練馬区立美術館『トーク・トーク40年のコレクションと展覧会』
練馬区立美術館『トーク・トーク40年のコレクションと展覧会』
3月30日、23日の回に足を運びました。
投稿が長すぎてインスタの文字数をこえたので汗
ブログに投稿します。
3月30日 3人の館長によるクロストーク
①最初の民間館長、若林覚さん
3人のなかで最長の7年間の館長期間。
3つの「つくる」をテーマに、
お話くださいました。
①ロゴマークをつくる
②あたる美術展をつくる
そして
③「幻想美術動物園
美術の森緑地」
をつくる。
20種類、32体の美術動物、
練馬大根のネリマーマ、など…
そして、これからの美術館については、
「近きもの説(よろこ)び
遠きもの来たる」
と論語から引用されました。
なにを「よろこび」とするか?
深い言葉ですね…。
②前館長 秋元雄史さん
5年間就任。
まずは今回のコレクション展についての感想で、
練馬のコレクションの代表は
「靉光(あいみつ)」
ではないか、という話に。
(最初にかけられた絵が靉光)
以下、ご発言の抜粋です。
●靉光の反骨精神、独立心
「練馬の学芸員のみなさんのマインドではないか?」
●建物より、
展覧会とそれに付随するプログラムが大事
そこにコレクションもくっついてくる
今、建物の話にぐーっと寄っているが
大事なのは建物、ハードではなくコレクション
美術館が何を考えているかを伝えるもの
(美術品単体も価値があるが)集合したときに見えてくるメッセージがある
美術館を支える皆さんの美術に対する考え方の反映でもある
●それを支える、代弁するのが展覧会
相当な手作りの作業
基本的な調査
長年構想をあたため
切り口を日々考える
靉光ひとつとっても、
どう今の時代にあわせ
どういう視点でお見せするか
研究視点と
イベントとしての成功
●学芸員が一番やりたいことがわからなくなることがある
いろんな条件がつく
「練馬らしくやれ」とか…
「一番やりたいことやってください」
と言っていた
「やったら学芸員として深められそうなことを」
と言い、いろんな提案を出してもらった
↓
その後、2018年からの館長時代の展覧会を振り返っていきます。
練馬区立美術館の特徴を、
「ヤンチャ」
とも、表現されていました。
司会をつとめる学芸員さんが
「4人で1年間に6本、すごい」
と、量の多さに思わずコメントしつつ、
「ダメを言われないのがよかった」
との発言も。
コロナ禍について秋元前館長は
賛否もある中で、少しでもアートを楽しめる場をと、開館した当時を振り返り。
受付のスタッフにとっては、
「自分がかかったら大変なことになる」
といった家族の事情など、
不特定多数の接触への抵抗もあり…
人を集めるのが本当に大変だった!
という裏話も。
ついには監視に立つ人もいなくなり、
館長や学芸員まで、交代で監視に立った時期もあったとのこと…!!
「『開けとけ』と言う方は楽、
やるほうは大変!」
と、笑いつつも仰っていました。
私は、コロナ禍で施設を開け続けた意義の一方で、職員さんたちだって、未知のウイルスがこわかっただろうし、そのケアはどうだったのだろう…
と、今も時折思い返すので、美術館でのお話が聞けて、大変参考になりました。
③現館長の伊東正伸さん。
就任2年のなかで、真っ先に挙げた展覧会が
『三島喜美代 未来への記憶』
展示室一面に敷き詰めた作品は、圧巻。
これをきっかけに、
三島家から作品を寄贈いただいたそうです。
館長曰く「戦後日本の現代美術の代表」であり、
「練馬区立美術館の核にし、
現代美術のパートを考えていけたら」
という構想も明かされました。
また、平田晃久展のほか、
秋元前館長が、
「美術館は外に出なければならない」と、アートマルシェを発案したことに触れながら、
今年開催するアートマルシェについても紹介。
「まちと一体化した美術館の具現として続けていきたい」とのことです。
④「これからの美術館」とは?
●伊東館長より
・社会教育施設として、学芸員の調査・研究に基づく資料の収集、保存、展示・普及(博物館法など)
→「基本的使命」のほか、様々あり…
・まちづくり、国際交流、観光、産業、福祉、社会包摂、社会的地域的課題と向き合う場所…
→ICOM京都大会で採択
・デジタル技術などを活用した新しい鑑賞、体験モデルの構築
・新しい期待がよせられるのは「ありがたいこと」「やりがい」
・ひろば、フォーラムとしての役割がより重視される
・対話と交流が始まる場
・みんなが体験を共有し、自由な対話を促し、ひととひとがつながる場が求められる
・新しい美術館→「真のゆたかさ」が実感できる美術館、世界につながる美術館になればと願っている
・その準備を進めていければ
●若林前前館長より
・美術館は多くの人に来ていただくのが原点
・さびしい展覧会、もってのほか
・いつも溢れかえる美術館
・練馬にあんな素晴らしい美術館があるのか
・首都圏、全国からも集まるように
・難しいことはさておき、「あたる美術館」!
