『練馬区特別支援教育実施方針(素案)』にパブコメを!【2024/12/9文教児童青少年委員会】
2024年12月9日、文教児童青少年委員会のレポートです。
練馬区特別支援教育実施方針(素案)
知的学級、特別支援教室の在籍児童の増加等の課題から、練馬区が新たに「特別支援教育実施方針」を策定することになりました。
現在、素案のパブリックコメントが行われています。
練馬区HP:特別支援教育実施方針(素案)へ意見を募集します
ぜひとも、パブコメを送っていただきたいと思います。
概要
PDF版はコチラ「特別支援教育実施方針(素案)概要版」
注目ポイント
■知的学級の増設
- 小中ともに1校ずつ
- 小学校 2027年(令和9年)度
- 中学校 2028年(令和10年)度をめざす
■自閉症・情緒障害学級の固定級設置の検討
- いわゆる発達障害向けの固定学級の新設
- まだ検討ですが、前向きに検討するという内容
■学校生活支援員の人材確保と連携強化
- 短時間勤務の採用
- 校内連携体制の強化…など
■教育福祉に関する担当部署を教育委員会内に新設(検討)
- 福祉分野との連携を強化
■就学前からの教育相談に、区立幼稚園の空き教室を活用
こちらは、存続が危ぶまれている区立幼稚園の今後のあり方にも関わってくる話ではないかと思います。
課題
①”人とカネ”を増やせるか?
今回の方針発表にあたり、保護者や支援者など様々な方にヒアリングしました。
そこでわかったのは、結局は「人とカネを増やす」ことに尽きる、ということ。
それは、これまで、散々求め続けてきたことでもあります。
それができるかどうかが、鍵を握ります。
「どれだけいいことが書いてあっても、実態が伴わない」と言う、保護者の指摘もあります。
方針には「教員の質向上」「研修」なども書いてありますが、「やらされる研修」では、効果が薄くなってしまいます。大切なのは「自ら学ぼう」と先生が思うかどうかですが、そのためには、先生に余裕が必要です。
教員を増やし、教員に余裕ができれば、研修へのモチベーションにつながります。
②専門性の高い教員を確保できるのか
今回、いわゆる発達障害の固定級増設の検討を、方針に掲げています。
そこでもやはり、「ひと」が重要です。
専門性の高い教員がいるかどうか。
特性のある子たちの特性が引き合って、トラブルになることもあるそうです。
トラブル自体が悪いわけではありませんが、その対応には、専門性が必要です。
専門性の高い教員を確実に確保できるのか?
を問いましたが、
練馬区は「教員の配置は重要」としながら、
「学校全体で支援体制が取れるか」
「学校全体の対応が必要」
と、学校全体での対応だとし、専門性の高い教員を確保する/できるとは言わず。不安の残る答弁でした。
③送迎の問題
固定学級では、送迎の問題が生じます。
学童や放課後デイサービスでも同様ですが、保護者は常に、送迎の問題に悩まされます。
現在の障害児の制度は、親が(主に母親が)、仕事をしていない前提で作られていて、送迎については考慮されていない、親が送る前提の制度設計になっている……と感じています。
障害児支援も、両親が共働きという社会の変化を踏まえて制度設計する必要があると思います。
④フルインクルーシブの選択肢を
情緒学級の固定級の新設について、保護者から要望があることは、私も重々理解しています。今回は、その声に応え、選択肢の一つとして設置する、という方向性です。
一方で、インクルーシブ教育を求める声も確実にあります。要望に応えるというのであれば、フルインクルーシブの”選択肢”もないと、不公平ではないでしょうか?
実施方針の中にも、国や東京都が「インクルーシブ」を柱の1つに掲げていることが明記されていますが、練馬区の実施方針の中では、その点が曖昧です。
重度障害の当事者も、「まず分けない前提の大切さ」を訴えておられます。
インクルーシブ教育の大切さ、そのあり方についても、改めて、問うて行く必要があるのではないでしょうか。
⑤学校生活支援員の現場でのあり方の見直し
学校生活支援員の増員と、そのための待遇改善も、求め続けてきました。
短時間勤務ならできるという方もいらっしゃいますが、一方で、社会的な人手不足のなか、常勤採用も含め、安定した待遇改善をはかっていくことが必要です。
練馬区は、支援員は現状足りていると言いますが、学校全体で1人、固定学級でも1クラス1人程度で、とても足りているとは思えません。
また、現場において、「支援員のできることが限られている」という相談も複数受けています。
福祉のベテランの方でも「もっとやれることがある」と思っても、やらせてもらえない。できる業務に限界がある状況とのこと。
現場での支援員のあり方、業務の権限の見直しが、教育・福祉の連携の観点からも重要です。
教育委員会内に教育福祉連携の部署を作るという方針はよいことですが、各現場レベルでしっかりと連携できるよう、見直しが必要です。
練馬区は、学校と支援員は「対等と認識」と答弁しました。その答弁と実態が一致するよう、見直して頂きたいと思います。
⑥就学相談は、専門の医師の配置を
今回、就学相談や、就学前の教育相談についても、充実させるという方向が示されています。
一方で、保護者の方からは、就学相談でとても傷ついたという声を、直接いただきました。
中学校就学相談で、コロナ禍で中止されていた。医師の面談が、今年度再開に。医師との三者面談で、医師の発言に、とても傷ついたそうです。
お子さんに対して
「次の筆記検査できちんとできないと、あなたのランクがぐっと下がるからね」
……「ランクが下がる」とは、なんでしょうか?
