 2004年1月、当時の小泉純一郎首相の所信表明演説
「愛知県高浜市では、株式会社を設立し一括して業務を委託することにより、市職員の人件費を削減するとともに、地域の雇用を創出しています」と称賛 - 変だなと思い、高浜市に取材しに行った
- 市が100%出資して「高浜市総合サービス株式会社」を設立
- 同社の社員に、正規公務員の仕事だった窓口の事務などを、最低賃金レベルの賃金で委託
- これによって約4億円の人件費削減
- 働くのは、ほとんど妻
- 「地域雇用の問題としてどうか」と聞いたら
- 同社総務課長「トヨタ関連の企業が元気で、夫の仕事が順調。生計の中心者が仕事を見つけやすい地域」「低賃金の女性が増えても大丈夫。夫が扶養するから」
- この地域はこれでやったが、これを全国モデルにしたら困る地域がある
- 自慢するのはおかしい
【ジェンダー秩序を利用した正規と非正規の上下関係の固定化】
- 「構造改革」が低待遇の労働者を大量に生み出しながら、有権者の批判の高まりを封じ込めることができた背景=「ジェンダー秩序」があった
- 正規公務員=舵取りをする役割=男性
→「権力的業務(決裁的公務)」
→これを本来業務と勝手に位置付ける - ケア的公務は端のものとする
→住民はたまったものじゃない! - 非正規公務員=他者を支える役割=女性
→「周辺的業務(ケア的公務)」
→これを非本来業務と勝手に位置付ける - 2001年に取材した上越市長の言葉「企画や立案などの重要な仕事は正規、保育士補助や若者への就職相談などは女性や高齢者」
※『ワークシェアリングの実像~雇用の分断か、分配か』岩波書店、2002年- 竹信「人間には、半径5mの人間を重要と思う心理がある。企画や立案担当は市長のそばにいる。住民から見て近いのは相談業務」
- 市長にこう言ったら驚き、答えなかった
- 住民との距離より、市長との距離
【新自由主義と公務2分化】
- サッチャー政権下
- 英国の公務の市場化策=
「公共サービスの提供者から公共サービスの管理者へ」
「船の漕ぎ手から舵取りへ」
という公務員像の転換 - 漕ぎ手→非正規、命令→正規
- 正規職員は『管理者』と『舵取り』中心に限定
- それ以外は『非常勤職員』にしていこうという構想
- しかし…漕ぎ手だから舵がとれる、漕ぎ方を知らなければ舵をとれない
- だからイギリスは失敗した
- その失敗を、日本でやっている
- 「会計年度任用職員制度」はその後追いになりかねないという懸念
※黒田兼一「『働き方改革』と地方公務員」- 労働の内容を問わず、労働時間で待遇を二分
=オランダの「労働時間差別の禁止」に抵触の恐れ - 長時間労働が難しいことが多い女性にとって不利
- 労働の内容を問わず、労働時間で待遇を二分
- 人件費削減策
- 舵取り=お金がかかる
- 漕ぎ手=安くすればいい
【職員にも住民にも大きな弊害】
- オランダ
- 1996年、オランダはパートの労働時間差別を禁止
- 2000年「労働時間調整法」でフルタイムに切り替える権利も
- 会計年度任用職員のパート差別は、長時間労働では家庭との両立ができない女性労働者への間接差別
- オランダのような明確な規定があるなら、会計年度任用職員をやっても弊害は少なかった
- 日本の現状は、単なる身分制度
非正規公務員から、自尊感情の剥奪
- 「専門性」のダブルスタンダード
- 国が認めないもの=専門性のないものという仕分け
- →低待遇
- →人件費削減
- 実質的な仕事の重要性とのはざまで、プライドにねじれ
- 自尊感情から「待遇あげろ」と言いたいが、声をあげたらクビになる
- 合理的な理由が必要「たっとい仕事だから、お金にならなくても働く」
- 「人々に不可欠な公務だからこそ、お金に関わりなく働くのが正しい」という論理
- プライドが条件向上につながらない
「メンバーシップ型雇用」論の流用
- 異動・転勤のある「ジェネラリスト」以外は常勤と認めないという詐術
- 専門職(特に女性の多い職種)の熟練と長期雇用の必要性を覆い隠す
- 「正規公務員は転勤が必要」なんて、公務員法に書いてない
- ジェネラリストじゃないと正規じゃないなんておかしい
- 違うタイプの正職員にすればいいだけ!
- 専門職はもともと多くなかった
→いろいろやらなきゃいけない
→重要な仕事
→正職員にはまらない働き方
→非常勤にしちゃえ
→…と、押し付けたまま来ている - ずっと必要な仕事で重要
→無期雇用の公務員をつくればいい - それに見合った賃金体系にすべき
- 面倒、人件費あがる→やりたくない
→それは、“サボり”!
