学校からいなくなる正規職員…用務と給食調理の委託、その問題

※2023/1/31、練馬区議会・文教児童青少年委員会のレポートです。

令和5年度「学校用務」「学校給食調理」→委託事業者の選定

かつては、学校用務…いわゆる用務員さんも、給食調理の方々も、練馬区の正規職員でした。

今練馬区は、まるっと委託事業者に出すことに。

どんどんどんどん進め、ほぼ全校に達しようとしています…

正規職員の退職を待ち、「退職不補充」という形で、新しい採用をしない、というやり方です。

今回の報告は、

★用務→新規委託4校

  • 新規委託=4校
    • 北町西小学校、光が丘夏の雲小学校、石神井台小学校、南田中小学校
  • 更新=36校
  • 全87校(2023年4月1日時点)
    • 小学校50→54校
    • 中学校33校(全校委託済)
※更新とは…

基本的に1年契約ですが、校長などのモニタリングで問題がなければ、2回まで更新可。

つまり3年で契約更新、が実際には多いのです。

★給食調理→新規3校

  • 新規委託=3校
    • 田柄小学校、高松小学校、橋戸小学校
  • 更新=19校
  • 事業者変更=2校
    • 田柄第二小学校、開進第一小学校
  • 全92校(2023年4月1日時点)
    • 小学校56→59校
    • 中学校33校(全校委託済)

問題は…

★事業者のほうから、委託を辞退!!!理由は?

今回、給食を委託している2校で、「翌年度の受託辞退」が起こりました。

理由は…

  • 区「社内体制」「人が足りない」
  • 「それ以外に受託している学校との兼ね合いも」

…との説明でした。

人手不足。

練馬区は、「民間でできることは民間で」と言い、委託を進めています。
委託で大きく削減できるのは、人件費です。

もうすでに、その手法自体が、成り立たなくなりつつある…
それを感じさせる、今回の辞退。

しかも辞退した1社は、区内事業者
そしてそれを、別の区外の、すでに他にいくつも委託している事業者がとりました。

多いところで12校、10校超えて委託している会社も複数あります。

つまり、結局は、大手が有利

練馬区も
「研修、衛生管理、検査部門が厳密」
「体制しっかり」「実績」「不安少ない」
と、大手の安心感、メリットを認めました。

私は民間にいたので、民間にまかせればうまくいく!のではなく、むしろ民間は疲弊していると、私は思っています。

★人件費の問題

高口は質疑にあたり、練馬区の給食調理、用務の求人を調査しました。

給食調理は重労働で、夏場は灼熱。
ですが、アルバイトなら、1000円程度。

また、1月の時点で「チーフ」「サブチーフ」という重要な職責も、募集中でした。

やはり人手不足は深刻。

事業者も、給与をあげたくても委託費には限りがある。

この先どんどん人手不足となる時代。

練馬区は「委託を進めてきた責任」と、委託料についても「賃金水準を見極める」などと発言しましたが……

私はもう、この先の時代を見据え、委託すればOK!という考えは捨てるべき

働く方々に見合った待遇を、しっかりと、公の責任として、支えていくべきと、高口は考えています。

★区内経済の活性化になるか?

用務では区内事業者がほとんど。

給食調理では、区内事業者は92校中7校とわずかです。

委託できる区内事業者がいなければ、区内経済活性化にはつながらない。

「受託できる会社があるかどうか」
「そういう事業をやる」
という観点で考えることも、必要かもしれません。

一方で、委託できるのは、同じような事業者だけになる、ということもあります。

公平性、平等性という観点も、考える必要があります。

★常につきまとう、偽装請負

練馬区の職員(学校の先生等)が、委託の職員に直接指示を出すことは、「偽装請負」として禁じられています。

委託の職員に指示を出せるのは、委託の会社だけ。

でも、学校って、予想外のことがたくさん起こりますよね?

それなのにいちいち、委託の会社に確認をとらないと動けない……
非効率的だし、現場は大変だし、何より改善されていかない!!!

給食調理について、委託の前は、練馬区に直雇用されている同士、栄養士と調理で、「こうしよう」「これはできない」等、踏み込んだやりとりができていた……という質疑があり、練馬区はこう答えました。

  • 委託後の栄養士と調理のやりとりは、
  • 「栄養士の狙いや、気を付けてほしい点を“確認”
  • 「指定した方法や注意事項、決まったやり方を“確認”
  • だから「偽装請負にならない」
  • 「複雑」なことは「各社の営業、エリアマネージャーを通す」が「ほぼない」
  • 改善してほしい点を「直接(やりとり)することはない」

教育振興部長も出てきて、こう答弁しました。
確かに、そのとおりなら、偽装請負はありませんね。

でも……給食調理にとって、一番大事なことが置き去りにされていないでしょうか……?

当然、その学校の状況、一人ひとりの子どもにあわせて、細かく様々な改善するほうがいいに決まっています。
想いのある現場ほど、そうしたくなるでしょう。

それなのに、改善してほしい点を、直接やりとりできない。
本部を通すことさえ、ほぼない。

「もっといい給食にしていこう!」と、栄養士と調理の現場同士で、やりとりができないなんて……

本当にそれって、子どもにとって、いい環境なのでしょうか?

偽装請負がなくても問題ですし、偽装請負があればなお問題。

どちらにせよ、委託の大きな限界です。


参考