【12/5文教児童青少年委員会】①ついに…区立園初の民営化(高野台保育園)、②石神井図書館、谷原あおぞら学童クラブの指定管理【議案解説】

2024年12月5日、文教児童青少年委員会のレポートです。
今回は、2024年第4回定例会の議案についての質疑。

  • 区立高野台保育園→練馬区初の民営化
  • 石神井図書館の指定管理(継続)
  • 谷原あおぞら学童クラブ・谷原フレンドの指定管理(継続)

という3議案。

特に、高野台保育園は、練馬区で初めてとなる民営化。

詳しく解説します。


練馬区立高野台保育園→民営化へ

■議案の内容

簡単に言うと、「すでに民間委託している高野台保育園を、そのまま現事業者に移譲し、民営化する」というもの。

運営法人は、「社会福祉法人 尚徳会」。
小児科の医師が理事長を務める法人とのこと。
本部は鳥取県米子市。

議案の立て付けとしては、以下の通り、2つに分かれています。

  • 議案96号 練馬区立保育所設置条例の一部を改正する条例
    • 区立保育園の一覧があり、そこから「高野台保育園」の名前を削る
  • 議案115号 財産の無償譲渡について(高野台保育園)
    • 建物を無償で渡す
    • 土地は30年間無償で貸付(5.6億円の価値)
    • 財産概要
      • 鉄筋コンクリート造2階建て
      • 990.37㎡
      • 築30年(1994・平成6年9月27日建築)
      • 1億8千万円の価値
    • 譲渡条件
      • 保育所の運営・区民福祉の向上に資する事業に使うこと
      • 修繕、大規模改修に要する経費を負担すること

なお、議案とは無関係ですが、

  • 定員:123名→112名

という変更も生じます。

詳細は、以前ブログで解説します。
【参考】高野台保育園民営化、どうなる?光和小・橋戸小・大泉桜学園がねりっこに…他【文教児童青少年委員会・2024/6/14】

■事業者が変わらない点は重要!

事業者の評価が高いとのこと、保育士さん方が頑張っていらっしゃることと思います。

また、同じ事業者が継続する・事業者が変わらないという点で、保護者の安心、子どもにとっての安定した保育につながることは、大切だと考えています。

その前提を述べた上で、以下、「区立保育園の初の民営化」という観点で、質疑をしました。

■建物の改修費用も出すのか?

前回、今後の建物の改修費用も補助を検討している、との答弁がありました。
いくらと想定しているのか、上限はいくらか?などを聞いたところ……

  • 法人の努力で積み上げる前提
  • 都・国の補助も活用
  • 残りは自己負担
  • 現状は「十分な見立て」
  • 収支見込の計算は提出されており、「改修に備えた費用は積み立てられる」
  • 万一不足する場合は協議に応ずる
  • 具体的な金額は想定していない
  • 毎年度の積み立て金額→他園の積み立て例では、数百万~1千数百万円の積み立て(毎年)
  • (参考)大規模改修の費用→直近の区立園(2017年大泉学園保育園)では、2億7千万円
  • 民間園の場合は、国や都補助も差し引いた額のため、「積み立て見込みは十分」

との答弁でした。

練馬区の施設は、築40年が大規模改修のタイミングですが、30年目で引き渡し、あと10年で積み立てて改修するのかどうかは、法人の判断、という話でした。

■民営化によって、改修費用の積立てが必要になる

区立園であれば、建物の改修等は、すべて練馬区が出すので、事業者の負担となりません。

民営化すると、そこも含めて、事業者が見ていくこととなります。

そうなると、全体の運営費用が、改修費用にまわされ、人件費などが下げられる可能性が生じます。

今の委託費(人件費、運営費、事務費)はいくらで、民営化後はいくらになるのか?
改修費用が必要になる文、人件費等が下がることはないのか?
を確認したのですが……

  • 計上項目が分かれている
  • 人件費、運営費、その他積み立ては管理費

といった説明で、具体的な数字の返答はなし。

後で確認したところ、実際にいくらとなるかは来年度以降にならないと確定しない、とのこと。

つまり、実際にどうなるかは”わからない”、下がらないとは言えない……ということです。

もちろん当該法人がどうこうではなく、そういう可能性がないように、契約や協定の時点で、しっかり担保しておくことが必要です。
制度としての課題が残っていると感じました。

■区立園の「選択肢」は残るのか?

心配なのは、練馬区から区立園が消えてしまうのでは……という点。
その点、練馬区は「区立園は残す」「直営は残す」などの表明をしていないからです。

練馬区はそもそも、「子育てのかたちを選択できる」ことを、理念として掲げています。

では、区立園は選択肢に入っているのですか?
を問うと……

  • 区「区立園も入っている」

と、明確に答えが返ってきました。
とはいえ今後も保育園の民間委託、民営化は続く予定なのですが……

■万一の際の対応は?

