練馬区中学校によるSNSパスワード問題、続報です。
練馬区中学校が、生徒にSNSのパスワードを提出させた問題…。
twitterで問題になった直後、高口は教育委員会に問合せていたのですが、その後、教育委員会がプレスリリースを提出し、各種メディアでも報道される事態に発展しました。
その後の2021年12月6日、文教児童青少年委員会より、教育委員会による説明・答弁のまとめをお伝えします。
- パスワードを提出したのは、276名中36名だった
- 提出したリーフレットには名前も書かせたので、個人と紐づく状態だった
- 「パスワードは書かない」と伝えたクラスもあったり、自主的に提出しなかった家庭もあった
…という点が、新たに判明した内容です。
↓参考↓
【毎日新聞】「練馬区SNSルール」印刷物にパスワード記入欄 波紋広がる
https://mainichi.jp/articles/20211203/k00/00m/040/497000c
【経緯】
■2020年6月
- 全小中学校の児童分の「SNS練馬区ルール」リーフレット
- 紙ベースで練馬区教育委員会が配布
- 家庭でルールを作成いただくのが大きな目的
- 家庭のルールの作成状況を把握するため、提出を求めるよう、練馬区教育委員会から学校へ通知をした
- 家庭での取り組み状況を確認することが目的で、各学校に提出をお願いした
- パスワードそのものを知る目的ではなく、作成がなかなか進まないことが背景
■2020年8月
- リーフレットにある、個人パスワードを記載する箇所について、「未記載」または「消した状態もしくはマスキングした状態」で提出するよう、注意喚起として各校に通知
- これ以降、改めての通知はしていない
■2021年度
- 新たに紙ベースで印刷・配布はしなかった
- 各学校が電子データを用いて印刷・利用する状況があった
*高口注:つまり、リーフレットのデータ自体は共有フォルダにそのまま残っていて、学校が印刷して使える状況にあったということです。
■2021年11月19日
- 区立中学校1校において、12月実施の三者面談を行うにあたり
- 生徒のSNS注意喚起を行うことを目的に、各家庭に「我が家のSNSルール」を提出するよう依頼
- 提出物は面談時に返却予定としていた
■11月30日
- 保護者からの連絡で
- パスワードを「未記載」または「削除、消去、もしくはマスキングした状態」で提出する旨の説明を失念したまま
- リーフレットを配布していたことが判明。
- 276名からリーフレットの提出を受け、そのうち、パスワードの記載があったのは36名(12月2日時点)。
- 全体の1~2割
*高口注:276名全員がパスワードを提出したように読める資料のため、委員会の最中、休憩が入り、資料が差し替えられる(異例のこと)
■12月3日
- 学校が各家庭にあてて謝罪文を送付。
【教育委員会の対応】
■11月30日
- 学校からの報告により、当該事案の発生を確認
■12月1日
- 全校にあてて注意喚起を促す通知を送付
■12月2日
- 他の学校では同様の事態は発生していないことを確認
【今後の対応】
- 区教育委員会では、同様の事態の発生防止に向け、改めて各学校に通知を行った
- また、発行する同リーフレットについては、パスワード記載箇所を削除
- 当該校ではそれぞれのリーフレットは学校内の鍵のかかる場所で保管するとともに、三者面談で順次返却を行っている
- パスワードの漏洩は発生していない状況
練馬区教育委員会「生徒保護者にご心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げるとともに、区教育委員会として再発防止に努める」
*高口注:ここでお詫びすべきは「ご心配、ご迷惑」をかけたことなのでしょうか?
質疑応答より
Q:保護者の要望から始まったリーフレット?
- 保護者が、こどもにスマホを買い与えるとき、心配されているのが、事件事故に巻き込まれないか。
- 子どもたちがコミュニケーションをはかるとき、トラブルがないか
- →防ぐために、パスワードを家庭内でも共有しルールづくりを確認することが必要と考える
- 最終的にパスワードをどう扱うかは家庭の判断
- 話し合いのきっかけづくりとして、このつくりに
Q:最初にリーフレットを作成した時点では、考えていなかったのでは?
- 家庭から集めることを前提に項目を決めたわけではない
- 家庭での取組を確実に推進するために、学校の提出が必要と考え、提出を実施した
Q:なぜパスワードを記入させようとしたのか?
- 今回のSNSルール
→様々な情報モラルに関する情報を盛り込んでいる - たとえば、1日の使用時間→こどもの健康、リズムなど
- パスワード→悪いサイトにアクセスしない、家庭で共有できる→家庭内のルールづくりの促進のために項目だて
- まずはこのことについて、家庭で話題にしていただきたいという思いを込めている
Q:他の方から問題という意見はなかったのか?