・美術館も、あたれば予算がついてくる
・元気で、老若男女
・練馬区のひとたちがまず喜ぶ
・練馬区の人たちがあんなに喜んでいるなら
→遠くからも「行ってみよう」
・練馬区民の誇りに
●秋元前館長
・教育研究施設が出発
・文化財を残して行く役割がある
・多くのひとが集う場、住まうひとの交流の場も強く望まれる
・ふたつの両立が次の美術館の課題、運営の課題
・両立しづらい
・守ると、むやみに見せない姿勢になる
・多くの人に公開→真逆
・うまく両立しながら、
みなさんにとって、みなさんの子ども、孫にも
●伊東館長
・新しい美術館→半日くつろぎ、心の充足にあてられる場所に
⑤質疑応答
①若林さんを練馬区に呼んできたのは誰なのか?
A 若林さん
練馬区立美術館が副館長を募集している話があった
連絡してみたら、「区長がお会いしたい」と話があり
→会ったら「練馬区にお力添えを」(当時の志村前区長から)
副館長ではなく館長に
②平田晃久氏が(プロポーザルで)一等になる座組をどうつくったのか? 普通にやったら一等はとれない
A 秋元さん
方向は決まっていくと思った
にしざわりゅうえいさん
みやけ…さん
コンペの審査員
選んだのは僕と、基本構想を作ってるメンバー
Qほぼほぼ秋元さんと思っていい?
A秋元さん「そう思っていい」
Q審査員を選ぶところで勝負が決まる
③練馬区の優れた建築がある(意見)
野見山暁治さんのアトリエ
江古田の同潤会アパートなど
記憶の場に再生、考えてほしい
コンペ(プロポーザル)の質疑応答は、とても気になるお話でした…
ありがとうございました。
3月23日 現学芸員3人による座談会
3月23日、「展示空間としての練馬区立美術館」
がテーマの回に伺いました。
元学芸員と、
現学芸員3人による座談会。
元学芸員の喜夛孝臣さんは、
話題を博した
『あしたのジョー、の時代展』
を担当。
現在は、静岡県立美術館の学芸員をされています。
『あしたのジョー』といえば、
連載当時ニュースになった、力石徹の葬儀。
展覧会でその再現をした際も、ロビーいっぱいの人が集まりました。
力石徹の祭壇を再現した「位牌」も、現学芸員の方が持ってこられていました。
他にも、
絵の配置や展示造作に学芸員の個性が出ること、
専門運送業者のベテランスタッフのアドバイスを取り入れたり、
巡回展では他館を手伝いに行き、学んだことを練馬区立美術館で活用したエピソードなど…
学芸員のお仕事がわかるお話も、興味深く。
そして、練馬区立美術館について。
三つの部屋に分かれていることが特徴で、
「3回チャンスがある」
と、喜夛(きた)さん。
入り口にゲートを作ったり、
あえて中が見えないように隠したりしたそうです。
「移動壁で細かく部屋を仕切れるので、
思ったことができる」
も、練馬区立美術館のメリットとのこと。
また、メインロビーの高い天井を生かし、
展覧会のタイトルビジュアルの吊り下げも、
企画展にあわせて作られました。
最後に、会場からの質疑応答。
練馬区立美術館のファンという方から、
「変わってしまうのが残念。
すぐ、建物をたてかえる、という大きな話になるが、
みなさん(学芸員)の給料、企画展や作品購入へお金を…という問題意識がある。
建物に110億円…現場の方々から、お金をかける順番が違うと思ったりは?」
という鋭い質問が…!
これに対し、喜夛さんは、
「完全な私見」と前置きしたうえで、
「この建物をつかってきて、愛着もあり、いいところ。
バックヤードの課題などはある。
是正されるのは望ましい。
とはいえ、これまで工夫で乗り切ってきた。
作品、ひとにお金…本当に大事なこと。
ひとを育てていかないといけない」
と仰っていました。
学芸員から見た練馬区立美術館のよさがわかる
貴重なお話、ありがとうございました。