【練馬区議会・補正予算】「財政難」のはずが増収に→使い道は「投資」?…練馬区財政、大きすぎる矛盾
※2022/3/3、練馬区議会「補正予算」のレポートです
※練馬区の答弁のまとめです
今年度(2021年度)の最終補正。「最終」なので、今年度を総括しつつ来年度につながる、大きな意味をもちますが……それだけに、大きな争点が発覚!
最終補正予算…問題を解説!
★2021年度の当初予算では、「財政難」を強調
まず、2021年度の当初予算では、「財政難」をこれでもかっ!と強調し、「緊急対策」として、様々な事業が見直し。
補助、給付事業も切り詰められました。
そのなかには、
- 高齢者の紙おむつ支給、配食サービス
- 第三子の祝い金→半額に
といった、少子高齢化で欠かせない事業も……。
★フタを開けたら、歳入増!
ところが今年度、予想外にも……
143億円の財源の増加!
あれほど強調していた「財政難」は、一体なんだったのか……。。。
★歳入増の理由は?
主な理由は、2点です。
- 一部の企業が好調→最高益
- 働く人が増えた
- 理由:「納税義務者」の増加(約4000人)
- 特別区民税が30億円プラス
★格差が広がった結果でもある
増収は一見よいことですが、この理由を分析すると……
コロナで苦しむ人が増える一方で、最高益を叩き出す企業もあること。
20代前半の働き手が減った一方(アルバイトの減少が原因か?)
50-60代女性の働き手が増加
→これは「働かざるを得ない」「働かないと食べていけない」人が増加した……
つまり、格差が拡大した結果だと考えられます。
★増えた分の使い道が問題!
その格差のなかで、練馬区は増えた分をどう予算に振り分けたかというと……
大きなものが、基金。つまり、貯金です。
①財政調整基金→48億円
通称「財調基金」は、比較的自由に使える貯金です。
- 今年度、131億円を取り崩す(貯金を減らす)予定だったところ
- 最終補正で「48億円」を入れ
- 131-48=83億円の取り崩しに
- 今年度末:目標設定している「400億円」を維持
②施設整備基金→24億円
こちらは、文字通り、施設の整備にあてる貯金です。学校や区立施設の整備に必要です。
- 14億円取り崩す予定を、ゼロに
- さらに10億円積み増し(貯金を殖やした)
- 今年度末:目標280億円を維持
①②から、練馬区はコロナ禍でも、貯金を減らさなかったということがわかります。
※それは良い面でもありますが、区民がまさに困窮しているなか、使うなら「いつやるの?今でしょ!」という考え方もあると思います。
③起債→38億円
起債とは、いわゆる借金のようなもの。
- 今年度102億円の予定
- 64億円に減らした
借金が減ること自体は、悪いことではありません。
★問題は用地取得基金!
問題はここから……
- 用地取得基金→24億円増
↑コレです!
基金には実は、2種類あります。
- 運用基金→用地取得基金のみ
- 積み立て基金→それ以外の基金すべて
①用地取得基金の仕組み
唯一の「運用基金」である用地取得基金ですが……
- 現金または用地として
- 「104億5千万円」を常に維持する
というのが大まかな仕組みです。
②用地取得基金が必要な2つのケース
- 予算編成後、短期間で土地を買うお金が必要な場合
→金利を払わずに済む - 練馬区土地開発公社の枠を超える「機動的な対応」が必要な場合
- それ以外は、公社で取得する
…要は、土地を買うお金が必要な時のために貯めておく貯金、ということですね。
③「土地開発公社」を経由するケース
※「土地開発公社」というのは、練馬区の外郭団体です。
- 買いたい土地が出たら、練馬区土地開発公社が先行取得する
- 土地開発公社から、練馬区が用地取得基金の中から買い戻す
- 練馬区の予算から、用地取得基金に補充する
- 結果、用地取得基金は、常に104億円、維持される
④用地取得基金ができた経緯
- 昭和50年代に創設
- 土地価格が高騰の時代
- 当時の設定は「149億円」
- 2016年(H28)にマイナス45億円
→現在の値段(104億円)に
★用地取得基金の設定金額を「24億円」増やす
以上が、用地取得基金のざっくりした説明です。
1980年のバブル当時に「149億円」に設定したものの、時代の変遷とともに、新たな用地を取得する事業が減り、「104億5千万」に減らした、というわけです。
しかし今回、このコロナ禍で、その設定額を「24億円」増やし、「128億円」にする
……というのが、今回の大きな問題点です。
★増やす理由が問題
何に使うために増やすかというと、
- 「みどりのネットワーク」「道路他施策」
→「今後用地取得の機会が増える」ため - 「改訂アクションプランで推進する施策」のため
……と、練馬区は言っています。
つまり、練馬区がやりたい事業に充てるということ。
これらは、道路など、区民から反対の声が多数&根強くあがっている事業も含まれます。
しかも、今はコロナ禍。コロナ禍で、練馬区がやりたい事業のために、慣れ親しんだ地域を追い出されるのは、住民にとっては、とても不安が大きいことです。
「区民の安心安全のまちづくり」…という前に、区民の生活がまさに区の施策によっておびやかされていますし、「みどり」と言いながら道路をつくることには疑問を感じます。
時代遅れの方向性とも言える、予算の使い方ではないでしょうか?
