【決算】困難女性支援法~女性支援のこれから【高口質疑】

※2022/9/21、練馬区議会・決算特別委員会「総務費」より、高口の質疑です!

①困難女性支援法→練馬区の支援の充実を!

★根拠法が大問題

これまで困難を抱える女性達を保護してきたのが婦人保護施設です。
ただし根拠法は、1956年制定の、売春防止法です。

つまり、法の立て付けでは、寄り添い、支援するという観点ではなく、「更生」が目的。

そのため、婦人保護施設のモデルは「刑務所」とも言われ、
「収容」という言い方は、今も使われています。

女性が悪い→婦人保護施設で更生させる…
という法制度は、70年近く変わってきませんでした。

★DV支援で抱えるジレンマ

その後、2001年、DV防止法が成立。

婦人保護施設が、シェルターも担うこととなりました。

しかし…

いつでも来られる、開かれた施設であるべき婦人保護施設と、
居場所が知られてはならない、DV一時保護所。

開くべき⇔隠すべき

…という相反する事業を、同時に抱えることとなり
相談しづらさが課題になっていました。

★念願の、女性支援新法!

昭和30年頃、女性たちが抱えていた貧困、疾病、障害などの困難は、
2020年代の今も、大きな違いはありません。

70年ずっと、社会のひずみが弱いところへ向かってきました

売防法を根拠法とすることをやめ、新たな女性支援法をつくることが
長年求められてきたなか、ようやく、国が動き…

今年、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(困難女性支援法)」が制定されました。

戦後ずっと変わらなかった女性支援の、大事な一歩です。

Q1:練馬区の今後の体制

今後、練馬区でも、総合的に女性を支援していくことが求められますが、

現在は、

  • DV・性被害は人権・男女共同参画課
  • 貧困などは福祉事務所

など、担当課が分かれています。

どこかが統括して庁内連携を主導し、女性支援を強化する必要があると思いますが、
今後の体制の方向性について伺います。

練馬区A:
  • えーるは昭和62年に練馬区婦人会館として開館して以来、女性に利用しやすい相談窓口として広く区民からの相談を受け付け、福祉事務所をはじめとした様々な関係機関と連携し対応しています。
  • この他、男女共同参画施策も進めています。
  • 新法施行後も、引き続き東京都女性相談センターをはじめ、婦人保護施設やNPO、庁内関係各課と連携の上、切れ目ない支援を行ってまいります。

Q2:計画策定は努力義務→策定を

また、区市町村の計画策定は努力義務とされています。
練馬区でも策定すべきですが、見解を伺います。

練馬区A:
  • 困難女性支援法は性的な被害や家庭の状況などの理由により、社会生活を営む上で困難な問題を抱える女性を支援するため、本年5月に制定され、令和6年4月に施行されます。
  • こちらは議員立法となっております。
  • 同法では、国は施策に関する基本方針を、都道府県は基本方針に則した基本計画を策定することが義務付けられています。
  • 困難女性支援のための区市町村計画については、今後示される国の方針や都の計画を踏まえた上で検討してまいります。

 

②  課題=人員体制など

ぜひ、えーるや男女共同参画課が主導になって、女性支援を強化頂ければと思います。
また、計画策定についても、ぜひ前向きな検討をお願いします。

 

Q3:婦人相談員→待遇改善を

困難女性支援法では、現在の「婦人相談員」を、
「女性相談支援員」と名称を変え、支援の中核とすることが想定されています。

現在練馬区には、

  • 各福祉事務所に正規2名、会計年度任用職員2名=合計16名

います。

他に、

  • 人権・男女共同参画課に正規3名
  • えーるに正規1、会計年度任用職員1名

いますが、こちらは配偶者暴力相談センター、DV相談にあたる職種です。

 

婦人相談員の待遇の低さは長年の課題で、今年度、国の補助額が経験年数等をもとに
月額1万円ほど上がりました。

しかし練馬区では、当人の給与はあげず、練馬区の負担分を減らすほうに使いました。

婦人相談員の待遇向上、という主旨に照らしても、
国の補助額があがった分は、当人に反映させ、給与をあげるのが当然ではないでしょうか。

 

練馬区A
  • 国は、非常勤の婦人相談員を配置する自治体に対し、基準額に基づき補助を行っています。
  • 本年度、経験年数や期末手当支給に応じた加算を新設し、処遇改善を行ったところです。
  • 区は会計年度任用職員の婦人相談員に対し、国が加算した後の基準額と同水準の報酬等をすでに支給しております。
  • 新法施行後は業務内容も様々変化するものと考えております。
  • 業務内容の他、精神保健や就労支援など他の生活支援に携わっている会計年度任用職員とのバランスなど処遇については様々な観点から検討を行う必要があると考えております。

