【練馬区議会視察】①京都府城陽市「不登校対策のメタバース」②大阪府堺市「児童相談所の支援プログラム」
2024年10月17-18日、練馬区議会・文教児童青少年委員会の視察で、
①京都府城陽市の「メタバースを活用した不登校支援」
②大阪府堺市の「民間団体との協働による親子関係再構築支援」
を学びに伺いました。
視察と、自主的に見学して来た点を、レポートします。
【10/17】京都府城陽市の「メタバースを活用した不登校支援」
ひと足先に、メタバースを用いた不登校支援を始めた城陽市さんの取り組みを伺いました。
経緯、内容
■2023年度文科省が発表したCOCOLOプランを受け、2024年度にスタート。
■1学期は研修
■夏休み→週1回1時間程度、実施
・対象→練馬区でいう適応指導教室(トライ、フリーマインド)にあたる「ふれあい教室」に継続的に通室する生徒
・夏休みのつながりが途切れないこと、コミュニケーションを目的に
→夏休み後の2学期も、生徒たちは前向きに頑張っていて、学校への姿勢にも変化が見られた
・メタバースのほうがいい、という傾向は現状は見られない
今後
・継続的な通室のない生徒にも、学校と連携・相談しながらアプローチしていく
・不登校傾向など対象を広げ、教育相談や交流の場として充実させていく
実際に操作させていただきました!
・幾つかのアバターの中からセレクト
(髪の毛の長さやブレザー、学ラン、セーラー服など)
(ゲームのような細かいカスタマイズはできない)
・先生アバターもある
・タッチで前後左右歩けるほか、ジャンプ、席に座る、手を挙げる、もできる
(操作は慣れないとなかなか思い通りのところに進まない汗)
・音声で話すと、自動的にテキスト変換もされ、チャットにも残る
・教育的にふさわしくない言葉は、変換されない
・「うれしい」「かなしい」等と話すと、アバターの表情が変化
・部屋によって集まれる人数が異なり…
→集会所120名
→教室、ブレイクアウトルーム50名
→相談室5名
・部屋に入ると、部屋にいるメンバーとしか会話ができない
・クイズ、ゲームなど
→画面内のホワイトボードに記入され、正解の前に移動するなど、なるべく動きをつけるようにしている、とのこと
アプリについて
・開発されたパッケージがいくつかある中から選定
・3Dで、比較的リアルに動きや表情があることが決め手に
■予算
・初期費用→54万1200円税込
※割引ありの価格
・月額(35人アカウント使用の場合)
→1ヶ月9000円税別
→年11万8800円
その他
■出席扱い
・メタバース→していない
・ふれあい教室→している
■城陽市では不登校数が、メタバース前から減少
・全国的に不登校は右肩上がりですが、城陽市では、
メタバース導入前の2022 年度から減少に。
・その理由は、人的支援の拡充(スクールカウンセラーの市費での増員等)によるもの、との説明でした。
《高口感想》
・練馬区も、メタバース導入で準備を進めている
・アプリを実際に触って、感覚を掴むことができました
・学習や、教育的な配慮がされている点は安心
・一方、一般のゲームに慣れた子ども達には物足りないかも…
(たとえば、最初はコミュニケーションを主眼と切り分けて、あつ森など市販のゲームで、やりとり、信頼関係を構築し、その後、リアルな関係につなげていくのもありかも…?)
・メタバースで何をめざすのかを根底に据えた上で、そのパッケージの機能をどう活用するかが重要と感じました。
・あわせて、人的な体制の拡充も必要(それなしには!)ということがわかりました。
〜城陽市のご担当の皆様、お忙しいなかご対応、本当にありがとうございました。
【10/18】大阪府堺市「市の児童相談所の独自プログラム等による、親子関係再構築支援」
2006年に政令指定都市となり、市立の、つまり自前の児童相談所を立ち上げた堺市。
独自のプログラム等により、子どもの家庭復帰を継続して支える取り組みについて、伺いました。
▽背景や現状▽
■堺市
・政令指定都市
・人口81万人
・児童人口14.6%
・7区に分かれている
■政令指定都市以降にともない、自前の市立児相(堺市子ども相談所)を開設
・児相1つ
・7区に拠点(支援センター)
・各拠点と1時間以内に往復できる広さ
・そのための公用車が多い!
■人員体制 職員170名!
