『これからの図書館構想(案)』を読むと、練馬区のこれからが心配になる理由

※2022/10/13、練馬区議会・文教児童青少年委員会のレポートです。

『これからの図書館構想』案と、素案へのパブコメ

★これまでの流れ

これまで『練馬区立図書館ビジョン』を掲げてきた練馬区。
約10年、2022年度までのビジョンです。

そこで、2020-2021年度、9回にわたる「これからの図書館構想策定検討委員会」を経て、『これからの図書館構想』を策定することに。

6/21-7/11、「素案」へのパブコメを募集し、それを反映した「案」が、出てきました。

↓素案の解説はコチラ↓
https://koguchiyoko.net/nerima/20220616bunkyo_toshokan/

★抽象的で、”これから”を感じない案に……

素案のときも思ったのですが………

なんというか………

控えめにいっても、とても、残念な内容です………

検討委員会の議事録を読めば、もっと広がりのある、夢もある、まさに”これから”の図書館だという話もたくさん出ていました。

しかし……

それを構想に落とし込んだ段階で、「あの広がりはどこに行ってしまったの???」と思わずにいられない、小さな内容にまとまってしまいました。

しかも、小さいうえに、あいまいで……

「世界につながる 彩り豊かな 知の情報拠点を目指して」
↑このキャッチコピーからして、曖昧さが伝わると思います。

実際、パブコメでも、「曖昧」「抽象的」といった指摘が多く見られました。

「これから」の10年を語るにふさわしい内容とは、とても思えず……

まだ、前の図書館ビジョンのコピー
「情報拠点として 区民に役立ち 頼りにされ 愛される図書館」
のほうが、地に足がついていると思います。

「案」の課題

上の段落の「……」の多さで、察して頂ければ幸いですが……

議会の質疑も、どうしても辛口になってしまいました(期待の裏返しでもあります……)。

★図書館を知る職員がいなくなっている

図書館に詳しい方々からもヒアリングしたうえで、

委員会では、なぜこのような案にしかならなかったのか、高口なりの見解をぶつけました。

  • 図書館の指定管理が進み、図書館のこと、現場をわかっている職員がどんどんいなくなっている
  • 指定管理が進む弊害
  • 区民との協働といっても、長年ボランティアをしている区民のほうが図書館を理解していて、区の側がボランティアまかせになってしまう
  • 図書館とは何かを、練馬区が深く理解できなくなった結果が凝縮されているように思う。
  • 今やっている事業に、実現できる程度のことを書き加えただけ、夢がない、広がりがない。

練馬区からは、

  • 「心配ご無用」
  • 月1回、指定管理館と連携している

等の答弁がありましたが……

このまま指定管理が進んでいけば、指定管理館を管理する経験、蓄積、能力が、練馬区の側になくなっていく。まさにその一端があらわれた、抽象的な構想ではないでしょうか。

★「ひと」の大切さ

そう考えるとやはり、ますます一層、図書館専門員(司書)の役割が重要になってきます。

練馬区では会計年度任用職員(非正規公務員)で、その低い待遇が問題に。

パブコメでは、図書館専門員(司書)の待遇改善、常勤化を求める意見も多数。

働くひとを大切にする方向へ向かうことが、「これからの図書館」には不可欠です。

★光が丘図書館を中央図書館に!

……というパブコメも複数ありました。

練馬区は「中央館」な位置づけと濁していますが、光が丘図書館はしっかりと「中央館」としていくべき。

委員会でも求めました。

★「練馬区立図書館ビジョン」の活用を!

新しく修正された箇所が、「練馬区立図書館ビジョンに基づく取組を充実させながら」という記述(P11)。

120の意見のうち、わずか8か所しか反映していない、数少ない修正箇所です。

であれば、どのようにビジョンを引き継いでいくのか?を質疑したところ……

  • 練馬区「今年度末まで検証作業を行う」
  • 「具体的な取り組み→光が丘図書館を中心に検討を行う」
  • それを踏まえて「具体的に、いつどんな形でやっていくか」決める

……ということで、構想は策定しちゃうけれど、検証も、その後の検討もこれから。具体的な中身はこれから、とのこと。

どのように引き継ぐのか、示すのが先ではないでしょうか?

★グランドデザイン構想の下に位置付け

体系図として、

>本構想は、練馬区の30年後の目指すべき将来像を示した「グランドデザイン構想」

の下に位置付けられています。

しかし図書館とは……民主主義の砦なのです。

練馬区の構想をはるかに超えて、もっと豊かで、もっと本質的で、もっと根本的に、区民の生活に欠かせない施設ではないでしょうか。

反対意見も根強い「グランドデザイン構想」に基づいているから、図書館本来がもつ深さ、厚みが、図書館構想に表出しないのではないか。

そんなふうにも感じます。

図書館にとって本当に大切なもの。
目には見えないもの。

言葉でもあらわしにくいけれど、作ったひとがそれを本当に理解し大切に思っていれば、構想の中に滲み出るはずです。

そういう意味でも……
残念な構想だ、と思ってしまます。

今後練馬区の区政が新しくなったあかつきには、もっともっとゆたかで本質的な構想が描けるように!高口も引き続き頑張りたいと思います!