 

③  これから必要なこと~性暴力からの回復を

すでに、国と同水準の21万円ぐらいを支給しているということですが、とても高いとは言えない水準だと思います。今後、女性支援の中核を担っていただく方々に対して、業務内容も変化していくということなので、前向きな見直しを求めたいと思います。

 

困難女性支援法では、定義する困難の一番目に「性的な被害」を掲げています。

逃げられない、どこにも行けないなか、家族から性暴力を受けるなど
言葉を失うような経験をされる方もいらっしゃいます。

さらなる性暴力に巻き込まれるケースも少なくなく、

  • 「自尊感情を奪われることは、重ねて被害を受けやすい状況を生み出す」
  • 被害からの回復のための適切な治療と環境は「被害を受けた者の権利」

と指摘する専門家もいます。

一方、えーるでの性被害相談件数は

  • 2019年度 2件
  • 2020年度 0件
  • 2021年度 2件

とわずかです。

えーるでは、基本的には性暴力救援センター・東京(SARC東京)につないでいるとの事。

一方で、SARC東京のHPをみると、「過去の性暴力被害」については

  • 医療機関を受診しましょう。
  • 限られた時間になりますが、お話を伺うこともできます。

と書いてあります。

緊急のワンストップセンターという性質上、過去の被害にじっくり時間をとることが難しい状況がうかがえます。

Q4:区として取組を

性暴力からの回復には、長い時間がかかります。

練馬区としては、ワンストップセンターとは違う位置づけとして
過去の被害を含め、じっくりお話を伺う支援・相談体制、
そのための人員体制も含めて力を入れるべきと考えますが、
見解を伺います。

練馬区A
  • 国は、令和2年6月に、性犯罪性暴力対策の強化の方針を決定し
  • その中で、被害者が都道府県に設置されている性犯罪、性暴力被害者のためのワンストップ支援センターに速やかにつながることができるよう、体制強化を求めています。
  • 区はその方針に基づき、被害者を迅速にワンストップ支援センターにつないでいるところです。
  • また、ワンストップ支援センターは、被害直後からの医療的支援、法的支援、相談を通じた心理的支援をはじめ、
  • 中長期にわたる総合的な支援を行う拠点であると認識しています。
  • えーるにおいては心の相談等において、被害者に寄り添った相談を受け付けています。
  • 引き続きワンストップ支援センターと連携を図りながら被害者支援に取り組んでまいります。

 

④  地域に、練馬区に居場所を!

ワンストップというところでは、迅速性が求められる。一方で、こういう法律ができて、長年苦しんできた被害に対して、もっと相談してみようという方もいらっしゃると思います。

現在だと性被害の相談件数が低いので、ぜひたくさんの方が支援につながるような体制を整えていただけたらと思います。

 

