【練馬区】不登校実態調査の結果…

2022/11/22、練馬区議会・文教児童青少年委員会にて、
不登校、いじめ、暴力行為に関する報告がありました。

特に『不登校実態調査』は、結果を受け、
練馬区長が「不登校対策方針の見直しに直ちに着手」と所信表明で発言。

重要ポイントをお伝えしていきます。

【1】令和3年度 小中学校の暴力行為・いじめ・不登校の状況

こちらは毎年、文科省に基づき、
①暴力行為、②いじめ、③不登校
について、練馬区で実施される調査です。

★2021年度、大幅増加の理由

練馬区の説明によると、

  • 2020年度→コロナによる休校、活動制限
    →件数が大きく下回る
  • 2021年度→活動再開
    →2020年度と比べ、大幅増

2020年度はコロナの影響が大きいため、
コロナ前の2019年度も加味して、考察が必要…ということです。

詳細委員会資料はこちら(PDF)

★暴力行為

  • 生徒間暴力(小学校)
    • 2020:36件→2021:95件と増加幅が大きい
    • 国、都と同様の傾向
    • 割区「活動制限の緩和が影響」

★いじめ

  • 認知件数(小学校)
    • 2019:541件→2020:330件→2021:846件
    • 2019年度と比べ、大幅に増えている(305件増加)
    • 中学校は、2019年度より減少
      ※早期発見のため、認知件数があがること自体は問題ないとしている
  • 認知件数(学年別)
    • これまで、国、都と傾向が異なり、学年の差異がなかった
    • 2021年度→国、都と同様の傾向に
      低学年で認知件数が多い傾向
  • 現在の状況
    • 80-90%が解消
      →近年と同様の傾向
  • 発見のきっかけ
    • 小中とも「学級担任が発見」が最多
  • 種類
    • 「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、いやなことを言われる」が最多
  • 相談
    • 「学級担任に相談」が最多

★不登校

  • 小中とも、昨年度より増加
    不登校は、暴力・いじめと異なり、R2も減らず、右肩上がり
  • 学年があがるごとに増加傾向
  • 不登校の要因「無気力・不安」が最多(小中とも)
    ※本当か?は、下記で解説

★コロナによる長期欠席者

  • 2020年度より増加


【2】令和3年度 適応指導教室等の利用状況、教育相談室の相談件数

詳細委員会資料はこちら(PDF)

不登校に関する各種対策(適応指導教室(フリーマインド、トライ)、つむぎ、ぱれっと、スクールソーシャルワーク事業、教育相談室)の状況についての報告です。

練馬区の説明によれば…

  • 適応指導教室→利用は横ばい、コロナのため
  • 相談微増

とのこと。

不登校の増加に比べ、対策のほうが追い付いていない状況がうかがえます。


↑ここまでは、毎年報告されている調査。
↓ここからが、今回初となる、練馬区の不登校調査です。


【3】練馬区不登校に関する実態調査の実施結果

詳細委員会資料はこちら(練馬区HP)

※調査概要

 

調査の特徴①卒業生に調査

★経験者と保護者、フリースクールにも

2021-2022年度の2か年にわたり、調査を実施。

区立小中学校・教員へのアンケートのほか、

  • 練馬区の生徒が通っていたフリースクール→アンケート
  • 不登校を経験した卒業生(経験者と保護者)
    →当時してほしかったこと、してほしくなかったこと等について…
    →アンケート&インタビュー

にも調査したのが特徴です。

★卒業生の回収率は4分の1

卒業生へのアンケートは、回収率24.3%。
(保護者の回収率は26.6%)

区は「触れられたくない難しいアンケート」とし、協力してくださったご家庭に感謝を述べつつ、「有効な(回収率が)得られた」と答弁しました。

★卒業生の回答

不登校時と比べ、現在の生活変化が「よくなった」という回答が79%。

この点について、教育長も、

  • 「古傷」「マイナスの過去」から、
  • 高校に進学し「心機一転」「人生をリセット」する子もおり
  • 「いい面も悪い面もとらえていきたい」

と発言しました。

高口も、「よくなった」と答えた経験者がいることは安堵します。

……が、そもそも4分の3が調査に答えなかったことや、
わずか15歳の子どもが、人生をリセットしたくなる小中学校をつくってきた責任を、重く受け止めるべきだと、思います。

