【陳情質疑】練馬区こどもの権利条例の制定を求める陳情【2025/4/22文教児童青少年委員会】
2025年4月22日、文教児童青少年委員会のレポートです。
豊渓中学校の陳情が付託
この日はまず、豊渓中学校の学校統廃合について、地域の合意形成なしに進めないよう求める陳情書について、資料請求がありました。
※画像がUPされたら後日追加します
高口も、質疑を見据えて資料を求めました。
質疑があったら、お伝えしたいと思います。
学校統廃合は、まさに、子どもの権利である学ぶ権利、学習権をおびやかすものですが……
その後続けて、「練馬区こどもの権利条例」制定を求める陳情の質疑がありました。
陳情93号 練馬区子どもの権利条例制定を求めることについて
陳情要旨
「練馬区子どもの権利条例」を制定するよう、区に働きかけてください
陳情理由
1.コロナ禍において、家庭の格差や貧困等の問題が、一層表面化しています。
そのなかで、児童虐待が急増するなど、子どもの権利が守られない現状が浮き彫りになっています。
練馬区の子どもたちの実情をとらえ、その権利を守る政策は、喫緊の課題です。
2.練馬区にも様々な子どもの支援制度がありますが、大人の目が行き届かず、支援にたどりつかないこともあります。子ども自身が助けを求め、支援につながれるようにするためには、子ども自身が自分には権利があると知ることが重要です。
3.2021年、東京都議会において「東京都こども基本条例」が制定されました(以下、都条例)。
この条例では、「いかなる状況においても、こどもの幸福を追求していくことが何より重要」と謳っています。
練馬区も、この理念を活かす必要があると考えます。
4.都条例では、①あらゆる差別の禁止、②最善の利益の確保、③生命・生存・発達の権利、④意見尊重という、
子どもの権利条約の4つの一般原則を掲げ、これを「子どもの目線」と述べています。
この4つの原則は、誰にとっても必要なものです。
つまり、「子どもの目線」に根差した政策は、すべての人にとって優しい政策であると言えます。
「練馬区子どもの権利条例」の制定は、広く区民全体にとっての福祉の向上にもつながると考えます。
5.練馬区は、子どもの人口が多い区です。その背景には、都心へのアクセスのよさと同時に、自然の豊かさがあると考えられます。
練馬区ならではの”みどり”を活かし、子どもの豊かな育ちを保障するためにも、練馬区独自の「子どもの権利条例」は有効だと考えます。
6.さらに、「練馬区子どもの権利条例」の制定は、練馬区民の誇りとなり、子どもの福祉がより豊かに向上していく契機になると考えます。
本当にそのとおり!
とても大切な内容だと、高口は考えます。
練馬区の資料より
当陳情について、練馬区が提出した資料はこちら
練馬区が行っている施策が列挙されていますが、「本当に子どもの権利に基づいているか?」と疑問になるところもあります……。
■子どもの意見数、計画反映数の少なさ
こども基本法を受け、練馬区は一昨年から各計画で、子どもからの意見募集を実施するようになりました。今回それを「子どもの意見反映」の取組の一つとして挙げていますが……。
- 2023年度:215件(144名)、計画反映11件
- 2024年度:514件(426名)、計画反映79件
区は「たくさんの意見を頂けた」と答弁しましたが、
練馬区の子どもの数は、0-18歳で10万人超え。
0-4歳を抜いても8万人、10歳以上に限定しても5万人以上。
それに比べて、こどもの意見数、反映させる件数が、まだまだあまりにも少なすぎます。
10歳以上に限定しても、
意見を出した子どもは0.8%(5万÷426名)、
計画反映は、0.1%(5万÷79件)
に過ぎません。
■旭丘の小中一貫教育校の学校名アンケートが、意見表明権?
区の資料には、
「旭丘、小竹地域の新たな小中一貫教育校の統一学園名について、児童・生徒による投票を実施し、みらい青空学園とした」
とも記載。
つまり、新しい学校名でアンケートを取ったことが、子どもの意見反映だとしています。
しかしそもそも、このアンケートを、子ども自身が求めたわけではありません。しかも結局、子どもが出した案は採用されませんでした。最終的な決定権を持つ推進委員会に、子どもは参加できません。
こども基本法にある意見表明権とは
「自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会」の確保です。
つまり、学校名のアンケートのはるか以前に、そもそもの小竹小学校の統廃合について、子どもの意見を聞かなければいけない、ということです。
しかし練馬区は、豊渓中も光八小も含め、学校統廃合の当事者の子どもたちに直接意見聴取をする機会を設けようとしていません。
校名のアンケートをとったことが「子どもの権利」だと記載する練馬区は、子どもの意見表明権を全く理解していない。
まさにその証拠と言えます。
■学校で子どもの権利を教えている?
もう一つ気になるのは、小学校の道徳科などで子どもの権利について学習している……という資料の一文。
道徳の教科書で、子どもの権利が記載されるのは、小学5年生。
乳幼児の時期から教える必要があるのに、学校でも高学年にならないと教えられないのです。
道徳の教科書によっては、義務とセットで教えるものもあります(権利と義務はセットではない)。
また、決して大きな扱いではなく、1コラム程度の記載です。
それで十分学べていると言えるでしょうか?
