9/2「在宅医療講座 最後まで、自分らしく!」レポート

9/2(日)、桜台地区区民館にて、「在宅医療講座 最後まで、自分らしく!」を開催しました。
雨にもかかわらず、40名近い参加者にお越しいただき、在宅医療への関心の高さを感じました。

講師にお呼びしたのは、祐ホームクリニック平和台・院長の林伸宇先生。林先生は、高口の夫の主治医で、区議になってから再会し、「ぜひ在宅医療講座を!」とお願いしたご縁があります。
https://www.you-homeclinic.or.jp/area/area_heiwadai.htm

終末期医療ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは?

まずは、林先生による講座。

最初に掲げたのは、「終末期医療ACP」……聞き慣れないことばですね。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20180307_31.pdf

これは、「将来の医療及びケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセス」という考え方。

簡単にいうと、「将来、どんな医療やケアを受けたいのか、患者本人や家族、医療チームなどが話し合いながら、決めていく」という考え方です。

ちなみに、「ACP」が覚えづらいので、愛称募集中とのこと。あなたの決めた名前が、全国に広がるかも…⁉(^-^

人が最期を迎える経緯は、様々です。「いざという時」が来てからではなく、前もって家族などと話し合っておくことが重要……と、林先生は強調します。

  1. 病気になる前に話し合っておく
  2. 病気になってからだと、対応が遅れる
  3. QOL(生活の質)が下がる
  4. うつや、死別後の後悔にもつながってしまう

との説明(もちろんこれが絶対ではありません)。

「先生、どうしたらいいですか?」と患者さんに聞かれることがよくありますが、林先生は「どうしたいですか?」と問いかけることにしているそうです。相談を受け、一緒に考える姿勢。「医者におまかせ」は、うまくいかないとのこと。

「寝たきりはイヤ」…思いすぎると、辛いことも

平均寿命と「健康寿命」との差は、男性で9年、女性で12年。さいごまでずっと元気でいられる人は、1割しかいない……という衝撃のデータ!

多くの人が、「寝たきりにはなりたくない」「認知症になりたくない」と思っているでしょう。「もちろん予防は大切ですが、『そうなりたくない』と思いすぎると、そうなった時つらくなる」と先生。

自分の将来の状況を、様々に想定しておくことが、精神的な意味でも大切なのだと感じました。

絶対の正しさはない

「50歳の妻、52歳の夫。妻が治るかわからない病気にかかった。治療も相当な苦しみを伴う。夫は『妻に告知したくない』と相談。あなたが医者だったら、どうしますか?」

……というケースを想定し、「自分だったらどうするか?」という問いが、会場に投げかけられました。

伝える? 伝えない? 決められない?

さらに、「患者から『決められない、どうしたらいいですか?』と聞かれた」との問いかけも。

病院で治療するか、自宅で穏やかに過ごすか……実際には決断できる人は少ないとのこと。

林先生は、小学校でこういった問いかけをする「いのちの授業」を、10年にわたって行ってきました。

「絶対の正しさはない。価値観を話し合うきっかけになれば」と先生。

「正解はないけれど、”答え”られなくても”応える”ことはできる。応えるは英語で『response』。そこから派生する『responsibility』=責任という意味です。『answer(答える)』ではなく『response(応える)』ことが、責任なのです」

参考)在宅医療ナビ
http://www.zaitakuiryo-navi.com/

家族だから受け止められないこともある……夫を看取った体験談

続いて高口が、夫の在宅医療の体験談をお話しました。

夫が余命宣告された後、セカンドオピニオンなどを受け、選択肢がないか、模索したこと。それは、夫本人のためだけでなく、残される家族が
「あの時ああしていれば助かったんじゃないか」
「ああしておけばよかった」
と後悔を少なくしておくため。家族のためでもある……というお話をしました。

余命宣告を受け入れた後は、
「お葬式はどうする?」
「お墓は?」
といったことを、なるべくオープンに話し合うよう心がけました。

とはいえ、それができたのも元気があるうちで、だんだん弱っていくにつれ、話せなくなっていきました。気力のあるうちに、話し合っておく大切さは、よくわかります。

そして今振り返って、いちばんつらかったのは、死期がせまり、痛みや苦痛から、
「死にたい」
と夫が言うようになったこと……。

私は、その言葉が本当に聞きたくなかった。
家族だからこそ、聞きたくなかった。
あんなにバリバリ働いて、強かった夫が心身ともに弱っていくのを見るのは、本当につらかった。

そしてあの時、それを第三者……訪問看護師さんなど別の誰かに話せていればよかったと思います。患者本人だけでなく、家族のサポートの大切さを、身にしみて感じました。

  • その体験をもとにした、患者や家族へのチームとしてのサポート体制づくり
  • 在宅医療・介護の充実
  • マギーズ東京」というがん専門の支援センターのような専門窓口の設置

……を、高口が求めていることも、お伝えしました。

参加者との対話……一人暮らしでも、在宅医療は受けられる?

さいごに、参加者の皆さんから質問をお受けしました。

Q 在宅医療の医師は選べるのか?

Q 認知症でも対応しているか?

Q 自己負担額は?

Q 「終活コーディネーター」のような資格についてどう思うか?

Q 一人ぐらしでも在宅医療は受けられるか?

といった、様々な質問をいただき、林先生とふたりで、お応えしました。

これから……

皆さんからいただいたご意見をもとに、在宅医療の必要性や、患者・家族の支援をしっかり訴えていきたいと、より感じました。

また、先生から紹介された「もしバナゲーム」(「もし●●だったら?」など様々な想定が書かれたカードをひき、話し合うゲーム)を、ようこそカフェ2(毎月第4月曜13-15時、次回9/24)でやろうかな?と考え中。

今後も様々な場で、医療や介護の問題について、皆さんと考え、区政に反映していきたいと思います。

ぜひまた、ご参加ください!