【練馬区議会】2024年度初の補正予算、がっつり解説!

2024年度初の補正予算

2024年9月18日、練馬区議会・2024年第3回定例会で、補正予算の質疑がありました。

■9-10月議会の補正予算の意味

毎年、秋の補正予算は、区内中小企業支援があったり、1年でも大きな額となります。

コロナ前は、補正予算は、この時期の1回限りでした。
コロナ以降、補正予算の数が増えていますが、それでも9-10月議会は、最も大きな補正予算です。

当初予算で想定したよりも利用者や申請が多く、予算が足りないため増額となるものや、新規の工事や事業等が予算化されます。

■今補正予算の注目①工事の入札不調

その中で、特に今回の補正予算の注目は、工事の入札不調。
物価高騰、資材不足、人材不足から、工事が予定通り入札できないケースが増えています。

そのため、入札不調への対応の補正予算が、例年になく多額となりました。

■今補正予算の注目②練馬区立美術館のエレベーター

そんな工事の入札不調の中、練馬区立美術館改築の昇降機(エレベーター、エスカレーター)だけ、3-4年も先に予算化し、早期発注する、という予算も、今回の大きな問題点。

サンライフ練馬など、今ある建物の解体の予算もまだ先で、サンライフ練馬廃止の条例も通っていません。美術館改築の全体の費用さえ示されていません。

それなのに、エレベーターの予算だけ確保すると言うのは、異常な事態です。
美術館改築への異様なこだわりが、補正予算からにじみ出ています。

しかも、金額も、当初の3億から、わずか半年で、+2億も増額され、5億円に。

↓他、石神井小学校の増築など、質疑からわかった情報をレポートします。

【1】工事の入札不調問題

①不調の状況

  • 債務負担行為(※)全体の37件中29件が、工事の入札の不調関連
  • 昨今、入札不調が多いが、今年度著しく増加
  • 補正予算の対応は2パターン
    1. 前倒し
      • 来年度以降予定されている工事を、前倒し、早期発注することで、技術不足などを回避
      • 47億円(4,702,015千円)
    2. すでに起きた不調の再入札
      • 今年度入札不調のもの→前払金以外の経費を上乗せし、再入札に備え
      • 上乗せする経費は、約2割
      • 1億5千万円(149,067千円)

債務負担行為をざっくりいうと…

  • 自治体は、単年度予算が基本
  • 今年度予算を、来年度も使いたいとき、「債務負担行為」という項目でのせておく
  • 要は、来年度の予算を今年度確保しておく、ということ

②不調の原因

  1. 価格高騰
    • 材料費3割
    • 労務費2割
  2. 人材不足
    • 受けたくても人手がいないので受けられない
  • 特に、設備設計、昇降機が課題
    →今年度も入札不調が起きた
  • 区が設備設計事務所にヒアリングしたところ
    「技術者不足で入札に参加できない」
    「年度末繁忙期に発注が重なる」の声
  • 発注時期を平準化するため早期発注対策
  • 区「過去にない債務負担行為」(※)となった

■光が丘病院跡地の工事も遅れる見込み

  • 能登半島地震で工期が遅れる
    →解決していた
  • 今度は、技術者が確保できないために、工期が遅れる報告が、事業者からあった
    →施工業者と運営法人で検討中
  • 2025年4月福祉人材の学校を開設予定
    →区内の高校でPRを始めているところ

【2】練馬区立美術館改築、エレベーターだけ早期発注

工事の予定スケジュール

  • 2025年11月から解体工事を開始
  • 2028年8月に改築工事を完了
  • そのうちエレベーターの設置は2027年後半から2028年に設置の予定=3-4年後

Q 3〜4年先のエレベーターを、今発注する必要があるのか?

  • 区:昇降機で昨年入札不調があり、メーカーにヒアリングした
  • 主だった昇降機メーカー10社程度
    「技術者の確保困難」
    「需要増から工場から現場納品の期間が格段に長くなっている」
  • そのため、複数年度にまたがる発注の方針に変えた

→とは言え、あまりに先すぎます…

Q 実施設計前なのに、エレベーターの金額だけ出せるのか?

