子どもへの薬の強要の問題…当事者のお話を伺いました。
いわゆる発達障害とされる子どもたちが、学校で、薬を強要されている……
発達支援アドバイザーの茂木厚子さんから問題を伺い、2022年2月の一般質問で、質疑をしました。
向精神薬は、とてもセンシティブでデリケートな問題だと、理解しています。
薬の副作用等リスクを理解し、自らの意志で、服用している大人の方々もいらっしゃいます。
そういった方々を、ただ批判、否定したいのではありません。
私がこの問題を質疑でとりあげようと思ったのは、当事者のAさんと出会い、直接お話を伺えたからでした。
Aさんは、子どもの頃から薬を強制され、副作用に苦しみ、19歳になった今、離脱症状に苦しみながらも、減薬に取り組んでいます。
学校現場では今も、こういった副作用等のリスクが知られず、薬を強要する問題が起きています。
Aさんにお会いし、これは伝えるべき問題だ、と実感しました。
ただ、議会では、限られた質疑時間のなか、伝えきれなかったことがたくさんありました。
Aさんの他のお話についても、皆様にぜひお届けしたいと思い、レポートします。
ぜひとも読んで頂けたら幸いです。
★茂木厚子さんプロフィール
発達支援「Kids Sense」 Early Intervention & Parenting Support 代表 (親支援)
- 早期発達支援士・保育士・自閉症スペクトラム支援士・発達支援相談員
予防医学 代替医療復興協会 学術委員
著書「そうだったのか!子どもの行動」 - https://instagram.com/kidssense.si/
- https://cocoonparentssquare.net/kids-sense/
お話を伺ったのは、19歳の当事者の女性。
19歳のAさんが向精神薬に出会ったのは、悩みを抱えていた中学生の頃。
薬をのむと副作用により身体も思考も不調になるため、ずっと「薬をのみたくない」と訴えてきました。
どこに相談しても「薬をのみなさい」としか言われず、どこも助けてくれなかった――。
現在は、茂木さんの支援を受けながら、回復に向け「減薬」に取り組んでいます。
高口が出会ったのは、減薬を始めてから1ヶ月の頃。とても体調が苦しい最中でした。
昼は比較的大丈夫ということで、お会いできました。
Aさんは、練馬区の方ではありません。ですが、
全国で、練馬でも、同じようなことが起こっているのではないか――
そう思うお話が、たくさんあります。
ぜひ皆さんにも、知って頂けたらと思います。
Aさんのお話
■スクールカウンセラーにすすめられて…
Q:薬を飲まされるようになったきっかけを教えてください。
<Aさん>
中学1年生の時、友達や親との問題が、いろいろ重なって。
スクールカウンセラーから
「あなたが悪いわけじゃない。病気だから。医者の力を借りて、よくなろう」
と言われたことが、薬と出会ったきっかけでした。
保健室の先生に紹介されたクリニックへ行き、そこで、発達障害と診断され、コンサータを出されました。
■不登校で、また薬が増やされる
Q:その後は?
<Aさん>
高校では、スクールカウンセラーの配慮のなさのせいで、人間関係が崩れました。
カウンセラーは「誰にも言わないよ」と言ったのに、相談内容を親と先生に言われてしまい。
友達とのトラブルの話も、カウンセラーがその友達に言ってしまい、友達から「お前が言ったんだろ」と責められました。
そういったことが重なって、学校に行けなくなり、不登校に……。
そこでまた、「病気だから」と向精神薬を出されました。
■薬は「一生必要」=治らない?
Q:どんな病院でしたか?
