練馬区補正予算:低所得子育て家庭への臨時給付金(10万円)
※2022年12月6日、練馬区議会・補正予算と、12月7日文教児童青少年委員会のレポートです。
低所得の子育て家庭への臨時給付金(区独自10万円)
★概要
- 目的「急激な円安を背景にした物価上昇」
「真に困窮する区民への更なる支援として」
「区独自の給付金」 - 子ども1人あたり10万円
- 子ども:18歳になる年の年度末まで
- 対象
- 2022年12月1日以降、練馬区に住民票がある
- こどもを養育中の方
- 以下の1か2に該当
- 令和4年度低所得の子育て世帯に対する生活支援特別給付金(国給付金)を受給
- 2022年5月~2023年3月に児童扶養手当を受給
- 基本はプッシュ型支給=申請不要
- 国給付金受給者:12月26日頃振込み予定
- 12月までに児童扶養手当受給:来年1月末
- それ以降に受給:2月末、3月末
★「真に困窮」とは…?
高口は、子育て家庭に給付金を出すこと自体は、いいことだと思っています。
(補正予算にも賛成しました)
でも……物価上昇の影響は、すべての区民に及びます。
「真に生活に困窮する区民」とは、限定できるものなのでしょうか?
物価高騰は、すべての子育て家庭、すべての区民を直撃しています。
この練馬区の言い方だと、
「給付金をもらえる人は困っている人」
「もらえない人は困っていない人」
というのと、同義です。
それ自体が、”お上”の発想だと、私は思います。
私は行政が決めつけることはできないし、
「真に困窮」しているかどうかを行政が
決めつけてしまうこわさすら、感じます。
せめて、「真に生活に困窮する区民」という発言に対する問題意識ぐらいは、
持っていて頂きたいなと思います……。
★バラマキの線引きとは?
さらに、練馬区は、答弁のなかで、
- 「バラマキであってはならない」
- 「真に必要」なところに「集中的に」
と強調しました。
しかし…この給付金がバラマキでなく、他自治体のものはバラマキだという根拠はなんでしょうか?
なぜ練馬区のやり方だけはバラマキではない、と言い切れるのか、
わざわざ「これはバラマキではない」と繰り返す意図は何なのか……
考えてしまいます。
★裏にある、国制度の問題
コロナ以来、子育て家庭への給付金が続いており、今回で8回目。
しかし……その対象が「児童扶養手当」というものがほとんどです。
すべての子育て世帯に、という枠組みにはなっていません。
その裏にあるのが、国の制度。
今回の給付金は、物価高騰に対する国の「地方創生臨時交付金」が財源になっています。
しかしこの給付金、
- 9月に国から示され、
- 「年度内に使い切れ」という制限つき
- 使えるメニューにもいろいろ制限があり
- しかも、10月末までに計画を立てなくてはいけない
……と、ギリギリすぎ!
そのため、区も、新たに事業を立ち上げる余裕がなく、
既存の子育て給付金のスキームを使った
……という経緯があります。
しかしこういうやり方が繰り返されれば、いつも同じスキームばかり、他の方には行き届かない、ということになってしまいます。
子育てをしていない方、子育て中でも受け取れない方との分断を生んでしまうのではないか、という懸念もあります。
ちなみに…
コロナ以降の特別交付金は、練馬区に対し
- 2020年度:31億円
- 2021年度:14億円
- 2022年度:26億円(見込み)
交付されています。
★区の持ち出しが4億円
今回の事業費は、約13億円。
- うち、国からの交付金:約9億円(7.8+1.2億円)
- 区の持ち出し(財政調整基金=区の貯金):約4億円
ということで、国からの交付金よりもオーバーしたので、練馬区の財源を約4億使っています。
それならば、たとえば
- 金額を下げて、区の持ち出しが出ないようにする
- 1人あたりの金額を下げて、その分対象を広げる
- 区の持ち出しをもっと増やし、その分対象を増やす
…などの選択肢も、ありえました。
★練馬区の対応が重要!
今回、他の自治体にも同様に、交付金が出ています。
金額や使い道は、それぞれ異なります。
国からお金が出ても、どう使うかは練馬区次第!
練馬区のやり方が重要!
ということがよくわかりますね。
★生活保護家庭は、さらに問題大…!!!
生活保護世帯については、特に大きな問題が!