区「業界にヒアリングし、建模様のより早く工事費を算出した」

Q 半年で2億(6割)も増額となっていることについて

区「建物の規模が違うので比較できない」

Q 建物全体の概算工事費はいくらなのか?

区「実施設計が終わる頃に概算を出す」

Q 実施設計の契約書の特記事項には、「2024年7月15日に概算額を提示」とあるが

区「精度を高いものにすべく、事業者と調整。来年度の予算計上に合わせて提出に調整した」

Q 契約書は撤回したのか?

区「全体の建設費の変動、予想は困難」

※答えになっていません…

※エレベーターの費用だけは確定できて、全体の建設費は「予想困難」とは、はて?
計画ありきの、あまりにおかしな進め方です。

【3】野見山暁治氏、晩年の絶筆2点を購入

  • 2点で1600万円
  • 絶筆がいくつかある
  • そのうちの『束の間』『あてにならない』を購入
  • 日本有数の野見山コレクションに

Q もっと有名な作品を購入せよ、との質疑も…

  • 文化芸術振興基金、約4億円
  • 「基金を積み足してでも、有数なものを」と、与党会派が要望
  • 財政担当A「今後活用予定なし」「必要に応じて検討」
  • 文化担当A「ソフト事業含め目玉作品が必要」「今後検討」

※ピカソもゴッホも、4億円では買えません。桁が2つ足りません…。
誰もが知る超有名作品を購入することが、地域の美術館の役割でしょうか?
美術館改築に合わせて、練馬区立美術館そのものが変容してしまうのではないか……とても心配です。

【4】改築したばかりの石神井小学校を増築する問題

2021年4月に校舎を改築したばかりの石神井小学校。
近隣の石神井公園団地の再開発で、大規模マンションができ、教室数の不足が確定
→増築する(500-600㎡位の建物)

……という問題の予算です。

■経緯

  • 石神井公園団地が、老朽化による建て替え
    →東京建物ブリリアによる再開発マンションに
  • 石神井小学校の2016-2017年度の設計時点で、850戸程度
  • この時点では、新規販売戸数が確定していなかった
  • 今の住民がほとんど戻る想定→ピーク時で24学級で設計をした
  • 2021年3月、小学校の35人学級が決定
  • 2021年11月、新校舎が完成
  • 2022年4月、事業者に確認→新規販売戸数の大幅増加が発覚
  • 2030年度、29学級の想定
  • 教室不足が「推計上確実」

■「想定外」の原因は

  • 区「設計時に集められる情報をもとに、設計」
  • 想定外に増加」「乖離を招いた」

■再発防止策は?

  • 区「老朽化に伴う改築、どのくらい地権者が戻るか、推計が難しい」
  • 「練馬区でも、初めてのケース」
  • 「今後、建て替えのケースが増える」
  • 「今回のことを参考に」「様々なシミュレーションを学校ごとに行う」

※校庭が狭くなるのを軽減する対策はないのか?…等、高口も質疑をしたので、後日UPします。

【5】旭丘の小中一貫校、工事の遅れ→原因は?

【参考】高口ブログ(2024/8/29):旭丘の小中一貫校、ミスで南棟完成が4か月遅延!…他/文教児童青少年委員会レポ

  • 区:解体事業者には、建物を新しく建てる場所の図面は出さない
  • 今回はそこにケーブルがあった
  • そのため、把握できず
  • 今後、竣工後の設備についても情報を共有する

【6】区立施設の電力再エネ100%→契約方法は

区立施設、区立小中学校の電気料金134施設で、再生可能エネルギー100の電力にする、という補正予算。
高口もずっと求めてきたことなので、数年かかりましたが、よかったな、と思います。

その電力の発注方式「リバースオークション」に、質問が集中しました。

■リバースオークションとは

  • 料金競り下げ方式
  • 民間事業者のサービスを利用
  • 理由:区「各社様々な料金メニューがあり、複雑化高度化
    →区だけでは、限界があるため」
  • 「スケールメリット、多いほどコストメリットがある」
  • 「先行自治体で5〜10%のコスト縮減」

■契約の流れ

  1. 区が環境配慮方針を見直し
  2. 仕様書をもとに確認
  3. 一定期間、公告
  4. オークション実施
  5. 最も安価な事業者を選定
  6. 契約

■リスクは?

