練馬の保育はどこへいく…?144Pの大作資料「保育の歴史とこれから」から抜けているもの/3/10文教児童青少年委員会
3/10文教児童青少年委員会からのレポートです。
★歴史から外国の保育制度までを網羅!
「長期的な視点から保育サービスを考えるために」
というサブタイトルがついた、144ページという大作の資料。
コンサルに依頼して作ったものですが、目次だけを見ても、かなりの分量だとわかります。
- 保育制度の歴史(保育所、幼稚園、学童クラブ)
- 待機児童対策のまとめ(国、東京都、23区)
- 練馬区の子どもの将来推計人口
- 練馬区の保育需要の将来推計(試算)
- 保育の質に係る検討・議論(OECD、ペリー就学前プロジェクトなど)
- 子どもの課題と子育てのあり方に係る検討・議論
(歴史、虐待、不登校、ひきこもり、いじめ、性被害、生活困窮など) - 参考:外国の保育制度と取組状況
(イギリス、フランス、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、オランダ、アメリカ)
……保育の歴史にまでさかのぼった、すごい大作です!
保育士の勉強をしていたときにも出てきた項目もあり、勉強になります。
★コラムに「子どもの権利条約」が掲載!
コラムレベルではありますが、「子どもの権利条約」が掲載されたのも、一歩前進です!
この流れで、「練馬区子どもの権利条例」制定といきたいところですが…!
★「保育の質」に言及!
OECDなどの基準をもとに、「保育の質」について触れたのも、大きなポイントです。
↓海外では研究がさかんな、「評価尺度」(評価スケール)についても、代表的なもののみではありますが、コラムとして取り上げています。
↓「保育の質」についても、厚労省の資料をもとにまとめています…が!!! ここで問題がひとつ……。
★「保育の質」から、保育士の労働環境がすっぽり抜け落ちている…
上の資料は、厚労省「保育所などにおける保育の質の確保・向上に関する検討会(第1回)」参考資料を「出典」としています。
↓こちらに、厚労省の同じ検討会での資料があがっていますが…
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000360397.pdf
↑こちらの厚労省資料には、「人的環境」「労働環境」が、しっかりと明記されています。
保育士の労働環境は、「保育の質」の一つとして、国際的に認められている基準です。そして、保育士の待遇の問題は、皆さんご存じのとおりです。
↓「人材」のページにも、保育士の労働環境については全く触れられていません。下の部分に、こんなに余白があるのに……
★「保育の質」に、「労働環境」を明記しよう!
区は「恣意的ではない」と言いましたが、保育士不足が社会問題となり、保育士の待遇・労働環境改善は急務とされているなかで、なぜ労働環境だけが書かれていないのか……?
恣意的でなくとも、この資料をこのまま発表することは、
「練馬区は保育の質として、『労働環境』を認めていないのか?」
と思われてしまいかねず、せっかくの大作が、大変残念なことになってしまいます。
また、学童の項目にも、学童指導員の労働環境や待遇については触れられていません(こちらも社会問題ですよね)。
ちなみに、世田谷区が制定した保育の質ガイドラインには、当然「労働環境」なども明記されています。
練馬区が進めようとしている民間委託・民営化は、保育士の待遇悪化、保育士不足の問題をはらんでおり、どうしてもその点を考えずにはいられませんが……。
3/10時点のものとのことなので、追加されることを期待したいところです。
★「保育の質」=「保護者サービス」ではない。
「保育の質」は、私たち保護者にとっても大きな問題です。
たとえば、冊子が参考にあげているフィンランドは、「10時間保育」。こどもの負担などを考え、延長保育という考えは基本的にありません。
親がきちんと帰宅し、こどもと家で過ごす時間を確保できるよう、社会的な理解が進んでいます。
保護者にとっての便利さやサービスよりも、こどものためとは何か。「保育の質」について、私たち自身も真剣に考えていく必要があります。
少なくとも、保育の「これから」は、ニーズやサービスよりも、子どもの権利を中心にすえた「保育の質」をもとに進んでいくべきと、高口は考えます。
冊子は3月末策定、HPなどで公開予定です。
公開されたら、ぜひ皆さんも、ご確認ください!