<Aさん>
そのクリニックは、小児科からも来ている子もいるし、大人になっても通っている。
いつまでも通えると言われました。
そして、コンサータは「一生必要だよ」と言われました。
■診断がコロコロ変わる
<Aさん>
診断名も、コロコロ変わりました。
うつ病→ADHD→統合失調症→パニック障害→社会不安障害、躁鬱……
今はADHDをベースとした不安障害、なんだそうです。
「障害者手帳を取りやすいように診断書を書いておくね」と言われました。
■「つらい」と言えない
<Aさん>
スクールカウンセラーに「死にたい、つらい」と相談すれば、
スクールカウンセラーが親に言ってしまい、薬を飲まされることになる。
医師に言うと「薬を増やしておくね」となるので、何も言えなくなるんです。
悩んでいる本人からの話ではなく、親の話だけ聞いて処方箋を出されたり……。
インフォームドコンセントなんてありません。
薬を飲まなければ、親に「味噌汁に入れて飲ませれば良い」と医師が親にアドバイスしていたり。
親のため、学校のために、長年にわたり、薬を飲まされていた……と思っています。
■強烈な作用と、副作用
Q:どんな副作用がありましたか?
<Aさん>
ADHDの薬は、すごいんです。
朝、パッと目が覚めて、頭がさえ、朝から晩まで覚醒状態が続き、集中して勉強ができてしまう。
そうすると、親と先生が喜ぶ。
すごい………。でも頭が痛くなり、眠れなくなる。
すると、睡眠導入剤が出されます。
薬が効いている間、まったく食べ物を飲み込めなくなるんです。
そのために、過食、拒食を繰り返すようになりました。
給食も食べられない。薬を飲み始めてから、一度も食べませんでした。
その結果、体に限界がきて突然倒れたこともありますが、医師は「疲れを感じにくい体なんだよ」と言いました。
<茂木さん>
多剤多量処方(ミックス処方)…何種類もの薬を混ぜて服薬することの安全性は、証明されていません。
中にはめちゃくちゃな処方もあります。
たとえるなら、下痢止めと下剤を同時に出すようなものです。
■副作用・離脱症状のつらさ
Q:今は、減薬に取り組んでいますね。
<Aさん>
副作用も離脱症状も本当につらくて……。
頭も身体の関節も、皮膚も指先の筋肉まで痛くて、眠れない。
夜中に起きて転げまわるくらい辛い。
夜中にめまいで立ち上がれなくなって、倒れこんじゃいます。
夜中は副交感神経が優位になるので、かゆみと痛みが強まります。
辛くて何もしていないのに死にたくなる。何か失敗したり箸を落としただけでも死にたくなる。涙さえ皮膚にひりひりしみる……。
そういう時は、茂木さんに、ぎゅっと抱きしめてもらうんです。
<茂木さん>
この支援は、1対1でないとできないことです。
施設などで複数集めての対応ではとても無理があります。
向精神薬の添付文書には「攻撃性や自殺願望」も副作用として記載されています。
少しでも離れたら、死んでしまいかねない状況でした。
離脱症状により衝動的に。
<Aさん>
副作用や離脱症状で死ぬ子も少なくないんです。
向精神薬を飲んで具合が悪くなっていた知り合いも、自殺しました。
オーバードーズではなくて、医者が出してる量を飲んでいたのに。
■片っ端から相談した
<Aさん>
すがりたかった。助けてくれるところなら、どこでも行きたかった。
茂木さんと出会う前、片っ端から、救いを求めて電話しました。
相談室へ行って、福祉へ行って、警察に行って、児相へ行って……。
『こどもの人権110番』に電話したこともあります。
「薬の二次障害がつらい」
と伝えたら、弁護士は
「あなたは病気で必要だから薬が出されている。親の言うことをきいて飲みなさい」
と言っただけでした。
■児童相談所の一時保護所では……
<Aさん>
児童相談所の一時保護所に入ったこともありますが、出るときに
「親の言うことを、医者の言うことをちゃんとききます」という書類を、薬の副作用がつらいなかで読み上げさせられ、サインと拇印を強要させられました。