西東京市では、西東京市の子どもの権利条例について、きちんと勉強する機会が、学校であると聞いています。
条例ができることで、子どもの権利を教える機会を、確実に広げることができるのです。
それに対し、練馬区は「児童館や母子手帳での記載」など、「様々なやり方」を組み合わせて伝えている、と答弁しました。
「様々なやり方」の中に、「こどもの権利条例」を加えればよいだけです。「様々なやり方」は、多いに越したことはありません。
練馬区の姿勢
■個別の施策で十分?
答弁から明らかになった練馬区の姿勢は、以下の通り。
- 『練馬区教育・子育て大綱』
『練馬区子ども・子育て支援事業計画』
といった計画に、都条例も踏まえ、基本的目標を掲げている - 施策の実効性が重要
- 計画を実現することで、子どもの権利保障をつなげることが大切
つまり、条例はなくても、個別の計画・施策を実行すれば、子どもの権利の理念も果たされる、という姿勢です。
しかし、その区の計画には、学校統廃合、谷原保育園の廃園、区直営保育園の民間委託など、子どもの権利を侵害している、「子どもの最善の利益」とは言えない施策が含まれています。
したがって、計画を進めればよい、ということにはならないのです。
■練馬区では子どもの権利は浸透している?
別議員から、子どもの権利は練馬区で「浸透していると考えているか?」と聞かれ、
練馬区は「理解は十分はかられている」と答弁しました。
これには、私は大変驚きました……。
セーブ・ザ・チルドレンの調査(2022年)で、子どもの権利について「全く知らない」「名前だけ知っている」と回答した教員は、3割。
教員自体が「知らない」のに、学校で教えられているでしょうか?
別議員からも、日本財団の調査で、子ども自身が「こどもの権利条約を知らない」という回答が59%にのぼったことが紹介されました。
練馬区は、何をもって「十分」と答えているのでしょうか?
現実・事実を理解できていない、と言わざるを得ません。
■「条例をつくる弊害はない」と認める
子どもの権利条例は、基本的には理念を掲げる、いわゆる理念を掲げる理念条例です。
「理念を掲げる弊害はあるのか?」
と、与党議員が質問。
練馬区はそれに直接答えず、別の議員が再度質問すると、
区「特に弊害があるものではない」
と認めました。
あたりまえのことですが……弊害がないなら、子どもの権利にプラスしかないのですから、つくればよいわけです。
子どもの権利条例が必要な理由
■練馬区で起きている人権侵害
練馬区は、それぞれの施策の中で十分やっている、という主張ですが、今の社会状況、練馬区の状況で、「十分」などということが、言えるでしょうか?
たとえば、練馬区で近年、立て続けに複数発生した、教職員による性暴力の事件。
性暴力は、最大の人権侵害の一つです。
子どもの権利が十分守られているなら、なぜこの事件が起きたのでしょうか?
教育以外の子ども分野でも、全庁あげて取り組むべき問題です。
このような重大な事件の起きた練馬区で「子どもの権利条例をつくろう」とはならないことが、不思議でなりません。
他にも、不登校数の増加は、学ぶ権利の侵害です。
虐待については、練馬区は練馬区の児童相談所はつくらず、都児相との連携で進めていますが、児童相談所設置と子どもの権利向上は、どちらも不可欠な両輪です。
練馬区の姿勢が、問われます。
■世田谷区の実例
23区で初めて、2001年「子ども条例」を制定した世田谷区は、2025年4月条例改正を行ったばかりで、「世田谷区子どもの権利条例」と名称を変えました。
https://www.city.setagaya.lg.jp/02236/23496.html
この変更について、世田谷区は、
条例の名称に「権利」という文言を追加し、具体的な子どもの権利を明記することで、子どもの権利が当たり前に保障され、子ども自身が子どもの権利を実感できる文化と地域社会をつくり出し、発展させ、継承していくことを目指しています。
と、明記。
さらに、
主役である子どもが、条例を自分のものとして受けとめ、活かすことができるよう、条例の前文、目標、子どもの権利には、子ども条例検討プロジェクトで子どもたちが検討した意見を反映
中学生、高校生世代による「子ども条例検討プロジェクト」において、子どもたち自身が、条文案を検討。小学生・中学生アンケート、児童館等での「子ども・青少年会議」などで出た意見も踏まえています。
最近改正した『世田谷区教育大綱』では、小5、中2に読んでもらい、意見を反映させています(練馬区も『大綱』の話を出しましたが、子どもの意見聴取は行っていません)。
子ども自身が条文づくりにまで関わっている。練馬区とは四半世紀も違う条例の歴史が、この取り組みの差に、歴然と表れています。
これらの世田谷区の先進的な取り組みを紹介しても、練馬区は、練馬区に比べて世田谷区が進んでいるわけではないと答えました。
練馬区は、子どもに関わる計画策定にあたり、子どもワークショップの実施もしていません。ようやく2年前、子どもからのパブコメを始めた段階です。
客観的に見て、取組みが進んでいるのは、2001年の段階で子どもの権利条例を策定していた世田谷区です。
練馬区の主張する、個々の施策を充実させるためにも、条例が必要です。条例があることで、個々の施策が充実していきます。
子どもの権利条例は必要であり、陳情の主旨に賛同することを、質疑の最後に述べました。
陳情審査
陳情審査(採択・不採択の結果を出す)は、次回委員会(5月20日)です。
結果が出たら、お伝えします。