(今回の対象は630世帯)
生活保護費はもともと、別途収入があると、その分保護費が減額される決まりがあります。
これまで、国からの給付金は、国が「収入認定しない」という通知を出していたので、保護費が減額されることはありませんでした。
しかし今回、練馬区独自の給付金は、国からの通知がなく、収入認定されてしまいます。
正確に言うと、「収入認定除外額8000円」を除いて、認定されます。
たとえば子どもが2人いて20万円もらえるはずが、12万円2000円は収入とみなされ、その分、保護費が減らされてしまうのです。
そもそも、生活保護費が切り下げられてきたなか、生活費が高騰しているのに、保護費は増えていません。
物価指数は昨年度より3.8%も上がっていると、練馬区自身が答えています。
それなのに、生活保護世帯はほぼ受け取れない……
しかも!さらに問題が!
保護費を減らす手続きをきちんとしなければ、「収入が生活保護の基準を超えているので、生活保護からはずれます」といった、不利益、弊害が起こる可能性もあります。
練馬区は、
- ケースワーカーが対応する
- 国に情報提供し、対応を求めている
と言いますが、収入認定の問題について「国に求める考えはない」
生活保護基準の見直しも「国に求める考えはない」と言っています。
なんとも冷たい……。
生活保護世帯は、苦しい中で
- 10万円を受け取らない(受取拒否の手続きをする)
- 10万円を受け取ったのち、92000円返還する手続きをする(ケースワーカーに相談)
- 10万円を受け取り、収入認定される(何もしなければこれになる)
のいずれかを迫られます。
※8000円だけ受け取ることはできない仕様
こういう制度設計なのに、「真に生活に困窮する区民」への給付金とは、いったい何なのでしょうか……甚だ疑問です……。
★課税対象かどうかも不明
生活保護以外の方も、この収入が課税対象となれば、翌年の税金等に影響が出る可能性があります(たとえば、収入が基準の限度額ギリギリ、といった方)。
練馬区は、税務署に確認をとっているものの
- 税務署から回答が得られていない
という状況。
制度設計に、大きな問題があるのです。
- 生活保護世帯で、今回の給付金の対象の方は、
担当のケースワーカーに、ご連絡ください! - 生活保護以外の方も、課税対象となった場合、翌年に影響が出るかどうか、ご注意ください!
- ご不安な点は、案内にある連絡先にご連絡ください!
★事業者支援もメニューにあったのに…
今回の国の交付金の「推奨事業」のメニューには、
事業者支援も、掲げられていました。
練馬区はこれまで、事業者には貸付ばかりで、給付事業をしていません。
今回も、
- 区「経済の大きな対応は国がすべき」
- 「国、都が給付事業は実施している」
として、事業者への給付の考えはない、という姿勢を変えませんでした。
事業者は、「真に困窮していない」というのでしょうか。
残念すぎます……。
★出産子育て応援交付金
12月2日、国が創設した新たな交付金制度。
詳細は国が検討中で、各自治体に実施要項など配布はまだこれから。
詳細が判明したら、練馬区は検討を着手し、「補正予算で対応を検討」とのことです。
↓補正予算、それ以外の内容です
抗原検査キット
- 2300万円
- 練馬区職員や区施設等での濃厚接触者などに活用
- これまで96000キット購入
- 11月1日時点で67000キット使用
- 残数29000キット
- 今回22000購入
- 第8波に備える
- 見込み→第7波のデータ等で換算
職域接種(コロナワクチン)
- 750万円
- 区職員等が接種する費用
- オミクロンワクチン
★今後の見通しは…
職域接種については「地域の負担を軽減」するのが目的。
以前と違い、地域のクリニックや集団接種会場で、予約がとれない状況はありません。
職域接種は区独自の財源を使っていることもあり、
いつまで続けるのか?と聞かれた練馬区は……
- 区「国がワクチン接種を推奨」
- 「職域接種しやすい体制」をとるのは「当然」
- 「職員の希望が多く必要」
- 「今後は未定」だが
- 「国の情報提供があれば積極的に」する
国が接種を推奨する姿勢と、職域接種を続ける姿勢が、重なっているように感じます。
ちなみに…
別の会派が、ワクチンの副反応の報告などを質疑しようとしましたが、発言通告がないとして、質疑できずに終わりました。
(補正予算は、どのページの何の費目について質疑するのか、期日までに通告を出すのがルール)
皆さん気になるところだったと思うので、残念でした……。
参考
- 高口ブログ:2022年10月補正予算
→低所得の方への区独自の給付金 - 練馬区HP
→そのうち補正予算の内容が掲載されると思います。