<茂木さん>
子どもたちを守るべき場所での子どもの人権が、まったく守られていないんです。
児童擁護施設や一時保護所は、居心地の良い、あたたかい場所でないといけないのに。
辛い思いをしている子どもに必要なのは、共感とあたたかい場所。
そして、近所のおばさんのようなスタンスで寄り添い、関わってくれる人なんです。
■鑑別所では…
<Aさん>
いじめや暴力にあい、幻覚と幻聴に悩まされ、壁に向かって物を投げつけてしまったことがあって。
それだけで、鑑別所送りとなりました。
鑑別所では、さらに、薬を増やされました。
薬をちゃんと飲み込んでいるか、目の前で監視され口の中まで確認され、怖かったです。
薬の副作用のせいで辛いのに、訴えは無視され、無理やり飲まされるんです。
■人間扱いされない
<Aさん>
鑑別所では、犯罪者じゃないのに、素っ裸にされて、四つん這いにさせられ、お尻の穴、股の穴まで身体中チェックされる。それも医師ではない男性職員に。
トイレも入浴も、プライベートは無く、全て丸見えで、男性職員に終始見られている。
人権も配慮もなく、人間扱いされない。
私語は禁止、他の子どもたちとは話さない、顔も見ないルール。「フリスビーしろ」と言われ、でも「目を合わせるな」って……どうやるのでしょうか(苦笑)。
そこでのつらい生活の様子を手紙に書いて出しても、中の様子は全てマッキーで黒塗りし消される。
中のことや自分の辛い気持ちは一切伝えちゃいけないんです。
たとえ、1時間でもいいから安らぎをもらうことができたら、あともう少し頑張れるのに……それすら許されない。
男は坊主、女はおかっぱ。お風呂は週1。
調査官が常に監視していて、恐怖で何も言えない。
心身の不調を訴えても、何もしてもらえない。聞いてもらえない。
■誰でも具合が悪くなる
<Aさん>
鑑別所の前に、留置所には、3日間いました。
狭い所で、「1日15分だけ好きなことをしていい」と言われた。
狭い穴から、「空が見えるよ」と言われましたが、
日の光をあびることがないから、セロトニンが出ない、だから眠れない。寝不足だと精神にも影響が出る。
あんなところに閉じ込められたら、誰でも具合が悪くなります。
■児相には二度と行きたくない
それでも、どこより、児相がひどかった。二度と行きたくない場所。
「すでに傷ついて保護されている子どもたちへの対応が酷すぎる」と言う話は、児相の一時保護所や児童養護施設を経験している多くの子どもや若者が証言しています。
「正直、一時保護所よりも刑務所のほうがマシだった」という話も実際よく聞かれます。
茂木厚子さんのお話
■向精神薬の副作用の相談が増加
発達障がいや鬱と診断され、多剤多量処方による副作用で体調が悪化し、
今までできていたことができなくなる、
給食が食べられなくなる、
学校に行けなくなる、
起き上がれない
……などの二次的な不調に苦しむ子どもたちの相談が、現在、増えています。
特に、子どもへの安全性は確立されていない向精神薬もありますので、必ず製薬会社の「添付文書」に記載されている深刻な副作用について、読むことをおすすめしています。
■”普通”という苦しさ
<茂木さん>
児相も保護所も施設も、適切な支援や子どもの悩みに寄り添うことをすっ飛ばし、医療に丸投げし、薬を飲ませる。
大人がラクだからです。
近年、精神医療に繋がれる子どもの数が世界一となり、日本は「国連子どもの権利委員会」から幾度も勧告を受けています。医療の前にできる支援をせずに、薬で症状を抑えるやり方は子どもの人権侵害にあたると言う意味です。
あるケースでは、身長が低いことで、「発育不足」とされ、病院でホルモン剤を投与されていた男の子がいました。
副作用は人により異なりますが、中には男子でも胸が出たり、母乳が出たりする場合があり、それでいじめを受けたその男の子は学校に行けなくなり、後に自殺しました。
「普通」のために、どれほどの子どもが苦しむか……。