  • 経産省の登録41社のうち、区の入札資格ありは9社のみ
  • 区「経営状況が安定的であることを第一に事業者を選定する」
  • 「経営状況等で一定、ふるいにかける」
  • 「参加要件を、世界規模でエネルギー価格が高騰した2022年以前に取引実績がありとする。財務、リスク調査を年2回行う」
  • 「ハードルを上げると、オークションへの参加が減るが、要件を厳しくすることは可能」
  • 「契約後のフォローも不可欠→モニタリングなど」

■指定管理者の電力再エネ

  • 2017年度からスタート、準備中

【7】防災、避難拠点

避難拠点で、医療従事者区別することが課題
→識別しやすくする「ビブス」を購入する……という予算です。

■医療救護所で、医師たちが集まる流れ

  • 事前に参集する先生方を決めてある
  • 医療救護所ごとに
    医師8名、歯科医6名、薬剤師3名、柔道整復師4名
  • 約20名
  • 今後、訓練を実施
    • 11月12月
    • 石神井西中学校、開三中
    • 順天堂練馬病院の指導でトリアージ、搬送訓練など

■登録看護師

  • 143名登録
  • 医療スタッフカードあり
  • 災害医療講習会を来月初めて実施→トリアージ実演など

【8】耐震診断

■申し込みが増えているので、増額

  • 区「通常申し込みから結果まで2ヶ月のところ、遅れが出ていた」
  • 「建築士事務所協会に依頼し、体制を強化」
  • 「平時の体制に戻せた」「感謝」

■グレーゾーン建築も、対象に

  • 2000年基準を満たさない建物も対象にしたことが、申請増加の理由の1つ

■実績

  • 無料で専門家のアドバイスが受けられる
  • 昨年度の3倍
  • その後、改修工事に進むのは約2割
  • 区「過去3年受けた方に個別訪問や文書で干渉する」

■防災まちづくり地区

  • 4月に助成費用を増額+全戸ポスティング
  • 今後も「防まちキャラバン」や干渉を行う

【9】地下鉄平和台駅地下通路→工事の大幅な遅れ

■理由

  1. 東京都の事業が大幅に遅延のため
    ※事業が2025年度から2028年度に延長
  2. 地中の埋設物が多い
    →所有者不明の管が見つかるたびに工事を止めて対応

【10】児童手当、児童扶養手当の増額

今回の補正では、当初予算では判明していなかった分、
第三子のカウント→兄姉の年齢を18歳から22歳に引き上げ等
→不足分を計上しています。

■影響を受ける人数

  • 所得上限撤廃による対象→11000人
  • 中学生から高校生年代に引き上げ→16000人
  • 子供27,000人、19,000世帯

※全体で対象者が今71000人→98000人に増える

※児童扶養手当
・11月から
・所得制限の引き上げ
・3人目以降の多子加算
・今対象4053人→2200人増える見込み

★10月30日が期限

  • 新規対象者は申請が必要
  • 初回支給、12月に2ヶ月分振り込み
  • 2025年3月末までに申請があれば
    → 10月に遡及して認定、支給する
  • 支給は偶数月

※申請をどうぞ、お忘れなきように…!!!

