谷原保育園隣の新保育園、事業者と協定・契約を締結

※2022/12/7、練馬区議会・文教児童青少年委員会のレポートです。

谷原保育園隣の認可保育所→事業者との基本協定・土地無償貸付契約を締結

★これまでの経過

大問題となっている谷原保育園の閉園、廃園問題。

2022年10月13日の文教児童青少年委員会で、陳情が不採択に……。

参考高口ブログ:谷原保育園存続を求める11839名もの陳情、不採択に…

谷原保育園の代わりに、隣地に誘致する私立認可保育所の件は、どんどん進んでいます。

12月7日の文教児童青少年委員会で、事業者と基本協定・契約を締結した報告がありました。

高口は、

  • 新しい保育園ができること自体は反対ではない
  • 谷原保育園を残し、地域の保育環境を充実すべき

という立場で、質疑しました。

契約の概要

詳細委員会資料はこちら

★契約相手

  • 社会福祉法人多摩福祉会
  • 所在地:東京都世田谷区北沢二丁目36番9号

★2種類

  1. 保育の内容等について=「基本協定」
  2. 練馬区の土地を無償で貸付=「公有財産無償貸付契約」

という、2種類の締結です。

①基本協定の概要
  • 保育所開設日:2024年4月1日
  • 運営条件
    • 保育所開設時の定員は101名以上
    • 0歳~5歳児クラスを設置
    • 0歳、1歳、2歳児クラスは、年齢別保育
    • 基本開所時間:7時30分~18時30分、11時間
    • 障害児:定員3名以上、統合保育
    • 谷原保育園の園児を受け入れること、区と協議の上、保護者に説明を行うこと
    • 保育所建設に先立って、近隣住民を対象とした説明会を開催すること
    • 事業者公募時の提案内容を遵守
    • 常に保育サービス水準の向上に努め
    • 定期的に東京都福祉サービス第三者評価を受審すること
  • 保育事業
    • 区と協議の上、↓を実施
      1. 延長保育、短期特例保育、地域交流事業
      2. 谷原保育園の園児との定期的な異年齢交流(閉園までの間)
    • あらかじめ区の承認を受けなければならない(↓2点)
      1. 新たな保育事業を実施する時
      2. 上記保育事業を廃止、または変更する場合
    • 区は、新たな保育事業の実施を、事業者に提案できる
      • 事業者は、区の提案を受けた場合は、実施に向け、誠実に協議に応じる
        ※つまり絶対に実施する確約はない
②土地無償貸付契約の概要
  • 敷地面積:1,335.36㎡
    ※約400㎡、谷原保育園の1.3倍
    ※2階建て、園庭は広くとり、畑や築山をつくる提案アリ
  • 貸付期間
    • 令和4年12月1日から令和34年3月31日まで(30年間)
    • この契約を更新する必要があるとき
      →期間満了の3年前までに書面をもって区に協議し、承認を得なければならない。
    • 指定用途等
      1. 認可保育所の設置・運営
      2. 区民福祉の向上に資するため、区が事前に承認する事業の運営
    • 原状回復
      • 貸付期間が満了したとき、または契約を解除されたときは、
      • 区の指定する期日までに
      • 事業者の負担で原状に回復
      • ただし、区が、原状に回復する必要がないと認めれば、そのままでOK
    • 周辺環境への配慮
      • 事業者は、貸付期間中、周辺住民との協力関係を構築するとともに
      • 周辺の住環境との調和を図るよう努めなければならない

課題は…

高口が注目した課題がこちらです。

★”30年”という長さ

土地の無償貸付は、なんと30年間!

30年後の保育ニーズ、少子化など、まったく読めません。

となれば、経営事情による撤退も十分考えられますが、
そのような想定は、契約に入っていません。

  • 練馬区「30年保育所を運営頂く前提で、協定を締結」
  • 「撤退は考えていない」
  • 「契約上、やむを得ず撤退があれば」更地にして返還
  • 「区として保育が必要」なら、「現状を残す」のもアリ

※高口注:練馬区が勝手に「撤退は考えていない」と言っても、契約上、全く通用しません…
つまり、契約上、その程度の約束しかできない、ということです。

★4億3千万円で取得した土地を、無償で貸す

高口はもちろん、保育、子どもにかけるお金は惜しむべきでないと思っています。

その前提ですが……通常、事業者が保育園を建てる場合は、土地を借りたり、買ったり、当然事業者がお金をかけています。

今回は、練馬区の税金で、4億3千万円をかけた土地を、無償で30年間、貸す(※)。

他の私立保育園との公平性の問題があります。

「仮に貸し付けた時いくらになるか?」
を高口が聞いたところ、
そういう数字は「区として出していない」との答えでした。

※12/9、保育計画調整課長から訂正の報告がありました。
「4億7千万円」は区の答弁の誤り
→正しくは「4億3千万円」でした。

★事実上の民営化!

  1. 土地を30年も無償で貸す
  2. 谷原保育園の園児を受け入れる
  3. 異年齢交流を行う

……これだけ見ても、この新規保育園の誘致が、
事実上の、しかも乱暴なやり方での民営化
であることは、自明です。

今後、練馬区が、同様の形で、近くに土地を買って区立園をつぶしたり
土地を買うこともなく、区立園をつぶしてくのではないか……?

その危惧を練馬区にぶつけたところ、練馬区は

  • 区「一切そういう計画はない」
  • これまでに、区有地を保育園にしたスキームはある

と答弁。

この「スキーム」とは、別の区立施設や区立幼稚園を、私立保育園にした事例。
区立園をつぶして、隣に私立園を誘致、という事例はありません。

さらに高口が「では、今後は”しない”ということでよいか?」と重ねて聞くと

  • 練馬区「今のところ」計画はない

ということで、やはり”今後”どうなるかは、不安が強く残ります。

その他の課題

★障害児の受け入れ

現在、区立保育園では、障害児は「3名までの受け入れ」としています。

私立保育園に「3名以上の受け入れ」を求めるのであれば、

区立保育園も「3名以上」を受け入れていくべきです!

★セーフティネットの役割は?

  • 災害時の対応
    →区「当然果たすと“思う”
  • 医ケア児の受入れ
    →区「今後提案したい」
  • 協定には盛り込まれていない、ということです。

※高口注:「当然」と言うなら、協定に盛り込むべきだったのでは?

★保育ニーズは足りるのか?

  • 区「(この保育園で)谷原地域の保育需要すべてを満たすものではない

※高口注:だったら、谷原保育園も残したほうがいいですよね……


スケジュール等

  • 11月18日:一次申請〆切→集計中
  • 多摩福祉会が運営する向山保育園の見学会
    →11月下旬~12月中旬の6日に設定
    →この日程以外にも随時見学相談にのる
  • 2023年4月以降→整備に入る
  • 転園希望者の優先受入れ:2023年4月以降に行う

参考練馬区HP:谷原五丁目保育所用地における認可保育所の整備・運営事業者が決定