- 7月教育委員会の生活指導に関わる会議で、パスワードにかかる話題が出た
- このまま提出を求めるのは問題があると判断し、2020年8月の通知をした
- 会議体でも、実態調査の報告をした
Q:276中36名が提出。書かなかった方はまずいと思った?
- 学校からは「パスワードを記載しないで」という一文はなかった
→そのまま提出した方もいる - 各担任が子どもたちに配布する際「この部分は書かないように」と指導しているところもあった
- 学級によっては「パスワードは書かなくていい」と回収したところや、(それをせずに)回収したクラスもある
- ご家庭によっては、「書くべきではない」ということから、書かずに提出したところも多かったと認識
- 結果、36名以外は書いていない状況
Q:最初から鍵つきに保管したのか?いつの段階で鍵付きに保管したのか?
- 預かったリーフレット→厳重に、第三者にわたらないよう管理していたが
- 今回の事態が発覚したなかで、さらに、鍵のかかるところで保管したことを徹底した
Q:リーフレットに名前は書かせたのか?名前は紐づいた状態なのか?
- リーフレットそのものには書く欄はないが、
- 返却するため、名前を書いて出したところがほとんど
*高口注:つまり、パスワードと個人名が紐づく状態にあったということです。
Q:データが残っていたから学校が印刷した。まずいなと思ったとき(令和2年8月)にさしかえていれば今回のことはなかったのでは?
- 繰り返し失態、反省する
- 再度、今後の対応について対応させていただく
- 再発防止に努める
■教育振興部長「きめ細かくきちんとお知らせ→いろいろ対応する。やりすぎくらい~大事という事を今回学んだ。しっかりやらせていただく」
Q:今後の対策は?
- なんのパスワードなのか、アカウントと併記をしていない
- パスワードをもって、第三者からの不正アクセスが考えられる類のものではない
- パスワードを削除したものを改訂して、学校での活用をはかる
*高口注:アカウントがわからないから大丈夫…では済まない問題です。
たとえば、「あなたの銀行口座を知らないから、暗証番号を教えて」と言って暗証番号を聴いたら、大変な問題です。
Q:SNSによるいじめの件数は?
- 令和2年度実態調査:小学校5件、中学校20件
→パソコン、スマホでのトラブルによるいじめを把握 - 数自体は急激に増えているわけではない
- 令和2年度→いじめの認知件数大きく減り、相対的に大きくなった
以上、委員会のまとめです。
高口としては、この問題、様々な問題をはらんでいると考えています。
- リーフレットの作成+学校への提出を別々に行った
→2つが合わさると、SNSパスワードが学校に漏れてしまうことに、なぜ気づけなかったのか? - 昨年の段階でも、学校にパスワードを提出しないよう求めるまでに、2か月もブランクがあった
*2020年6月リーフレット作成→8月通知 - なぜ昨年の時点で、データを削除したり、パスワードを消したものに改訂しておかなかったのか?
*そもそもの教育委員会の認識の甘さがあるのではないか? - SNSのパスワードを提出させることを、学校はなぜ疑問に思えなかったのか?
*疑問に感じて提出させない対応をした教員もいらしたが、全体ではなかった - 教員が知り得た段階で「漏洩」ではないのか?
→練馬区個人情報保護条例等に照らして、「漏洩はない」と言えるのか?
(現在、問い合わせて、確認中) - SNSのパスワードを書かせることは、「家庭でのルール共有」にも役立つのか?
→保護者としては、知るべきはまず、パスワードではなく、どのメディアにどのアカウントを持っているかでは? - 学校は、生徒の人権、プライバシーにどこまで踏み込んでよいのか?
→SNSいじめや事故・事件は大きな問題ですが、それはそれで、別の問題として、しっかりと取り組むべきことではないでしょうか。 - 保護者であっても、子どものパスワードを把握してよいのか?
→「こどもの日記や、こどもに届いた手紙を、親であっても読んでいいのか?」と考えると……
→家庭でのSNSルールとはどうあるべきか…まだまだ社会のコンセンサスがとれた状況とは言えないと思います。
→大人の側の意識、感覚も問われる問題だと思います。
教育委員会や学校の人権意識、こどもへの権利意識が高ければ、今回の事態は防げたのではないかと思っています。
今後も、こどもの権利が学校でしっかりと守られるよう、動いていきたいと思います。