現場が振り回される美術館改築計画―今こそ“改修”への転換を【2025/10/6補正予算・高口質疑③】


2025年10月6日、補正予算での高口の質疑。
テーマごとに報告しています。

3つ目、ラストは、
やはり今回の補正予算、最大の注目である
練馬区立美術館改築問題です。


練馬区立美術館の再整備計画は、150億円以上とも言われる巨額事業。

しかし、事業者が見つからず改築は延期。
現場では、指定管理者も振り回される事態に…。

また、区の専門部署には
6名の貴重な人材がいます。

主な業務が延期となり、
今後は「機運醸成」や「検討」といった
喫緊ではない業務。

どこも人手不足。
このままでよいのでしょうか?

改築から改修へ踏み切らない限り、
“宙ぶらりん”の状態が続いてしまいます。

また、少なくとも、このまま機運情勢を続けるなら、
最低限、実施設計後の工事費を区民に示すべきと訴えましたが、
それさえ答弁はありませんでした。

以下、混迷の質疑をご覧ください。

練馬区立美術館、延期による影響

高口

150億円以上とも言われる工事費の是非について、
これまで様々な会派による、根拠ある議論が積み重ねられてきました。

工事事業者が見つからず、先行きの見えない今の状況で、
改修への方針転換こそが、これまで以上に現実的な路線となっています。

①振り回される現場

練馬区立美術館の改築延期によって、
現場は急な業務変更を余儀なくされたうえ、
今後のスケジュールも不透明で、
現場が振り回されている感を禁じ得ません。

貫井図書館では、1月から職員は4割減の予定でしたが、
年度末まで元の人員体制に変更。
減らす予定だった指定管理職員は
別の館に移る等の予定でしたが、それも変更になりました。

このように不安定な状況だと、
指定管理者としても人員配置等の見込みが立てづらいですし、
職員が不安定雇用の場合、いつどうなるのかわからないのは
より不安な状況だと思います。

サンライフ練馬のほうも
1月までの業務を、3月まで伸ばす変更で、
指定管理者には急遽対応いただいたそうです。

②職員の力を無駄にしないで…

一方、練馬区は2022年、
美術館再整備担当課を設置しました。

現在、4名の職員がいて、今年度1人増やしたばかり。
他に、美術館から1名、学芸員が派遣され、
課長を入れた6名体制です。

主な業務のうち、実施設計は1月9日まで、
コンストラクション・マネジメントは年内で終了。
残りは機運醸成が主業務と伺っていますが、

Q1

今回の補正予算では、減額補正となった、
つまり、予算執行する業務が減ったわけです。
どこも人材不足なので、
その分、貴重な人材は、他の部署にまわすべきではないでしょうか?
それが1点。

Q2

また、私たちは改築には反対ですが、
今後も区民に理解を求め、機運醸成を続けるというなら最低限、
実施設計後に出る概算工事費についても
はっきり明示すべきではないですか?

2点、見解を聞きます。

美術館再整備担当課長

美術館の再整備につきましては、方針に変更は無いことから、
今後も地域文化の核となる施設を目指し、市場調査や機運醸成に加えまして、
新施設の運営に係る検討、美術館、図書館の融合に向けた検討など、
多くの関係部署との連携調整をしながら、準備を進めているところでございます。

練馬と言えば、美術館のある街と言われるよう、引き続き再整備事業の推進に
所管課及び職員が、その使命を果たせるように
努めて行きたいと考えてございます。

次に、工事費について、でございます。

工事費の算出にあたりましては、資材価格、労務費の上昇、
需給バランスの変化などを、より考慮する必要がございます。

現在のように、先行きが不透明な状況下では、
より慎重に工事費を設定する必要があると、
認識しているところでございます。

現在実施しています、実施設計の、業務委託の特記事項には、
概算工事費の作成が含まれておりまして、実施設計完了時には、
工事費概算書を含めた成果品が納品されると認識しているところでございます。

高口

ご質問に答えていない……気がしますが、
追加で答えていただければと思いますが、

パネル展など、8月末にされていたものでも、
工事費には触れられていませんでした。

人手はどこも足りていません。

「職員の人件費」という質問が、決算の中でも、保育園の関係などで出てきましたが、

「検討」とかそういうことだったら、
少なくとも工事がいつかはっきりするまで、他部署で力を発揮いただく方が
ずっと合理的だと思います。

練馬区はいつも、会計年度任用職員の質疑をする際に、
地方自治法第2条「最少の経費で最大の効果」
と言っておりまして、この趣旨に見合っているのかな?と思います。

なぜ、会計年度任用職員では、「最少の経費」と言いながら、
美術館では当てはまらないのか、合理的な理由があれば
伺いたいなと思います。

結局、計画を中止としないことで、現場は振り回されて、
区の業務や貴重な人材も非効率ではないかと思います。

美術館は老朽化しているというのであれば、
改築から改修へ、早期の英断をと思いますが、
何か、ご意見があれば伺います。

美術館再整備担当課長

先ほども申し上げましたように、当然に美術館再整備は
続くものでございますので、必要な業務は引き続きございます。

工事着手に向けた調整や図書館との融合に向けた検討、運営費、条例規定
などがございます。

また先ほどですね、改修すべき現場が困っているということでございました。

私共はですね、指定管理者とはすでに必要な協議などを行いまして、
支障が生じる必要はないと、そういう状況ではないことを確認しております。

今後も情報提供、そうした丁寧な説明に努めていきたいと考えてございます。

区民の皆様と共につくりあげてきたこの再整備計画でございますので、
これまでも、縷々ご答弁申し上げておりますが、区民生活を
より豊かにする上では欠かせないものでございまして、引き続き、
事業推進に努めて行くものでございます。

高口

先ほど質問に、概算工事費を示すべきと、
どっちなのかと聞いたのですが、
それには答えがありませんでした。

工事費の問題を知らせないことには、
機運醸成、区民の理解は
全く得られないままだということは申し上げておきます。

以上です。


以上で質疑時間は終わり。

区が答弁した「検討、運営費、条例規定」
…これは、「今すぐ緊急の業務」ではありません。

たとえば、同じく美術館関連で、中村橋のまちづくりを進めている「美術館再整備まちづくり担当課」は、5名体制で、「兼務」。

一方、美術館は専門部署で6名体制です。

どこも人手不足のなか、本当に必要な業務に人手をまわすために、やはり美術館をいつまでも現改築計画で引っ張っていかず、改修に方針転換することが重要です。

引き続き、頑張ります。