小泉改革=「前門の財務省、後門の総務省」(前川喜平氏の指摘)
- 前門の財務省「ばさっと削れ」
- 後門の総務省「どこから削ろうかな…」
- 憲法25条に関わるナショナルミニマム
→対象者が多い
→人間がいないとやっていけない分野 - 受益者も多く、人手を食う教育と福祉を削れば、一気に財政削減できる
- 1人の定数で複数雇えるようにする(例:教員も非常勤に)
- それができなければ、物件費、資材として雇う(例:派遣)
- 前川氏「僕たちは負けた」
- 私たち(国民)は納得した
(参考)デンマークの方が明言
- 「機械化は人の負担を減らすため」
- 「人を減らしたいためにするのは邪道」→日本はそれ
住民の間の「安くてもいい人たち」の差別意識を利用して、行政への非難を回避しつつ財政を絞る
- (例)保育士が土日のかわりに平日休み
→カーテンあいてる、ずる休み
→通報がいったケース… - その結果もたらされる住民(特に家庭での女性)への負担と、女性の貧困
- 家計の貧困と、ケア的公務の低待遇という形で、男性の貧困にも直結
- 身近な公務の質の悪化による納税意欲の低下
- 住民サービスがよくなるパイプが壊れてしまっている状態
- ドツボにはまっている
【発想の転換が必要!】
- 「恵まれた公務員はずるい」から
- 「住民サービスに公金を回さない政府の施策はおかしい」
への転換の必要 - 公務員を増やすのはずるい→自分の首をしめている
- 2040年には、公務員半減といっている
- 今が試金石
官と民の違い
- 会社は利益をあげるためにやる使命がある
- 利益をあげ、法人税を払い、人を雇う
- 公務
- 民間からこぼれ落ちるひと
- もうからなくても誰かがやらなきゃいけない
- 税金で支える
- ふたつあるから、世の中がまわる
- 民だけになったらどうなるの?
- 民間が下がったら賃金下げる→間違い
- 民間が下がったとき公務員が使う
- 補いあうことで、激変緩和措置になる
- 「民間が悪いのになぜ公務員が高いのか?」と言われるが…
- だから、乱高下する酷い社会になる
- セーフティネットがない
ご意見
- 竹中時代の構造改革、ここまでひどいことになるとは
- 人を大事にしないと。ひとをモノ扱いしている
- 原点は新自由主義の弊害
- 日本のこの構造を変えないとダメ
- 公務員は「やすまずおくれずはたらかず」と言われた時代があった
- そういう現状を変えるインパクトのある言葉が必要と痛感
- 低賃金化の結果、世界の中で日本の地位が低下してきている
- 低下を進めないようにすべき
- 他方、「恵まれた公務員」はずるいという感覚は、区民の中にまだ圧倒的に強い
- これも是正していくことが必要
- ひとつずつおかしいと思っていたことがつながって、日本の国の形自体が変えられたことを実感
- 非正規公務員の現場、崩壊しかかっている
- 大きな視野で考えないといけない
- 自覚を持って取り組まないと
- 議員に対して、部長がパワハラ発言
- 公務員は全体の奉仕者なのに、許せないと思った
質疑応答
Q:経験ある人材の雇止め、会計年度任用職員制度の導入に伴う1年任期・3年公募の合法化は、結果的にストライキや応募者がいなくなって人材不足に陥ったり、業務が回らなくなると思うのですが……国はそういったリスクは考慮していないのでしょうか?
竹信A:
- 考えているひとはいる
- 企業にやらせようと思っている=完全民営化できる
- 公務をやってるふりして、やっているのは全部民間、ということを考えているかもしれない
- 「悪くなると困る」というひとは、いいひとたち
- 「悪くなるほど民間に仕事がいって楽」とうれしいひともいる
- 困る人と困らないひとがいる
- 困る人が騒がないと可視化されない
- 可視化されなかったから、ここまできてしまった
- 住民運動→悪くなった理由のキャンペーンをしっかりやらないといけない
高口より
- 婦人相談員→長い人で18年、平均5年以上
- 練馬区が「民間の活力」と強調することの裏側に、公務の変化がある
- 練馬区でできることがある
【竹信A】
- 受益者が多い
- ステークホルダーを巻き込んでいく市民運動、労働運動ができると強い
- 組合だけで取り組むと、公務員だけずるい、と言われる
- 住民、関係している人たちを運動に入れていく
- 保育園→裁判で勝ったケースは、ほぼ親御さんが味方についている
→先生頑張れと保護者がいうと、かなり空気が変わる - 地域の経済がダメになる→消費という点でも
- 幅を広げる
- 住民の問題としての非正規公務員問題
- 単に非正規公務員がよくなればいい、ではない
- 自分たちの暮らしをよくするため、という観点で
- もう一つは、あちこちで議員教育もやっている
- 「小さい政府がいい」と議員が思い込んでいると、住民も引っ張られてダメになる
- 官製ワーキングプア研究会で、議員に来てもらい、説明会・勉強会をやった
- 考え方が変わる議員も出てくる
- 労組じゃなくてできること→NPOはそういう方策ができる
- いい行政サービスができる、人件費のバランスはそのあと、足りなければ国に出させる
- 国→投票行動
参考:youtubeデモクラシータイムズ「竹信三恵子の信じられないホントの話」
練馬区から、この問題、しっかり取り組んでいきます…!
竹信三恵子先生、参加した皆様、ありがとうございました!