★補助・給付事業は元に戻さず
しかも、今年度切り詰めた補助・給付事業については、練馬区は「時代のニーズにあわせて」「制度の持続可能性」との理由を持ち出し、「再開の考えはない」と明言しました。
つまり、コロナと財政難を口実に、切り捨てた。
高齢者の紙おむつ等は、高齢化の今こそ、まさに「時代のニーズ」に即したサービスのはずです。
★格差解消や生活に使うべき!!
もともとの出発点が、「格差が広がった結果の増収」です。
であれば、格差解消に使うべきですが、さらに格差を広げるような事業に使おうとしている。
しかも練馬区は、今回の増収については
- 練馬区「日本はバブル以降経済が低迷」
- 「昭和50年代後半以来、区の人口が減少」
- 「国際情勢も厳しい状況」
- 「増収の側面が続くとは考えていない」「楽観視できない」
- 「区としても大変な危機感」
と発言しています。
★練馬区の最終補正、大きな矛盾
「危機感」と言いながら、ではなぜ、区がやりたい事業は一切見直しをしないのでしょうか?
さらに加えて、豪華な区立美術館まで整備しようとしているのでしょうか?
また、今回の補正予算には、谷原保育園廃園に関わる、隣地の不動産鑑定料も計上されています。
「危機感」を強調しながら、保育園を潰し、豪華なハコモノをつくり、道路等整備で住民を立ち退かせる……
……大きな矛盾です。
- コロナの終息の見通しが立たない中、生活困窮状態の人も多くいる現状
- 用地取得基金などの投資より、生活困窮者支援に充てるべき
- 練馬区の様々な給付事業が抑制され、苦労されている区民がいる
- 区民の生活へのサポートを、より手厚くすべき!
……というわけで、私たちの会派(インクルーシブな練馬をめざす会)では、この補正予算(※)に反対をしました。
※インクルねりまで質疑を担当したのは、かとうぎ桜子さんです。
※一般会計のみ反対で、国保会計他4議案は賛成をしました。
↓以下は、その他の補正予算のポイントをお伝えしていきます!
子どものコロナ対策
★こどもの施設への感染予防
対象:小学校、中学校、幼稚園、保育園等
- 国庫補助の対象外→区独自
- スケールメリットがあるもの→区で一括購入
★第2保健室
- 小中学校にて
- 発熱症状のある児童を休ませる簡易ベッド、パーテーション
★感染予防グッズ
- 学校、幼稚園、保育園
- 清掃用スチームクリーナー
- 自動手指消毒器
- 保育園
- 衛生用品の補助
- 特別支援学級
- 練馬区「より手厚い支援必要」
- サーキュレーター、加湿器も
★修学旅行
- 昨年8校
- 2/23再開→6校実施
- 練馬区「抗原検査キットを確保」「事前検査してから実施」
- 大きな状況の変化がない限り「今後すべて実施or代替実施」
★教員用タブレットPC
★保育園→都の検査事業
- 練馬区「東京都全体の調整が大変」
※高口注:どういう意味かわかりづらいのですが、できているのかできていないのか、把握できていない状況…ということでしょうか?