その支援体制にも関わることです。

今必要なこと、そして練馬区だからできることとして、
「身近な居場所づくり」があります。

困難にある女性たちが、気軽に立ち寄れる居場所が、まちなかにある

その一晩、性被害を受けずに済む居場所がある

そのことが、行き場のない女性たちにとって、切実に必要なのです。

Q5:居場所づくりを

若年女性向けの民間の居場所がいくつかあり、

「にんしんSOS東京」を運営するNPO法人ピッコラーレは、
豊島区で「ぴこカフェ」を委託、運営しています。

話を聞いてもらいたい、家にいたくない等の理由から、時間を過ごせる場所を探し、他区からも、来られているようです。

生きることのしんどさや、バイト先でのこと、家族やパートナーとの関係、そして、月経や避妊、性被害の相談もあります。

ぴこカフェ以外にも、若草プロジェクトの「まちなか保健室」等もあります。

親も仕事で忙しかったり、逆に、過干渉であるなど、家庭の中に居場所がない子達もいます。

学校での性教育も時間数をあまりとれず、知識もない中、若年の妊娠・出産も見られており、学校以外に、からだや性のことを相談できる場所の必要性を感じます。

現在、練馬区では、10代・20代の場所として、青少年館や児童館の中高生事業がありますが、困難を抱える若年女性の居場所にはなっていないと思います。

  • Wifiと電源、マンガなどが置いてあるなど、来たくなる工夫
  • 勉強ができたり、好きなことをして過ごせる場所
  • そこに、相談できる保健室機能

があると、女性たちも訪れやすくなると思います。

新たな居場所づくりについて、見解を伺います。

練馬区A
  • 困難女性支援法では、都道府県が居場所の提供等を含めた相談支援業務を民間団体と協働して行うものと規定しています。
  • また、同法において区もそれらの業務を行うことができると規定されています。
  • 現在、婦人保護事業は、東京都女性相談センターが中心に行っており、
  • 都はすでに平成30年から、様々な困難をかかえた若年女性に対しアウトリーチや一時的に保護する居場所支援をおこなう事業を社会福祉法人やNPO法人に委託し実施しています。
  • 総合福祉事務所では都事業で一時的に保護された若年女性が安定した地域生活を送れるよう、都からの情報提供などを受け連携して居住支援などを実施しているところです。
  • 区では、区内にある婦人保護施設をはじめとした関係機関と、居場所作りも含めた支援についての意見交換を行っています。
  • 今後示される国の方針や都の計画を踏まえ、引き続き関係機関との意見交換を通じた自治体の取組みも参考にしながら、効果的な支援を検討してまいります。

 

⑤  性教育の遅れ

区も(居場所づくりを)行えるということで、身近にあることがすごく重要だと思います。ぜひ、こちらも前向きに検討をお願いしたいと思います。

 

Q6:学校との連携、啓発を急いで!

性被害をなくすためにも必要なのが、
包括的性教育、セクシュアリティ教育です。

『第5次練馬区男女共同参画計画』では
「区立学校への出前講座」を取組に掲げていますが、
3年間で年3~4校程度と、進んでいません。

助産師さんが、教育委員会に要望に行っても
「コロナで予算がない」と他人事のような反応だったそうです。

先生方も、「まだ生徒は幼いので…」といったり
どういう内容をやっていいかがわからなかったりするそうです。

中学生にもなれば、妊娠するからだ、妊娠させるからだになります。

まわりに性被害にあったり、妊娠する子がいるかもしれませんし、
当事者になる可能性もあるのです。

性教育が、いのちを守るためにも不可欠です。

少なくとも小中で1回ずつ受けるためには、
3年間で、小学校で年22校、中学校で年11校はまわる必要があります。

男女共同参画課から、教育委員会にしっかり働きかけ、
出前講座を早急に全校で実施すべきですが、

  • なぜ出前講座が進まないと考えるのか
  • 進めるために何をするのか

の2点、見解を伺います。

練馬区A
  • 性教育について
  • 性被害も含めて、区は、令和2年度に子どもたちに性暴力被害にあわないための保護者向けのリーフレットを5万部作成
  • 全区立小中学校の生徒の保護者向けに配付いたしました。
  • 今年度も全区立小中学校新1年生の保護者に向けて配布を行っているところです。
  • また、男女共同参画情報誌『MOVE』やパンフレット、パネル展等でデートDVなども含めた性教育に関する啓発を行っております。
  • 男女共同参画計画に載せている出前講座については、今年度からデートDVの区立中学校への出前講座を行う予定で、現在準備を進めているところです。
  • 引き続き、出前講座をはじめ様々な媒体等を利用して性教育については取り組んでまいります。

 

Q7:中学生の講座参加の少なさ

なぜ進まないと考えるのか、というところはなかなかお答えしづらいのかと思います。
学校現場で行うことが非常に重要です。デートDVも今おっしゃったこともすごく重要ですが、その手前の、なぜ大事なのかという性教育を、しっかり行っていただきたいと思います。

 

えーるでも講座を開催しています。

昨年えーるで11月開催した
「親子で学ぶ生と性講座~思春期のこころとからだ」

こちらは小学校高学年以上が参加可能な講座ですが、
中高生の参加はありませんでした。

低学年の性教育講座は人気ですぐいっぱいになるのに、
思春期の子どもは来ないことが課題と聞いています。

  • 理由の分析と、
  • 今後の工夫について伺います。
練馬区A
  • えーるで行う事業への中高生などの若い世代の参加が少ないことについては、
  • えーるの認知度が低いことも一因だと分析しています。
  • 現在は『MOVE』などの情報誌をはじめ、様々な媒体でえーるの事業やえーるのことを紹介しています。
  • 今年度、中学校に出前講座を実施いたします。
  • そういった中でも若い世代に対してえーるですとか各種性教育講座の周知に努めてまいりたいと考えております。

性教育が必要!

今おっしゃったように、中学校の出前講座などで、直接アウトリーチして本人に伝えていくことがすごく重要だと思います。そのためにも、学校への出前講座を全校で実施いただきたいと思います。

 

実は練馬区は、2014~2020年度の7年間の統計で14歳以下で出産した母親の数が、東京都で突出して多い区です。

詳細は保健福祉費で質疑しますが、

中学生以下の出産が際立って多い区だという事を考えても、
性教育が本当に必要であり、

身近な居場所づくりや、学校での出前講座のほか
えーるでも参加しやすい講座の工夫をお願いします。