保健所や保育園では、発達チャートからはずれる子どもを、病院で診てもらうようすすめます。
発達チェックリストやチャートの「普通」を基準とするのではなく、目の前の子どもの発達段階を基準に見ることが大切なのです。
■練馬区でも……
「行動する」ことは、勇気が要ります。子どもたちは辛い思いをしていると外にも出られません。生命力やエネルギーが低下しますから。
でも、子どもたちを辛い状態にさせているのは、無理に普通にさせようとする学校と医療なのではないでしょうか。
練馬区の保護者からも、学校の対応について、いくつも相談を受けています。
学校から「授業中、足をバタバタさせて、困っている。ちゃんと薬を飲んでいるのか?」「友達とトラブルがあった。薬忘れてないか?」などと、逐一保護者に連絡があり確認作業をされるなど、教師が薬をすすめているケースも少なくありません。
じっとしていられない子の椅子を取り上げて、床に座らされているところも、見ました。
■幼稚園や保育園でも…
幼稚園でも、給食を完食できないと帰りのバスにのせてもらえず、お教室に残され、食べるまで帰れない罰を受けていた子どもがいました。
ある過敏な子は、朝が苦手で起きられず毎朝パジャマのまま園バスに乗せられ、不安で泣いているのに、無理やり先生に着替えさせられ、その苦痛とストレスから円形脱毛症になりました。
幼稚園や保育園の質が今問われています。
幼児教育先進国に比べ、日本はまだまだ、子どもへの人権意識が低いと感じています。
自分より弱い立場の子どもは、どうにでもできるからでしょうか。
■発達障害の薬について支援を行う場
発達障害は病気ではありません。諸外国では、発達支援セラピストによる介入が盛んで、医療ではない支援が主流です。
薬を極力使わず、発達を診るクリニック、また断薬のサポートを行っているクリニックはいくつかあります。
そのひとつ、「ナチュラルクリニック代々木」では、良質な食事療法と細胞膜栄養療法による治療を主に行っています。精神科医と管理栄養士によるカウンセリング、回復に向けた栄養療法と併用で断薬サポートも行っています。
心ある先生たちが、じっくり時間をかけてお話を聞いて、根本的治療に向けて寄り添います。人員も厚いので、運営側は利益にはなりませんが、人に優しい医療だと思います。
栄養、食事、整体、漢方、そして寄り添って話を聴くこと、共感、人のあたたかみ、安心感……。
日本オルタナティブ協議会主催の「サードオピニオン会」も向精神薬について学ぶ場として知られています。薬の副作用による二次障害で社会から遠ざかってしまった方々が自らの回復を目指し集まってきています。
「頑張ってきたね」「あなたの味方だよ!」とあたたかく迎える場所です。
■子どもに本当に必要なこと
何か問題があれば、すぐに病院で検査。
荒れた子どもの本心や辛さを聴き出し、寄り添う前に、淡々と「はい、お母さんに連絡するね」「書類かいてね」と、どこへ行っても機械的な対応に子どもたちは絶望しています。
これから生きていく社会に希望が見えないとしたら、彼らの自律は難しいでしょう。
何よりも必要なのは、人のやさしさ、あたたかさ、「共感」です。
別室登校の子が、学校にあたたかい相談員さんいて、話を聞いてくれて一緒に泣いてくれたりする。おかげでなんとか頑張ることができ卒業できた、という子がいました。
悩める子どもたちに本当に必要なのは薬ではなく、一緒にいてくれるサポーターなのです。
当事者同士の出会い、仲間をつくることも、大切ですね。
最後に、Aさんからメッセージ
自分が苦しい思いをしてきたからこそ、
私は薬を、どの子ども達にも飲んでほしくない
……そう思っています。
だから、薬には必ず副作用が伴うこと、断薬する際の離脱症状の苦しみを、たくさんの方に知っていただけたら、と思っています。
茂木先生、そして、勇気を出してお話しくださったAさんに、心から感謝をしています。
ありがとうございました。