【11】ワクチン

■小児インフルエンザワクチン

  • 対象者には9月下旬に予診票を一斉配送
  • 区内医療機関のみ
  • 区外は償還払い
  • 区負担額:1億円前後

※補助を決めた理由
・東京都が新たに補助を開始したため
・3000円以内の自己負担
・0〜12歳
・10月から
・とりあえず、今年度分(都補助が現状、1年のため)

■コロナワクチン

  • 65歳以上、3月末まで実施
  • 自己負担額2500円
  • インフルエンザワクチンと同額
  • 区独自→新たな対象66歳→救済措置
  • 区負担額:7000円中3500円、3.5億

■肺炎球菌ワクチン(任意)

  • 66歳以上(※自己負担額1500円)
  • 東京都の補助が1年→今後は未定

※定期接種は別にあり(都補助継続、自己負担額1500円)

【12】キャッシュレス決済ポイント還元事業→人気で増額

■増額の理由

  • 今年度想定を超える利用があり、増額
  • 今年度約6400店舗で、約56億円
  • 区の負担額は当初予算10億
    → 1.1億円超過
  • 期間内最後まで実施、予算オーバーしても途中中止せず

※ PayPayの手数料は1割弱

■ PayPay商品券

  • 区「詳細わかっていない」
  • 「情報収集に努める」

【13】中小企業支援

  • 47億円のうち9億7000万
    • 工事(建築、電気、設備、土木、塗装等)→ 250件
    • 備品(家電、学校など)→ 63件
    • 合計313件
  • コロナ前は4〜5億円
    • 2021年度10億
  • 2024年6月期:景気動向指数上向き

【14】公園トイレ

■7月にリニューアル方針策定

  • 2022年度モデルケースで修繕
  • 徳殿公園、わかば児童公園など5箇所で実施済み
  • 今年度:富士稲荷公園、泉新公園
    →洋式化、タイル張り替えなど
  • 今回の補正予算:大泉橋戸公園
    →洋式化、洗面台、壁補修など

※内容はわりと普通の改修のような……どんどん進めてほしいです!!!

■平成つつじ公園

  • 2025年〜全面改修+トイレもリニューアル
  • 子供に募集したデザインのアイディア
  • リニューアルイベントで意見要望を聞き
  • 現在設計を進めている

【15】土支田庭球場

土支田庭球場そのものではなく、人工芝のマイクロプラスチックについての質疑でした。

Q:環境省のガイドラインを守れているか

  1. 発生対策
    区「適切に維持管理」
  2. 流出対策
    区「一部施設で、側溝蓋にカバー」

※「一部」ということは、やっていない施設もあるということですね…

【16】難聴児の支援

授業中、補聴器を使う生徒が聞き取りやすくするため、「送信用マイク」を学校に配備

【17】練馬区内の放課後、デイサービスが突然閉鎖した問題

■問題

  • 区内の放課後デイサービス「つむぎ」の事業者が予告なく、サービスを終了
  • 練馬区こども発達支援センター内で放課後デイを開始(※)
  • その費用を、今回計上
  • 区の持ち出し分は1千万円

→その後、こども発達支援センターで事業者の個人情報紛失が起きたのも、この件と関係あるのではないか?という指摘もありました。

※詳細
14名通っており、2人は別のデイがすぐ見つかった
→残り12人の行き場所がなく
→ 7月から練馬区の子ども発達支援センターの中に設置
→今年度中に他のところを見つける予定(今後オープンの情報もあり)

■今後の対策

  • 区「事業者の確認指導が必要だが、都が行うもの」
  • 「東京都の責任は大きい、東京都に伝える」
  • 事業者が集まる場で伝える
  • 指導検査に公認会計士が入った→相談可能
  • 区は年1回、状況を確認している

【18】都知事選のポスター問題

  • 盤面数を決定するのは、都選管
  • 都選管見解「告示日当日にならないと、候補者数がわからない」
  • 区「密に連携する」

Q 掲示板ジャック規制できないのか?

  • 区:現在の公選法「掲示責任者、印刷者の住所を記載」と、大きさの規定のみ
  • 「公選法の改正が必要」→区選管、都選管、総務省も同じ考え

※その他、質疑で出なかった予算

■改正戸籍法でふりがなを記載

  • 今回の補正予算は、準備経費
  • 2026年度まで債務負担行為で計上
  • 練馬区での対応の流れ(予定)
    • 住民票にふりがながある
    • それで問題がないか確認の送付
    • 返信がなければそのまま登録

■高齢者補聴器、購入費、助成

  • 東京都が新たに補助制度を充実したため