不登校が「古傷」「マイナスの過去」なのか?というのも、
当事者以外が安易に言えることではないのかな、と思います……。

★卒業後の支援

区議会では、区の調査を称える声が多くあり、
練馬区も
「珍しい調査」
「広くPR、プレスリリースで公表したい」
と前向きな答弁をしました
実際にプレスリリースされました)。

高口も貴重な調査だと思いますし
回答くださった方にもありがたく思っています。

……が、同時に、それは取りも直さず、
「練馬区が当時、彼らにできなかったこと」
そのものでもあります。

ですので、「高校に入って、人生がリセットできて、よかったね」というふうに、練馬区のほうが言っていいとは、思えないのです……。

その点、練馬区も

  • 「2割は変わらないか、悪くなった」→「重く受け止める」
  • 継続的な「相談支援の必要性」という回答
  • 高校生年代への支援は「手厚くない」→「検討」

とのこと。今後の検討を注視します。

調査の特徴②フリースクール

フリースクールの調査では、独自性に力を入れていることが明らかになりました。

他にも……

★アンケート結果

  • 練馬区の子どもが通っていると把握できているのが14団体
    • そのうち、練馬区内の団体が3(3団体とも回答)
  • 受入れ人数:計37人
    • 小学校:326人→うち練馬区20人
    • 中学校:395人→うち練馬区17人
  • 月謝5万円をこえる団体が最多(4)
  • 利用頻度:平均週3日

★補助を求める声

高口からは、フリースクールの費用の負担が重く、補助を求める声があることを、質疑。

  • 全国の自治体で、直接の補助は1自治体(区が知る限り)
  • 東京都からは、調査費用ということでのお金が出る
    →条件が限られている
    →校長先生の許可が必要→断られたケースを聞いている
  • 杉並区では、交通費という形で支給
  • 練馬区でも検討を

これに対し、練馬区は…

  • 都の調査「調査協力」が主目的
  • 都の考え方が示されたら対応

と答弁しました。

★フリースクールとの連携

…が重要ですが…

  • お金がかかるところ→「区から特定の紹介は現在行っていない」
  • 情報提供については「今後、検討」
  • 2019年度から連絡協議会
    →コロナで開催できず
    →2022年5月に実施→継続実施する
  • フリースクールからは、情報共有を求める声が高い
    →区「学校現場との共有方法→団体との協議」

多様な場の確保

不登校対策で重要な視点「多様な居場所」。

これについて、高口からは以下の問題を提起しました。

★フリーマインド、トライの問題

「フリーマインドには通えていたのに、もう来ないように言われた」
という声を、高口はこれまで複数頂いています。

適応指導教室の位置づけ→断ってもいい制度なのか?
学校で、「登校するな」なんて言えませんよね?

施設が断っていい制度なら、教育機会確保法、学びの保障として不十分であり、制度を見直すべきでは、と問いました。

これに対して、練馬区は…

  • 区「そういった話はない」
  • 「保護者の捉え方はある」

と否定しました。

が、ではなぜ、高口のところにそういう話が来るのでしょうか?

保護者の捉え方の問題にするところも疑問大ですが、万歩譲ってそうだったとしても、そのように捉えられる言い方をすることが問題では……?

把握していない時点で問題と思いますし、それを「そういう話はない」と答えるのもいかがでしょうか。

区や施設に言いたくない=不信感がすでに、保護者にあるからではないでしょうか?