コロナワクチン
★小児ワクチン
- 江東区のアンケート「様子見たい→5割」
- 練馬区「多くの情報を必要としている」
- 対策:厚労省、ファイザー作成のリーフレット→区HPで周知、区施設で配布
- 問い合わせ:「もうすぐ12歳だけどどちらか」等の疑問が「数件ある」
- 3/1接種券発送→3/8接種開始
- 3/5に国から納品→16000回分=全体の2割程度
- 4月には残り8割が入る
- 練馬区「準備万端」
★ワクチンバス(東京都)
- 高齢者施設
- 派遣チーム(医師・看護師・事務員)がマイクロバスで施設まで行く
その他のコロナ対策
★抗原検査キット
- エッセンシャルワーカーが濃厚接触者で自宅待機になった場合
- 自宅待機解除のため一括購入=5万個
- 練馬区「必要に応じて配布」
- 障害者・介護の事業所:あわせて63人分、126キット配布(2/24~3/3現在)
- 障害者・介護の事業所では、11月から定期検査にも利用
- 現在申請があるのは:障害者9か所、介護5か所
- 当初、卸売業者からの納入が前提
- オミクロン株→全国的にキット不足→入手困難
- 拡充→薬局で購入したキットも対象に
★医療・酸素ステーション
- 昨年9月:光七小跡地に設置
- 10月~中和抗体薬投与
- これまで208人受け入れ
- 開設当初→救急のみ
- 現在:都のコールセンター、診療所からも受け入れ
- 新たに宿泊療養施設からの受け入れも開始
- 購入した酸素濃縮器→ステーションが終わったら、在宅往診医への貸与、救急医療等、「検討」
★経口治療薬「ラゲブリオ」
- 特例承認
- 製造会社→登録必要
- 練馬区内診療所:当初約60か所
- 本年1月説明会→登録をお願い
- 現在:診療所163、薬局132
★自宅療養者の健康観察
- 入院調整が必要な方、妊婦、透析患者、認知症などハイリスク→区が実施
- それ以外→東京都が実施
★コロナ後遺症
- 2021年11月「コロナ後遺症相談窓口」を開設
- これまで39件の相談
- 練馬区「区内のコロナ後遺症外来等と連携」
防災
★耐震促進→実施できず
- 予定していた分譲マンションの建て替え
- 合意が整わず、延長→そのため減額補正に
- マンション耐震化:残り4棟
- 私立幼稚園・保育園:残り4棟
★ブロック塀の撤去
- 2021年度:140件撤去
- 23区では1位
- 2位:江戸川区52
- 3位:板橋区47
- 他:20程度
その他の注目質疑
★ロシアとウクライナの戦争について
- 練馬区「大変な危機感」
- 「経済の先行き不透明」「予断を許さない」
- 「備えが必要→基金を積み立て」
★生活困窮者自立支援金→想定したより利用者が少なかった背景
- 主な減額補正の理由=住居確保給付金
- 毎月80件を見込んでいたが
- 平均で50件だったため
- 2/25通知:再支給→3月末の期限を6月末まで延長
- 再支給には
- 総合支援資金の特例貸付を借り終える
- 収入要件、資産要件…など
- 特例貸付が終わった人:約4000人
- 支給されたのは、そのうちわずか3割
- 練馬区「対象にならない不満、拡充を求める声が届いている」
★地域活動倉庫
区西部の大泉の高架下に一つあり、地域団体が申し込める倉庫です。今年度、利用の抽選が行われました。
- 37区画のうち、42団体が申込
- うち、13団体が大泉以外
- 29町会、7商店街、その他1団体→当選
- 東部の地域活動倉庫については
- 練馬区「区立施設跡地など→早急に検討」
※高口注:地域活動倉庫自体は団体の役に立つと思いますが、そのために区立施設をつぶすようなことになれば…それが本当に地域のためになるのかは、疑問です。
★総合体育館→コインパーキング
- 2018年コインパーキング貸付に
- 当初入札→年額271万円
- 当初苦戦→台数が増え、売上3.5倍に
- 4年たち、契約更新
- 2021年度入札:5社
- 年額397万円、47%UP