あまりにデリカシーのない発言です……
医師は4人いるうちの一人にあたるのですが、この医師は、発達の専門家ではないそうです。
子どもも、保護者も、不安や悩みを抱えながら、就学相談を受けており、発言には気をつけること、また、最低限、発達の専門家とするように求めました。
練馬区は
「医学的、発達の見地から総合的な判断が必要」
「トータルで医師にお願いしている」
と答弁し、
意見については、「来年度、再度協議する」との事でした。
発達の専門でなく、傷つく発言までされるのであれば、何のための医師との面談かわかりません。
相談の充実というのであれば、こういったことこそ、見直していただきたいと思います。
⑦飛騨モデルの導入を
作業療法士、OTが学校に入り、具体的な環境調整を一人ひとりに合わせて行う、岐阜県飛騨市の取り組みが注目されています。
ぜひこういう取り組みを進めてほしいと求めました。
練馬区は
「全校ではないが、専門家の派遣指導を行っている」
「OT、言語聴覚士、臨床心理士の研修、指導を反映」
と、答弁しましたが、
全校で行うことや、研修だけでなく、実際専門家が現場に入って環境調整することが大切です。
⑧「多様なものの見方、考え方に触れる機会」とは?
練馬区は、統廃合の計画『区立学校適正配置第2次実施計画』で、過小規模校の問題として「多様なものの見方、考え方に触れる機会が少ない」ことを挙げ、統廃合の理由にしています。
私は、少人数小規模の良さがあると思っていますが、練馬区は、小規模校には、問題があると考えているわけです。
固定学級は、基本的にクラス替えもないと思いますし、全学年が一緒という場合もあります。その中で、どのように「多様なものの見方に触れる機会を作るのか」は、大切な観点です。
障害のある子どもは、普通学級の子どもと同じには考えない、障害児にだけは小規模な環境が必要で、「多様なものの見方、考え方に触れる機会が少な」くてもよしとするのであれば、それはまさに差別であるように、私には思えます。
⑨1クラス1担任制の見直し
私は、特性に合わせて作られる「個別支援計画」は、どの子どもにも必要だと思っています(現状では先生に余裕がなく、できないことだと思いますが)。
障害のある子どもを”特別”にすると、「あの子だけ、ずるい」ということが起きてしまう。
だから、”どの子も特別扱い”することが大切です。
そうすれば、「あの子だけずるい」は起きません。
子どもたちの特性は様々です。
先生の個性も様々です。
先生の得意・苦手で差が出てこないように、それぞれの得意でサポートし合えるように、1クラス1担任制を見直し、学校全体・教員全体で生徒を見ていく方向性が必要ではないか、と考えます。
⑩アンケート結果から
「将来どのような人になりたいですか?」という子どもへの質問に対し、
「自分らしさを持っている人」がダントツで1位。
「大人に言いたいこと」の自由記述欄では、
「家族や教員とちゃんとコミュニケーションを取りたい(怒鳴らないでほしいなど)」
「もっと遊びたい」の2項目が上位に。
「学校で特にしたいこと」は
「もっと友達と遊びたい」が1位。
怒鳴られたりせず、安心できる環境の中で、友達と関わっていきたい。
自分らしくありたい。
そんな子どもの願いに応えられる「特別支援教育」のあり方とは何なのか?
真剣に向き合い、考えていくべきだと思います。
日本の特別支援教育は、国連から勧告が出されている状況でもあります。
皆様のご意見、パブコメを、ぜひとも送ってください。
【参考】2018年「こどもの心を育むネットワーク練馬 特別支援子育て講座 『生まれてきてくれてありがとうと子どもに伝えたいあなたのために』」に参加して