協定(13条)に「区がやむを得ないと認める場合を除き~(事業者は)継続して本件施設を運営しなければならない」とあります。

この「区がやむを得ないと認める場合」とはどのような場合かを聞いたところ

  • 震災や天変地異に類する類のもの
  • それによって経営が立ち行かない場合

との答弁。

私としては、もちろん経営が安定して保育が続くことを願っていますが、
突然保育園が閉園する実例もあり、30年後の社会情勢など読み切れるものではありません。

経営上の理由、突然閉園となる場合にどうするかも、想定しておく必要があると思ったのですが…
その点については

  • (経営的に)立ちいかない状況が全く生じないか、区では申し上げられない

との答弁で、不安が残りました。

■その他論点

  • 区立園→直営8園で、障害児の受け入れ(枠拡大)
  • 高野台保育園は、民営化によって、障害児の受け入れ枠が拡大(定員枠を設けない)
  • 区立で増やせばいいのでは?という質疑に
    →区の答弁「土俵を広げるために、私立園の受け入れが望ましい」
  • 同法人が、他園の同規模で9名の受け入れ実績
  • 医ケア児の受け入れ実績はなし

■先の見えない時代だからこそ、区立園の存続が必要

繰り返しになりますが、事業者の評価が高いこと、その事業者が変わらずに続くという点は、保護者にとっても子どもにとっても大切です。

一方で、区立保育園の民営化という観点に絞ると、

今後長期的に見て、人手不足、突然の事業撤退などが様々な場面で起こり得る、行政サービスの突然の停止も起こりかねない社会状況にもなり得ると、想定してます。

だからこそ、区立園として、練馬区が責任を持ち、保育サービスを運営、継続、担うことは、今の時代状況、情勢を見てもますます不可欠。

その観点から、今議案については、反対をしました。

石神井図書館の指定管理→継続

■石神井図書館の状況

公募なしで、「株式会社 図書館流通センター」に決まりました。
来年度(2025年4月)から、5年間です。

更新は2回まで「特定(公募なし)」で行うことができる規定になっています。

石神井図書館は、前回(2020年)、直営から指定管理に変わりました。
直営3館体制が崩れ、直営は練馬図書館と光が丘図書館のみ。
練馬図書館も、今後改修時に委託とされており、もはや練馬区の直営図書館は風前の灯火です。

今回は1回目の更新なので、公募なしという形です。

■職員体制の変化

職員の状況、変化などを質疑しました。

  • 基本的に常勤のみ、非常勤はいない
  • 人数は基本45人で変わらず
  • 司書資格:4年前55.3%→今62.2%(28人)
    • 比較:23区の調査結果で5-6割
  • 離職率:17.8%(4年間で/退職・異動含む)
    • 比較:厚労省→全国平均15%

離職率は全国よりやや高めですが、司書資格などの数は上がっている状況です。

資格があっても低い、司書さんの待遇等も常に気がかりですが…

■練馬区立美術館改築の余波

練馬区の募集要項には、来年度、

  • 「美術館運営協議会」→現在サンライフ練馬で開催
  • 区民美術展、美術家協会展→現在、練馬区立美術館で開催

が、令和7年度、他施設でやる予定だと書かれており、練馬区立美術館改築の余波が、他地域まで及ぶことがわかります。

影響が全区に及びますね…

谷原あおぞら学童クラブ・谷原フレンドの指定管理→継続

■経緯

「谷原フレンド」という障害者施設と併設の学童クラブ。
2施設を同じ法人が運営しています。

指定管理開始の2005(平成17)年度から、社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会が受託。
障害者施設のサービス内容の位置づけが変わり、途中で公募が挟まり…

前回2020年度の公募があり、今回は公募なし(特定)1回目の更新となります。

■谷原フレンドとの交流事業が特徴

  • 納涼会、ミックスデー(利用者同士交流)などの行事や、
  • スタッフが障害について学童に話をする機会
  • 卒業後、施設にアルバイトに来る子がいるなど、

…と、施設併用・同じ法人が運営している特色を生かした連携を行っています。

■障害児受入れは

一方、障害児受入れは、他学童と同様の3人まで。

「増やせないか?」と質疑・要望しましたが、

職員配置やスペースの問題から「現段階では難しい」とのことでした。

■学童での障害児の枠の課題→早急に対策を!

こちらは谷原あおぞら学童クラブに限らずですが、

障害児の受け入れ枠に限りがあるために、
「来年度は入れないかもしれない」「働けなくなる」という切実なご相談を頂きます。

通常の枠はあいているのに、障害児の枠がないから入れないというケースも……
区として人を増やす、そのための予算をつけるなどして、対応してほしいと思います。

もちろん障害あるなしに関わらずですが、学童に入れないと、働き続けることは困難です。
保護者が仕事をやめなくていいよう、次年度の早急な対策・支援を要望しました。

なお、児童館併設の学童は、受入れ上限を設けていません。
一番多いところで、貫井地区区民館学童クラブで17人。

施設のスペースに余裕があるからなのか、校内学童(ねりっこ)が進み、空きが増えてきたからなのか…

この現状は、もう少し分析して、引き続き問うていきたいと思います。


参考:他の議案解説はコチラ
【練馬区議会】2024年第4回定例会、重要議案解説!(区長・議員等の給与増額…他)