★別室登校の1時間制限

「別室なら登校できるのに1時間しかいられない」
という声も頂いています。

人が足らず、別室にずっと人をつけることが難しい、というのが主な原因でした。

調査でも、「教室以外で勉強できる場所がほしかった」「学校の相談室等で受けられていたら」の声があると判明しています。

別室で登校できる生徒がいるなら、その子がいられるように、人員体制を含めたサポートをすべきではないでしょうか。

多様な居場所の拡充を求めました。

  • 練馬区「現状、小学校で9割58校、中学校で8割5分が別室登校を設置」(2021年度)
  • 「別室登校は一つのキーと認識」

と言いながら、

  • 区「学校の利用のさせ方は一人ひとりの状況による」
  • 「一律で区で(1時間と)定めていない」
  • 「学校、保護者と話して、適したやり方」をしている

との答弁。

しかし実際に、本人や保護者はもっと登校したいし、学校は人手がないからできないと言っており、「適したやり方」になっていないのです。

「ひとつのキー」というなら、人員体制を含めて、しっかりサポートすべきです!

★メタバースのような新しい学習空間も!

「メタバースなら通える」という声も頂き、委員会で提案しました。

今の練馬区のICT環境では、まだ難しいかもしれませんが……

子どもが「これなら学べる!」という思いに寄り添い
そういうかたちを取り入れてほしい!!

と訴えました。

学校と当事者の”ズレ”

★要因のズレ

卒業生のアンケートでは、不登校の要因は「学校生活」という回答が、9割。

一方、学校側は、文科省(【1】)調査で、「無気力・不安」という回答が最多(52%)。

本人・保護者と学校との乖離が、まさに問題。

何より、本人が言うことこそが重要
本人が言うのですから。
そこから出発し、そこに寄り添わずに「無気力が原因」といっても、何も解決しません。

無気力や不安は結果であり、原因ではありません。

「無気力や不安」が要因だと捉えることにより、そこまでに至る背景を見過ごしてしまうのではないか……

と、高口は懸念します。

「当然、練馬区は子どもの側に寄り添いますね?」と質疑したところ……

練馬区

  • 経験者の貴重な声、結果→重く受け止める
  • 2つの調査は方法がことなる→一概に比較できない
  • 要因→「どちらが正しい」ではない

……と答えました。

そこははっきりと、子どもの側に寄り添う、と答えてほしかったですが……

他にも、「不登校のきっかけ」という設問で、「身体の不調」という回答が多いのですが、そこには「学校に行こうとするとおなかがいたくなる」という例も含まれています。

そこには、身体でありながら、心理的要因が考えられます。

子どもの側に立った対応が、何より求められます!!!

★家庭訪問のズレ

家庭訪問についても、大きな乖離が……

  • 保護者の5割「行われなくてよかった」
  • 学校の8-9割「必要」

これについて練馬区は、

  • 実施した家庭は8割が「よかった」と回答
  • 長期化した子どもへの調査
    →早期の家庭訪問には効果がある
  • 長期化した場合はクールダウンが必要
  • 適切な時期の支援…誰が訪問するかや、実施のタイミングが大事→調整

と答弁。

しかし、訪問しなかった家庭からは実施してよかったか聞けないこと、家庭訪問を受けた家庭はもともと訪問への拒否感がないことなども、踏まえる必要があると思います。

その他

ヤングケアラー

  • 「家族の世話が忙しかった」を要因にあげている
    • 本人1.1%
    • 保護者0% →本人とのズレ…
  • 練馬区「DVDなど→SOS出せる教育→必ず取り組む

★先生の多忙化

  • 不登校に関わる研修を実施していない理由
  • 中学校:「時間の確保が困難」83%

→多忙化は、不登校対策にも影響を与えていることがわかります……。

★オンライン授業(授業のライブ配信)

小学校の54%が「必要」と回答

教育委員会としてきちんと推進すべき!と高口が求めたところ……

練馬区は

  • 「ICT活用」は「不登校対策として大事」と言いながら
  • 「個別ドリル、課題配布、個人面談、連絡」など…
  • あえてオンライン授業ではないところでの「オンラインの支援」と答弁

いやいや……それも必要ですが、「オンライン授業(授業のライブ配信)が必要」と答えたのは、他でもない先生方、学校側ですから!!!

↓自分たちの調査の結果に、正面から向き合って頂きたいですね……。