★専門職101名
・児童福祉司65名
・児童心理司34名
・保健師2名
■一時保護所も自前で、市内に設置
・30名定員
・児童養護施設や乳児院、里親、ファミリーホームや病院に一時保護委託
→最大で70名
・他自治体との協定があり、空きがあれば貸し合うことになっている
・大阪市や大阪府にも頼むが、どこも一杯
・逆に、あいていないか聞かれる
▽プログラムについて▽
■プログラムに取り組み始めた背景
・日常生活に戻ると元の関係に戻ってしまう
・関係が悪化することも
・子どもが助けを求めなくなる
→親子関係にアプローチする必要性
■プログラム導入の下地があること
・自前の児相を開設
・職員全体に具体的なノウハウや理念を欲する機運があった
・開設早期の段階で、職員の大半が、認知行動療法のプログラムを受講
・認知行動療法の考え方を「共通言語」で持てた
↓
プロジェクト体制で実施することに
■プログラム導入の中で見えてきた課題
・「やったからいい」ではない
・対象に寄り添い、ソーシャルワークをする必要
・ソーシャルワーカーの腕にかかっている
・対象者にあわせたカスタマイズが必要
・家族単位のプログラムが有効かつ継続性あり
↓
■対象者のニーズや状況により、プログラムが多様に
★堺市児相版プログラムの開発、試行、導入
・当事者参加の「ラップアラウンド」のアプローチが有効
・海外のプログラムはライセンス料が必要なうえ、カスタマイズできない
→日本の家庭にマッチしない
→独自に開発することに
★外部の民間団体によるプログラム
①立命館大学教授との協働
・「男親塾」
・個別&集団カウンセリング
・国の研究費で賄う仕組み
→その期限が切れた後が課題
②NPO法人チャイルド・リソース・センター(CRC)
https://www.childresourcecenter.org/
・カナダの児童虐待防止プログラムを参考に開発
・堺市職員の啓発、スキルアップ講座も委託
・間接支援も(ファシリテーターを養成、等)
↓堺市では主に3つのプログラムを実施
・子育てプログラム「安心感の輪」
・親子プログラム「ふぁり」
・子育てプログラム「Do re mi(どれみ)」
★外部カウンセラーによる個別カウンセリング
(おひとり)自尊感情回復プログラム「SEP」を開発、実践
(おふたりめ)元児相所長。システム論的家庭療法やブリーフセラピー
&児相職員(スーパーバイザー)による個別カウンセリングも
・聞き取り面接の中で、考え方のクセや認知をアセスメント
→ソーシャルワークしやすくする
→外部ではなく中の職員だから、時間をつくりやすいメリットも
■プログラムを親子の生活に反映させるために必要なこと
・丁寧なケースワーク
・複層的、同時並行で関わり続けること
・職員の仕事量軽減のための外部プログラム委託という考えは失敗する!
■外部プログラムの課題
・導入・定着には研修と試行を繰り返す必要
・単年度契約だが、親のニーズは単年度ではない
・初期投資のほか、時間がかかる→長い目で見る
■プログラムの効果
・指標=地域での生活が長続きしているか
※ 参加は9割が母親(他は、成人した姉兄、里親など)
↓結果は…
・プログラム開始前は「間接交流」が86%(会うとこわい、従ってしまう、等の理由)
→プログラム後、「直接面会」や「一緒に外出」が明確に増加→画期的!
・施設から家庭にいくケースもかなり増え、継続もできている
・施設の入所中も、「交流あり」「交流までのステップアップ中」が増えた
その他
■人材育成について
・市長の意向(!)で、2019年度から、3年で倍増させることに
・講義とOJTを繰り返し…
・現在約100名
・ようやく落ち着いてきたところ
《高口感想》
・練馬区は、区児相は作ろうとしないのに、今回は自前の児相を設置した堺市への視察でした(なぜ…?)
・独自のプログラムや専門的な関わりができるのも、やはり、児童相談所があればこそだと、よくわかりました
・一時保護所については、練馬区は「広域でしかできない」と主張しますが、全くそんなことはなく、基本的に自区内でまわしていることも、わかりました。
・プログラムについては、導入の前に、児相設置や職員の育成、共通認識があるからうまくいくことで、外部プログラムを委託するだけではうまくいかないのだと思います
・多様な対象者にあわせ、独自のプログラムを開発し、それをさらに繰り返し見直しながら、よりよいものにと続けてきた、職員の皆様の努力を感じました
〜堺市のご担当の皆様、ご多忙の折、貴重なご説明、本当にありがとうございました。
【自主的に見てきました】
せっかく行ったからには、限られた時間で行ける範囲の中で、できるだけ他のところも見るようにしています。
■御堂筋の「車中止から人中心のストリート」
新橋交差点(長堀通)〜御堂筋周防町交差点(周防町筋)
大阪市では、車道を歩道に変え、歩道を広くする取り組みをしており、以前から注目していました。
>大阪市では、平成31年に策定しました「御堂筋将来ビジョン」に基づき、御堂筋を車中心から人中心のストリートへと転換する空間再編を推進
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000625017.html
こちらを、出発前の朝イチで、現地を見てきました!
広々とした歩道と自転車道。
街路樹も、根がしっかり張れるように根元の空間も確保。
「車から人へ」
の流れ、練馬区にもぜひ…
と思いました!
■大阪市立阿倍野市民学習センター
研修室や会議室、和室のほか、
講堂、スタジオ、アトリエ、ギャラリーと
市民活動を支える施設が揃っていました。
様々なパンフ、チラシが置いてあり、情報が揃っていました。
城陽市役所さんも、1番の窓口が市民活動支援で、
市民活動を支える取り組みを真っ先に
掲げていらして、いいなと思いました。