練馬区のスクールロイヤー制度…1年たち、実績は?

※2022/7/26、練馬区議会、文教児童青少年委員会のレポートです。

スクールロイヤー制度の実施状況

練馬区は、2021年(令和3年)6月より、

「スクールロイヤーを活用した学校法律相談事業」

を開始しています。

練馬、光が丘、石神井、大泉の4地域×各1名=計4名を配置

事業開始から約1年たち、実施状況が報告されました。

↓委員会資料

相談件数:38案件(のべ62件)のうち、

  • 保護者について:21件
  • 児童・生徒について:20件
  • 学校、教職員について:8件
  • その他:4件

 

スクールロイヤー制度、課題は?

【課題1】効果の検証を

日本初の弁護士資格を持つ教員・神内聡(じんないあきら)氏によれば

「減少するのは軽微ないじめ相談。難しい案件は減少していません

「スクールロイヤーは救世主のように思われていますが、学術的にもほとんど考察されておらず、効果も検証されていません。もっとその専門性や独自性をどのように理解するか、地に足が着いた議論がなされるべき」

※2021/10/18東洋経済より

  • 練馬区は今回この結果を、どのように検証しているのか?
  • 今後、どのように検証をしていくのか?

を聞いたところ……

  • 練馬区「スクールロイヤーに相談したからといって、速罪に解決するわけではない」
  • 学校が今後の判断に迷い、立ち止まるときに、相談できる→成果
  • 今後、年3回、スクールロイヤーと教育委員会で振り返り、協議の場をもち、検証する

とのこと。

しっかり検証をすることが重要です。

【課題2】相談できるのは学校側だけ

スクールロイヤーは、学校に関して誰でも相談できる制度ではありません。

校長等管理職が相談する、というもの。
教員の労働相談等もできません。

月額5万円の定額で、何回でも相談できる……という点では、利用しやすいなと思います。

一方で……相談できるのは学校(管理職)のみ、という点が、一番気にかかるところです。

保護者からは、「私も相談したい」という声も頂きますが、

  • 練馬区「保護者の要望は、私どもを通じてスクールロイヤーに伝えることはできる」
  • 「直接保護者から、という仕組みは設けていない」

という答弁でしたが……

【課題3】保護者とのトラブルは利益相反のリスク

学校と保護者間のトラブル、ということも、少なくありません。

先ほどの陣内氏は

「そもそも、スクールロイヤーには利益相反というリスクがあります」

「弁護士の「利益相反禁止」や「守秘義務」のルールに抵触するケースがある」

と説明しています。

つまり、利益相反の原則から、保護者側にはつけないのです。

実際、文科省「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き」(2020年)では、「学校側の代理人」になる業務を想定しています。

保護者が、子どもたちの声を代弁している、ということもあります。

保護者側(子ども側)の弁護をどうするのか、という観点も必要ではないでしょうか?

それに対して練馬区の答弁は…

  • 直接保護者が相談できる仕組みではないが、「間接的に児童の利益につながると考えている」
  • 「学校は、保護者、児童の最大の利益を考えて対応」
  • 「学校側の弁護士」という考えではない

とのこと。

しかし実際に、保護者とのトラブルが、一番多い結果が出ています。

どんな位置づけにすべきか、を見直すべきです。

【課題4】第三者機関がベスト!

先ほどの神内氏は

「第三者機関の設立がよい」

と提唱しています。

「学校と保護者、両者の相談に中立的な立場で応じ、解決案を示すようなシステム」

「教員も労働問題を相談できる体制が理想」

「学校や教育委員会から独立した財源で運営すれば弁護士の利益相反も起きにくいので、自治体直下でつくるのが望ましい」

→練馬区も今後ここに向かっていくべきでは?
と質疑したところ……

  • 練馬区「学校と保護者が対立している考えは持っていない」
  • 保護者の要望にどのように応えていけばいいかを、弁護士に相談
  • だから、「第三者」のようなもの

…と答弁。

しかし、学校管理職しか相談できないスクールロイヤーが、第三者的な位置づけだというのは、苦しすぎます。

現状に即しているとはとても思えません。

こどもの声を代弁する子どもアドボカシーも含めて、スクールロイヤーのあり方も、見直していくべきではないでしょうか。